歴史的偉業だった11月のシルヴァン・カンブルランさんと読響のメシアン/アッシジの聖フランチェスコ。その公演をもって、メシアン没後25周年が終了したかに見えましたが、今年最後に素敵なメシアンのピアノ・リサイタルがあったので聴きに行きました。
ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル
(東京オペラシティ コンサートホール)
メシアン/幼子イエスにそそぐ20のまなざし(全曲)
メシアン/幼子イエスにそそぐ20のまなざしは、1曲で2時間かかる長大なピアノ曲ですが、大好きな曲です。今年5月にはスティーヴン・オズボーンさんの素晴らしい演奏を聴くことができました。
(参考)2017.5.18 スティーヴン・オズボーンさんのメシアン/幼子イエスに注ぐ20のまなざし
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12275919181.html
ピエール=ロラン・エマールさんは先週のシャルル・デュトワ/N響とのラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲が非常に素晴らしかったことに加え、アンコールのブーレーズ/ノタシオンがキレキレで絶品でした!今日のメシアンもただただ期待しかありません。
(参考)2017.12.2 シャルル・デュトワ/ピエール・ロラン・エマール/N響のオール・ラヴェル・プロ
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12333270281.html
1. 父のまなざし
冒頭から続く「神の主題」の和音。オズボーンさんは最弱音のフェザータッチでしたが、エマールさんは通常の弱音ながら、より厳粛に弾いていた印象でした。
2. 星のまなざし
3. 交換
エマールさんはブーレーズ/ノタシオンの印象から、キレキレのまなざしになるのかな?とも思いましたが、ここまで聴いて、オズボーンさんよりもややゆったりと構え、音の一つ一つを丁寧に弾くまなざし、という印象です。
4. 聖母のまなざし
5. 子にそそぐ子のまなざし
前回、親鳥の優しい進行にジャズの音をも思わせるちょっとやんちゃな雛が愛情を持ってまとわりついている様子が見えるかのよう、と書きましたが、今日も同じ印象でした。
6. 言葉によって万物はなった
後半に運命のように繰り返される和音を、エマールさんがたっぷり弾いていたのが印象的でした。
7. 十字架のまなざし
8. いと高きところのまなざし
鳥たちが賑やかに鳴きますが、先月のアッシジの聖フランチェスコを思い起こします。鳥たちの醸し出す祝祭感をエマールさん、よく表していました。
9. 時のまなざし
10. 喜びの精霊のまなざし
やはり好きなのはこの喜びの精霊のまなざし。最初の神の愛の喜びを表す踊りにワクワクして、やがて「喜びの主題」が出てくる場面は本当にはときめきます。エマールさん、最後の方の「喜びの主題」をたっぷり歌って、真に感動的なまなざしでした!
11. 聖母の初聖体
最初の聖霊の光から始まり、純血の鳥の歌、聖母マリアの祈りと喜び、聖母に受胎したイエスの心臓の鼓動。プログラムに詳しい解説が載っていましたが、それらの情景の音楽が順々に流れていき、感動的です。
12. 全能の言葉
13. クリスマス
前回、冒頭の不規則な鐘の音を何とも不思議なリズムに思いましたが、もはやアッシジの聖フランチェスコの第6景「鳥たちへの説教」を聴いた後では、規則正しくすら感じました(笑)。季節的にも盛り上がりますね!
14. 天使のまなざし
15. 幼子イエスのくちづけ
前回も感じましたが、この曲、本当に好きだなあ。「神の主題」が子守唄となり、聴くもの全てを愛で包み込む、という解説もいいですね。エマールさん、慈しむように弾いて本当に感動的です。
16. 予言者たち、羊飼いたち、占星術学者たちのまなざし
17. 沈黙のまなざし
18. 恐るべき塗油のまなざし
今日のエマールさんの演奏はここに重きを置いていたように思いました。たっぷりとした抑揚に、渾身のフォルテ!アッシジの聖フランチェスコの第7景「聖痕」の恐ろしい音楽を思わせます。ここの恐ろしさを強調すると、後の2曲が映えますね。
19. 眠っていてもわたしの心は目覚めています
今日はここの静謐な音楽にも非常に魅了されました。エマールさん、真摯にゆっくり音を紡ぎ出し、静かな感動に包まれました。
20. 愛の教会のまなざし
エマールさん、「愛の主題」に入る前の導入を、オズボーンさんと同様にたっぷり間を取りますが、もうほとんど止まりそうでした(笑)。その「愛の主題」は、エマールさん自身が感極まった雰囲気、即興的に抑揚を付けて弾かれていました。最後の最後に大いなる感動の音楽。2時間を超える大曲を見事に締めました!
再び感動の幼子イエスにそそぐ20のまなざし!本当に素晴らしかったです!特にラストの3曲が非常に感動的でした。観客のみなさんも大いに盛り上がっていましたね!そして、終演後のサイン会。ヤマハホールと東京オペラシティコンサートホールのキャパの違いもあると思いますが、非常に多くの人が列を作っていました!
これエマールさん人気とともに、もしかして、アッシジの聖フランチェスコでメシアンの魅力に目覚めた方が沢山いらっしゃったことが原因では?一人のメシアン・ファンとして、非常に嬉しく思いました。メシアン・イヤー最後のコンサート、本当に素晴らしかったです!
(写真)会場で購入した、ピエール=ロラン・エマールさんのメシアン/幼子イエスにそそぐ20のまなざしを含む6枚組のCD。ドビュッシーやラヴェル、ブーレーズも入っていて嬉しい限り。エマールさん、サインをご自分のお顔に書かれて、何だかバットマンのようになりました(笑)。