※10/31午後から、イスラエル国エルサレム市およびテルアビブ市の各目的先を愛知県議会を代表して訪問してきました。

 

 テルアビブ市のベン・グリオン空港に降り立った11/1は奇しくも、イスラエル国会(クネセト)の総選挙(全国1区の比例代表制、定数120)が実施されていました。

 

 1948年の建国以来、第25回目となる今回の総選挙は、この約3年半で5回目の選挙であり、イスラエルの政治は混乱が続いています。

 

 現在まで連立政権を率いたベネット首相は、イスラエル国防軍特殊部隊少佐、IT(情報技術)起業家などを経て政界入りし、国会第2勢力の中道政党「イェシュ・アティド」の党首として、約1年前の(ユダヤ人右派やアラブ系など8政党による)連立政権発足を主導した人物ですが、内部対立で行き詰まり、6/30に辞任(総選挙に不出馬)しました。

 

 選挙戦においては、過去に12年間政権を率いた際の汚職事件による裁判が続く、ネタニヤフ元首相が党首である最大勢力(第1党)の右派政党「リクード」との激しい戦いが予想される一方で、結果としてリクードが最大勢力を維持する予想が伝えられていました。

 

 投票日当日は、街中のあちこちに候補者のポスターが貼り出されており、また、ポスターを持った青年たちが行き交う有権者に向けて、しきりに候補者をPRする姿が印象的でした。

 

 後日(11/3)公表された最終開票結果によれば、投票率は70.6%で、(ネタニヤフ元首相率いる)リクードが32議席で最大勢力を維持し、連立政権を組む予定の「宗教シオニズム党(宗教右派、極右)」「ユダヤの力党(同左)」「シャス(ユダヤ教超正統派)」「アグダト・イスラエル党(同左)」「デゲル・ハトーラー党(同左)」を合わせた議席数は過半数の計64議席となるため、今後はネタニヤフ元首相が大統領から組閣を委任される模様です。

 

 右派・宗教勢力が躍進した背景には、昨年6月のネタニヤフ政権退陣後のパレスチナ人によるユダヤ人襲撃事件の増加が原因の治安悪化により、対パレスチナ政策に弱腰のベネット政権に国民の不満が募っていたところ、極右勢力が対パレスチナ強硬策(入植地政策やパレスチナ過激派の取締り強化など)を訴えたことで、多くの支持が集まったものと考えられます。

 

 そもそも、1993年のオスロ合意以降、パレスチナとの暴力が日常化するに従い、(和平反対の)右派勢力が躍進し、(和平推進派の)左派勢力の減退が続いており、(ヨルダン川西岸での入植地建設を宗教的義務と考える)宗教右派の台頭は顕著でした。

 

 今後誕生する右派政権内において、(人種主義的な)極右勢力の発言力が強まるならば、イスラエルの民主主義が揺るぎかねないという懸念の声が、国内の反ネタニヤフ勢力だけでなく、アメリカの有力ユダヤ人団体からも上がっています。

 

 ネタニヤフ元首相自身は極右ではないものの、極右色の強い連立政権誕生は、イスラエルの民主主義の後退やアメリカ・イスラエル関係の再悪化という危険性を孕んでおり、向こう1か月以上を要するとされる連立交渉において、宗教シオニズム(極右)の各党首に対する閣僚ポストの割当てに世界中の注目が集まることとなります。

 

*10/31~11/5 イスラエル国渡航

(10/31の夕刻に成田空港から日本を出発し、11/1の早朝にドバイ空港にて搭乗機を乗り換え、テルアビブ市のベン・グリオン空港に到着後はそのままバスに乗り込み、エルサレム市に移動しました。

 

成田
 

ドバイ

ベン・グリオン

 

 当日(11/1)は、前述のとおり、総選挙が実施されていることから、国民の休日でしたが、アブラハムの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)において、何もしてはならない日と定められた安息日と異なり、街中は賑やかでした。

オリーブ山から旧市街を望む
 

エルサレム旧市街
 

 翌11/2午前中は、エルサレム市において、国立博物館敷地内にある聖書館を訪問しました。

 

 同館には、1947年前後にイスラエルとヨルダンの間にある死海付近のクムラン洞窟で壺に入って発見された約2千年前のヘブライ語聖書(旧約聖書)の写本(羊皮紙の巻物)、いわゆる死海文書(死海写本)が展示されているところ、当日は湿度が高いとのことから、地下保管庫に移動されていました。

 

