次男・活男が海軍志願をしたいと言い出した日から飼い始めた鶏。
悠太郎さんの出発前日朝に卵を1個産んでくれてた。
「どうしますか?この卵♪ 何が食べたいですか?」と奥さん嬉しそう。
けど、め以子ちゃん以外は悠太郎さんの満州行きを知ってる。
だからせめて今晩は…と、それぞれが気を利かせて
二人っきりにしてあげる…。
「卵はお二人でどうぞ」
みんなの配慮が胸にしみる悠太郎さんです。
しかし何度も言うように、明日で満州に行ってしまうということ、
め以子ちゃんはこれっぽっちも知らない。
悠太郎さんは最後になるかもしれない1日を二人で過ごしたいと
思ってるのに、
「今日、やることいっぱいなんで…、すいません」と妻はそっけない。
…けど言えないので、うま介にも一緒についてきてる。
"今日はめ以子と一緒におるんや!"と決めてるやろから、
うっとおしがられても、きっとめ以子ちゃんにくっついて回る。
うま介に来たついで…じゃないけど、
この人にもちゃんと言っておきたかった。
捕まった時、妻と一緒にあれこれ動いてくれてたお礼を言い、
そして…
「明日、満州に行きます」
「この先、あの人のこと、助けたってくれますか? お願いします」
「そんなん…、頼まれんかて、やってきてるやろが!」
そうよね。
め以子ちゃんが大阪に嫁いできてから、
ずーっとめ以子ちゃんを見てきた。
「表向きはおまえの嫁はんやけど、ワシにとっては
たった一人の人生の相方なんや。
食わしとくから、まあ、ちょちょっと行って戻ってこいや」
どこまでもカッコよすぎますわ、源ちゃん

なかなか当のめ以子ちゃんに伝わらないのが残念ですが…。
ま、伝わっても悠太郎さんおるんで、結局はあきませんけどね。
朝、1個だけとれた卵。
食材もロクなものはないかもしれんけど、少しでも美味しいもん
作ってあげたい妻と、そんな妻を愛おしそうに見つめる夫。
そして出来上がったのが、め以子ちゃんの料理の原点ともいえる
スコッチエッグ!(お肉はないけどね)
昔、悠太郎さんが教えてくれた熱伝導とやらで
料理に興味を持ち始めた。 そのキッカケとなったモノ。
なんとも言えんタイミングで作ってくれるのね、め以子ちゃん。
1つのスコッチエッグを二人で分け合い、あの頃と変わらん顔で
美味しそうに食べる妻を見る。
そんな当たり前やった光景が、
もう当たり前ではなくなるかもしれん…
「悠太郎さんの夢が叶うことが私の夢」と言ってくれる妻。
自分が作ったご飯を食べてる人が、夢を叶えてくれてると
少しは"自分のおかげ"と思えていい気分になれるらしい。
だから大阪の町の何万分の1かは、自分が造ってるぐらいに
思ってるという。
まさに『悠太郎さんの夢は私の夢だから!』の宣言どおり。
「ふ久や泰介やかっちゃん…、希子ちゃんとこも。
みーんな一緒のアパートメントに住めたらええですねぇ!」
みんなが近くに住んで、
地下鉄乗ってホテルに行って美味しいもん食べたり…
「これみんな、おじいちゃんが造ったんよ~って」
そう、嬉しそうに話す妻。
火事でお母さんを亡くし、安全な町を作りたい一心で生きてきた。
そんな悠太郎さんの夢のカタチは
め以子ちゃんがちゃーんと未来図として描いてくれてる。
たまらん…
たまらんよね、悠太郎さん。
夢も、この人も、ここに置いていかなあかん…。
いつもはめ以子ちゃんが悠太郎さんの寝顔を見てたけど
今日ばかりは…
め以子ちゃんの寝顔を見ながらしたためた手紙を母に託し、
いつものように…
「今日、なんですか?」
「なーんでしょ♪」
「ごちそうさんでした」
「ん?」
「夕べ、言い忘れた気がします」
そう言っていつもと変わらず、「ほな、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
これが最後かもしれない。この人を見ていられるのも…
でも何も言わず家を出る。
この家に戻ってこれるかわからない。
あの人の元に戻ってこれるのかも…わからない。
結局、最愛の妻には本当のことは言わず…
希子ちゃん同様、二人のことをずっと見てきたお静さん。
こんなん、やっぱりアカンって思うよね。
「追いかけっ!
悠太郎さんな、軍属で満州行きはんねん!
結局下ったんは、そういう処分やったんや」
最後はめ以子ちゃんの笑った顔見て、
笑った顔見せて行きたいからって、黙っていたという。
「やっぱり、ちゃーんとお別れしてきっ」
長い長い手紙を残すことしかできんかった。
けどそれは、妻への愛が詰まったラブレター。
『僕はいつの間にか、とてもとても、幸せな夫になっていました。
自分がこんなに幸せな人間になるとは、僕は夢にも…
あなたと出会うまで、夢にも…』
「悠太郎さん!」
「あのね…」
追いかけてきた妻は、もうひとつ、食べたいものがあったという。
「悠太郎さんの手料理。 言い忘れた気がするから。それだけ」
「行ってらっしゃい」
「できるだけ早く戻ります」
「待ってます」

これが最後とは思わない!
「悠太郎さんの手料理が食べたい」というめ以子ちゃんの言葉を
無にするような人じゃないから、悠太郎さんは!
何がなんでも絶対帰ってくる!
這ってでも帰ってくる。
そういう男よ、通天閣は!
なんか、桜子ちゃんのような気分になってきた…。
























