クリスティアン・ベザイデンホウトさんによる、フォルテピアノ・リサイタルを聴きに行きました。曲目は全てモーツァルトのピアノ・ソナタです!

 

 

クリスティアン・ベザイデンホウト フォルテピアノ・リサイタル

(東京文化会館小ホール)

 

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第12番ヘ長調K.332

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第3番変ロ長調K.281

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第14番ハ短調K.457

 

(アンコール)

モーツァルト/組曲ハ長調K.399より「アルマンド」

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第9番ニ長調K.311第2楽章

 

 

このリサイタルは、ベザイデンホウトさんが現在ヨーロッパで非常に注目されているモーツァルト弾きであること、フォルテピアノによるリサイタルであること、全てモーツァルトのピアノ・ソナタという魅力的な曲目であること、以上3点の理由でチケットを取りました。

 

モーツァルトのピアノ・ソナタは必ずしもよく聴くジャンルではありませんが、その価値には十分共感を持っています。まとまって聴くのは、2009年に菊池洋子さんが紀尾井ホールで4回に渡ってモーツァルト・ピアノ・ソナタの全曲を演奏したリサイタルを聴いて以来です。

 

今回使用されるフォルテピアノはアントン・ワルターモデル(1800年頃)、ポール・マクナルティ(チェコ)2002年作です。平均律ではなく、古典調律にてA=430とのこと。

 

モーツァルトのリサイタルゆえ、あまり細かく書くのは無粋なので、感想はごくごく簡単に留めようと思います。

 

 

1曲目はピアノ・ソナタ第10番。この曲はアメブロで交流のある、でかぽめさんが得意とされている曲と記憶しています。ベザイデンホウトさんが弾き始めると、懐かしい音色、非常に雰囲気のある音楽が聴こえて来ます!第1楽章は32分音符を正確にリズムを刻んだ演奏。ベザイデンホウトさんは上半身や腕をほとんど動かさずに、主に指先だけで音を紡いでいって、まるでバッハのよう。

 

第2楽章は叙情的、途中の短調の左手のタタタタタタタタはテンポを揺らしていました。最後、その短調が長調になるハッとする瞬間!第3楽章は勢いよく弾(はじ)けるように。最後はややもったいぶって終わりました。モーツァルトのピアノ・ソナタ、いいなあ~!

 

プログラムの解説を一部ご紹介しますと、モーツァルトはこの曲や次の12番を書いた、ウィーン移住後間もない時期からアントン・ワルター製作のフォルテピアノを用いたと見られている、とありました。今日のモデルのフォルテピアノですね!

 

さらには、研究家アインシュタインは、「かつてモーツァルトが書いた最も愛らしいものの1つ」と称した、という記載が。この研究家とは、もしかして、モーツァルト好きで、相対性理論のあの方のこと?と思いましたが、モーツァルト研究の大家のアルフレート・アインシュタインさんのことでした。興味深いことに、アルフレートさんには、相対性理論のアルベルト・アインシュタインの親族という説と、違うという説の両方があるそうです(笑)。

 

 

2曲目はピアノ・ソナタ第12番。第1楽章はきらびやかで、まるでウィーンの砂糖菓子のような長調、短調はベザイデンホウトさん、それなりに力を込めて弾かれていましたが、フォルテピアノだとワンクッション入って、琥珀色の懐かしい響きに感じます。第2楽章は叙情的にしっとりと。第3楽章は長調と短調が交錯する激しい音楽。とても聴き応えがありました。

 

 

後半1曲目はピアノ・ソナタ第3番。途中のフーガにメロメロになった第1楽章。チャーミングな旋律に悲しみが宿る第2楽章。軽快な音楽で最後は茶目っ気を持って終えた第3楽章。とても楽しめました。

 

 

最後はピアノ・ソナタ第14番。この曲は昨年10月にメナヘム・プレスラーさんの非常に雰囲気のある演奏を聴きました。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2017.10.16 メナヘム・プレスラー ピアノ・リサイタル

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12320435836.html

 

第1楽章。ベートーベンとモーツァルトが交錯する音楽、ベザイデンホウトさん、とても迫力のある、デモーニッシュな演奏でした!第2楽章。この楽章の幻想的な音楽が、今回のフォルテピアノに一番フィットしていたように思いました。途中、アッチェレランドをかけたシーンには痺れました!

 

第3楽章。この楽章はターン、ターン、タンタンタン!と弾いて休止が入る音楽が度々出てきますが、ベザイデンホウトさん、ここをスパッと切ったり、余韻を残したり、いろいろな表情付けをして、非常に唸りました!おそらくこの曲が一番の十八番では?堂に入った表現の連続に魅了されまくり、非常に感動的な14番でした!

 

 

アンコール1曲目は組曲ハ長調より「アルマンド」。清々しい音楽に心洗われます。2曲目はピアノ・ソナタ9番第2楽章。素直な旋律がしみじみ心に沁みる…。今日はここで涙でした。

 

 

クリスティアン・ベザイデンホウトさんのフォルテピアノによるモーツァルトのピアノ・ソナタのリサイタル、非常に楽しめました!フォルテピアノだったからかも知れませんが、どちらかと言うと、優しいタッチから繰り出される、玉がころころ転がるような滑らかなモーツァルトというよりは、もっとしっかり弾き込んだ、ややカッチリとしたところすらある、メリハリのついた充実した響きのモーツァルト、というように感じました。いずれにしても、モーツァルトを聴く愉悦に他なりません。素晴らしいリサイタルでした!

 
 

 

 

(写真)会場で購入したクリスティアン・ベザイデンホウトさんがフォルテピアノを弾く、モーツァルト/ピアノ協奏曲11番・12番・13番のCD。サインもいただきましたが、とてもカッコイイ!(写真上) 伴奏はフライブルク・バロック・オーケストラ。私の好きな古楽のオケです。後日、ゆっくり聴くのが楽しみです!

 

(参考)2014.2.12 フライブルク・バロック・オーケストラのバッハ/ブランデンブルク協奏曲

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11772743884.html

 

 

(追伸)ところで、東京文化会館に入る前にテレビの車を発見。大ホールでトゥガン・ソヒエフ/トゥールーズ・キャピトル管弦楽団のコンサートがあったので、「ソヒエフさん、昨年11月のN響の客演も良かったし、録画が入ってさすがだな~」とか思っていたら、何と、録画は私の聴いたベザイデンホウトさんのリサイタルの方でした!(笑) 4月27日にNHKで放映予定だそうです。モーツァルト好きのみなさま、特に14番は必聴です!