 死海文書研究には現在、AI(人工知能)が活用されており、文書をAIに解析させると、写本の書き手が途中で変わっており、複数人によって編纂されていたことが判明したとのことであり、今後多くの未解明問題について、AIによって精度の高い答えが導かれることが期待されます。

 

 これまでの地道な文献学的方法による研究は、今般、こうした新技術の応用の場として最先端科学が活用されていることが認識できました。

 

 午後からは、ヤド・ヴァシェム(ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の犠牲者を追悼するために建設された国立記念館)、同敷地内にある杉原千畝元領事代理(第2次世界大戦中に赴任先であるリトアニアのカウナスで、ナチス・ドイツによって迫害されていた多くのユダヤ人に、危険を冒してビザを発給し、彼らの亡命を手助けした。ヤド・ヴァシェムより「諸国民の中の正義の人」として顕彰されている)の記念樹を訪問した後、スギハラ・サバイバーであるバール・ショーさん(94歳)と懇談しました。

 

 ナチスドイツ迫害から、命からがら逃げ惑う当時の生々しい証言を伺い、人間の尊厳がいかにかけがいのないものかを痛感し、ナチスの人権侵害の実態について、後世に語り継いでいかなければならないと強く感じました。

 

 イスラエル中央統計局によれば、現在、イスラエルに生存しているサバイバーは約16万人で、そのうち、100歳以上が1千人を超え、90歳以上が約3万人、平均年齢は85.5歳であり、昨年からの1年で約1万5千人が死亡するなど、毎年加速的に減っていることから、生存するサバイバーがいなくなる近未来を想定し、バーチャル(仮想空間)で3D(3次元)で再現された実物大のサバイバーと双方向の会話ができるインタラクティブ・システムを製作するなど、テクノロジーを活用した様々な取組が行われています。

 

 ちなみに愛知県では、2018年に旧制愛知県立第5中学校(現愛知県立瑞陵高等学校)の卒業生である杉原千畝氏の人道的功績を顕彰する(屋外展示施設)「杉原千畝広場 センポ・スギハラ・メモリアル」を整備し、一般公開しています。

 

ホロコースト歴史博物館

 

 

 

バール・ショーさん
 

命のビザ
 

杉原千畝元領事代理記念樹
 

 夕刻には、エルサレム市からテルアビブ市に移動し、愛知県から進出している企業(株式会社デンソーイスラエルイノベーションラボ、豊田通商株式会社テルアビブ事務所)の駐在員の方と、イスラエルのスタートアップとの協業について意見交換しました。

 

 現地有力スタートアップが毎年生み出している多くの革新的な技術やプロダクトなどについて伺うとともに、日本企業としての協業メリットや今後の戦略・展望など、様々に質疑を行いました。

 

 翌11/3午前中には、テルアビブ市において、日本・イスラエル間の企業進出を支援するコンサルティングファームであるJakoreを訪問し、日系企業の現地展開や現地スタートアップの日本進出の支援などについて、同社イスラエル代表のヨニー・ゴランさんと意見交換しました。

 

 スタートアップを創設後に程なくしてイグジット(式を売却し、利益を手にすること)し、その後、日本在住を経験、帰国後立ち上げたスタートアップで失敗するなど、ご自身の経歴を交えた現地スタートアップ事情や、情報やチームワークを重んじるなど、日本人と共通する点が多いイスラエル人とのビジネスの発展可能性などについて伺い、様々に質疑を行いました。

 

 

 

 

 

 続いて、現地スタートアップと国内外の政府、企業、投資家やNGOとのパートナーシップ・プラットフォームの形成に取り組むStart-Up Nation Centralを訪問し、イスラエルの投資環境やイノベーション分野の成長状況などについて、意見交換しました。

 

 ちなみに同社と愛知県とは、今年5月、「オープンイノベーション支援における連携協力に関する覚書」を締結しています。

 

 愛知県企業と現地スタートアップとの、環境技術やフードテックなど幅広い分野でのマッチングについて、具体的な連携方法について伺い、様々に質疑を行いました。

 

 近く訪日される予定であり、その際には愛知県企業の紹介を依頼されるなど、同国のビジネスにみられる決定の迅速さや有機的なネットワーク作りなどについて、実感することができました。

 

 

 

 

 

 

 午後からは、現地スタートアップを2社訪問し、①H2Proでは、水素エネルギー関係について、②Airevでは、電気飛行機(空飛ぶクルマ)関係について、ラボとファクトリーを視察し、意見交換しました。

