ムンデ(月)の橋をイタリア人司祭に託した・・・。


もしジョバンニが言うように、欠けたパンが月を意味するなら、キリストの死と復活を記念するミサで、聖体となったパンをちぎって信者に分け与える司祭に、


「ムンデ(月)の橋の詩を託すのも分かる・・・。」


と、マキシミリアノはうなずきました。


マキシミリアノの時間が許す限り、4人はゾンネン橋の詩について思い当たる限りのことを話し合いました。


おそらく、秘密に成された異宗教間の婚姻を守るための詩ではないかと想像がついたのですが、それ以上は進みませんでした。



「マンマ、疲れたし、お腹もすいた。」


ジョバンニの一言で、謎解きに夢中になっていた大人たちは我に帰りました。


「夕方、あなた達のホテルに行きます。


可能ならば、そこで催眠を試してみましょう。


もっと詳しいことを思い出すかも知れないわ。」


エリザべッタは、今夜再会する約束をしてジョバンニ達と別れました。


彼女は東欧の国々での内戦を思い出していました。


難民たち、失われた故郷、政治的圧力、奪われた自由・・・。


個人的に親しくなった戦争被害者も、国のことを忘れないように、家族の絆を絶やさないように、彼らは“シンボル”にあらゆることを託すことが多かった。


ゾンネン(太陽)の橋やムンデ(月)の橋も、シンボル(象徴)なのだろうか。



太陽と月?


エリザべッタは、無駄に想像するよりも、ジョバンニの記憶がよみがえるのを待つことにしました。



食事を済ませてホテルの部屋に入ると、ジョバンニは、


「もうダメ、すごく眠い。」と言って、ベッドに倒れ込みました。


「疲れたのね。でもせめて上着と、靴くらいちゃんと脱いで。ジョバンニ・・・。」


「うん。・・・頭の中でずっと声が響いていて。

すごくうるさい、すごく眠いけど、


なんだろう、ずっと・・・うるさい。」


ジョバンニは両手で両耳を押さえながらベッドの上でごろごろしていましたが、やがてぐっすり眠ってしまいました。



早いところ、ジョバンニを煩わせている詩から解放されたい、べネデッタの願いはただ一つでした。



ゾンネン橋、黒い鳥、細い月、魚。


ジョバンニは夢の中で、あの詩の世界に下りていきました。


そこは、見なれた古い部屋。


パパが、電燈に小さなパンをかざし、ジョバンニが椅子に座るのを待っていました。


「おいで、ジブリル・・・。」


つづく・・・