 

 ①H2Proでは、現在同国のベース電源である火力発電に用いる石炭はオーストラリアからの輸入に頼っており、加えて、先頃、油田が発掘された天然ガスを含めた天然資源は近未来に枯渇することを想定し、水素社会の実現を目指すに当たって、クリーンで安価な水素の供給方法を開発している同社のラボとファクトリーを視察し、その実現可能性と進捗などについて伺い、様々に質疑を行いました。

 

 水素の生成過程に革新的な技術が開発され、プラントのコンパクト化も進む中、社会ニーズを先取りしたビジネス展開を図るに必要な莫大な資金を調達するファンドなど、同社を含む現地スタートアップのビジョンの立て方とや財務基盤の強化策などについて、詳しく認識することができました。

 

 

 

 

 

 

 ②Airevでは、代表が以前に創設したスタートアップのイグジットを原資に、新たに立ち上げたプロジェクトである、パイロット・ライセンスを要しない、ドローン技術による安全性に優れた移動手段を開発するファクトリーを視察し、実機を目前に、その実現性と進捗などについて伺い、様々に質疑を行いました。

 

 すでに2~3百機を主にアメリカ人から受注しているそうであり、規制当局である航空局との協働による開発過程などについて、詳しく認識することができるとともに、日本における販路開拓などについて依頼されました。

 

 

 

 

 

 夕刻には、当日の訪問先を紹介、同行いただいたJakoreのヨニーさんと会食しながら、現地スタートアップのイグジットの現状や、スタートアップが軒並み生まれる所以たる国民性、加えて、日本人とのビジネスの発展性などについて、より詳しく意見交換しました。

 

 翌11/4午前中には、最後の訪問先である在イスラエル日本国大使館にて、水島光一大使から管内事情などについて伺い、様々に質疑を行いました。

 

 親日国であるイスラエルと日本との人や企業の交流には今後大きな発展の可能性があり、相互のより正しい理解がその推進力となることや、ユダヤ人とイスラエル建国の歴史を教訓とする人道や人権意識が国際的に広がることの意義などについて、広く意見交換することができました。

 

 

 

 午後には、テルアビブ市のベン・グリオン空港からイスラエルを出発し、深夜にドバイ空港で乗り換え、11/5夕刻に関西空港にて日本に到着しました。

 

 

ベン・グリオン空港

 

 

関空

 

 今回渡航したイスラエルは世界有数のスタートアップ大国であることを改めて実感することができました。

 

 人口950万人程度の小国でありながら、毎年1千社を超えるスタートアップが誕生し、現在は約8千社のスタートアップが存在しており、国民1人あたりのスタートアップ数は世界第1位であり、また、近年では、アップル、グーグル、マイクロソフトといった多国籍企業が、現地スタートアップを積極的に買収し、研究開発や生産拠点を同国に移しており、現地投資額も世界第1位です。

 

 加えて、ユニコーン(評価額が10億ドルを超える、設立10年以内の未上場企業)数は、アメリカに次いで世界第2位であることから、現在、イスラエルは中東におけるシリコンバレーと呼ばれています。

 

 では、イスラエルはなぜ、数多くのスタートアップが生まれ、革新的技術やプロダクトが世界に広まっていくのかを紐解くと、そのカギは「エコシステム(大企業や大学、公的機関(軍含む)、投資家などが連携をとってスタートアップを支援するシステム)」にあると分かります。

 

 そして、同国のエコシステムで特徴的なのは、軍の機能と多国籍企業の存在、そして、起業家であるイスラエル人(ユダヤ人)の気質です。

 

 まず、軍の機能について。

 

 同国では18歳から男女ともに兵役義務がありますが、そこで軍は、国家的な人材の選抜・教育機関として機能し、入隊者の適性を見極めてスクリーニング(審査)を掛け、例えば、優秀者はサイバー防衛を担うテクノロジー部隊に配属され、スキルに磨きを掛けることができるなど、軍が優秀な人材育成と供給を担っています。

 (優秀者上位1%の配属先は8200部隊で、同国経済を牽引する産業であるサイバーセキュリティ分野の創業者のほとんどが同部隊出身者とのこと)

 

 次に、多国籍企業の存在について。

 

 イスラエルのスタートアップの調達資金の約70%は海外投資家から、また、研究開発費の約50%は海外由来であり、また、多国籍企業は、前述のとおり、同国に研究開発拠点を置いて、研究者や技術者を雇用して研究開発活動を行っており、その数は約6万人で、同国ハイテク産業の従事者の約20%に当たり、多国籍企業の存在の大きさが分かります。

 

 続いて、イスラエル人(ユダヤ人)の気質について。

 

 ヘブライ語で「大胆さ」「厚かましさ」を意味する「CHUTZPAH(フツパ)精神」は、「普通ではできないことを敢然と行なう勇気」といった肯定的な意味を持ち、困難に決然と立ち向かい、何事も達成可能と見なす楽観主義的な力を持つイスラエル人の源となっており、「破壊的アイデアを持つ企業」で世界第1位とされる所以はここにあると言えます。

 

 最後に、イスラエルにおける日本企業の活動展開については、①ハイテク・スタートアップ(バイオテク(生命科学)、IT(情報技術)、サイバー・セキュリティ、量子科学、モビリティ)との連携や、②科学技術力で世界的に高い水準を誇る大学との連携、③同国の経済成長と人口増加に起因するインフラ事業への参入など、川上から川下までの多岐にわたる分野で活動拡大を期待することができます。

 

 以上のように、今回の渡航で得た経験と知識を基に、後日の議会審議において愛知県関係当局に提案して質疑するとともに、本県企業に対しても情報提供して協業を促したいと思います。


【追伸】
 今回の渡航でアテンドいただいた現地在住の皆さんには、多くの学びをいただきました。
 
 特に、バスでの移動時から訪問先や食事会場に至るまでの間、終始極めて熱心にイスラエル(国・都市の成り立ちや宗教、戦争、政治)の歴史や、信仰と生活習慣など、実に広く深い知識に基づいて、理路整然と分かり易く説明いただいた信夫兆平(しのぶちょうへい)さんの仕事ぶりと、そこからにじみ出る生き様には本当に感服しました。
 
 また、短時間でしたが、移動バスの運転手、現地通訳、ホテルスタッフの皆さんとの会話の中で、彼らの働き方や生き方について知ることができ、特に、持ち前のフツパ精神には感じ入りました。

 結びに、今回の貴重な機会をいただきましたすべての皆さんに、心から感謝申し上げたいと存じます) 

 

*11/6 文化展

(まず、長篠町さんに出掛けました。

 

 数多くの力作が並んでおり、各作品の紹介をいただきながら、楽しい時間を過ごせました。

 

 

 

 

 次に、弘法区さんに伺いました。

 

 女性陣が中心となって準備されたとのことであり、見やすいレイアウトに整えられた秀作を拝見し、別室でお抹茶をいただきながら、積もる話に花が咲きました。

 

 

 

 

 続いて、西丘文化センターに伺いました。

 

 ステージ上で高らかに歌い上げるのど自慢の先輩方に声援を送った後、心のこもった美味しいお抹茶とお菓子、手作りのおにぎりをいただきました。

 

 教室で作られた作品即売会では、巾着袋や小物入れ、キーホルダーを買い求めながら、その出来栄えの良さに製作過程の苦労話などを伺いました。

 

 

 

 

 

 いずれの会場においても、皆さんとの久方ぶりの再会を喜び合うことができました)

 

→ 弘法山を写す会

(紅葉が綺麗な境内にて写真撮影会が行われ、より納得のいくカットを求めて、腕自慢のカメラマンの皆さんで黒山の人だかりとなっていました) 

 

 

→ 民踊のつどい

(盛り沢山の演目において、馴染みの先生方や社中の皆さんの華麗で魅力的な姿をゆっくり拝見しました) 

 

 

 

→ 創作部門展

(個性豊かで素晴らしい出来栄えの作品揃いであり、作者の皆さんとも様々にお話ししながら、時間を掛けてじっくり拝見しました)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

→ 献血

(知立ライオンズクラブさんが定期的に献血バスを手配くださっており、今回はアピタ知立店に出掛けました。

 

 開始早々から大勢の皆さんが協力してくださったそうであり、今回も助け合いや支え合いの大切さを実感できました。

 かく言う私も、前回から5か月ぶりに献血に訪れ、問診表の記入から血圧測定まで至ったところで、担当医師の先生から、海外渡航から帰国後4週間以内の者は献血できないことを告げられ、今回は残念ながら協力できず終いでした。

 

 兎に角も、長年にわたって、献血の普及に尽力いただいているLCの皆さんと、献血に自らご協力いただいている市民の皆さんに感謝申し上げます)

 

 

 

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