梅雨の合間の晴れの今日。
眩しい太陽を感じながら、
二階のベランダで、
洗濯物を干していました。
すると、
リンリン、、、リン、、、
と、可憐で涼やかな音が
どこからともなく聞こえてきました。
音の聞こえるほうを見てみると、
向かいの家のベランダに、
赤と水色の模様がかわいい
小さな風鈴が見えました。
風鈴を見ると思い出す
エピソードがあります。
今からちょうど、
5年前の夏の出来事です。
私たちは、パリ郊外の、
閑静な住宅街に住んでいました。
1歳を過ぎて、よちよち歩きが
はじまった息子と、
いつものように、朝の日課の
お散歩に出かけるところでした。
家を出て、数十メートル
歩いたところで、
ショートヘアがかっこいい、
スラッとした長身の女性が
駆け寄ってきました。
「マダム。あの家に住んでいる
方ですか?」
と言いながら、うちの窓辺を
指さしていました。
なんだろう、、、??
と思いながら、
「ええ、そうですが。。。」
と答えると、
窓の横に見える風鈴を指さして、
「あれ、外してくれないかしら。。。
いつも音が鳴っていて、
耐え難いものがあるのよ。。。」
と。
夫が、仕事のつながりで出会った
日本人の方から、少し前に
頂いたものでした。
はるばる日本からやってきた
風鈴、、、、
そう思うととても愛おしく、
取り付けてからの一週間くらい、
私の心の拠り所のような存在に
なっていました。
体はフランスで生活しているけれど、
どこか「心ここにあらず」の状態で、
日本が恋しかった私にとって、
窓辺の風鈴は、
ささやかな存在でありながら、
心の支え、癒しとなっていました。
そんな風鈴に対する苦情を
訴えられた事で、
一気に心が折れました。
日本も私も、まとめて否定された。
日本も私も、この地で
受け入れられていない。
そんな心境になってしまい、
「分かりました、外しておきます。」
とだけ、
小さく無表情で言うのが精一杯。
急いでその場を去りました。
歩きながら、
後から後から頬をつたった涙。
あの時の情景、
女性の表情、声のトーン、
空の色、光の色、
今でもはっきり覚えています。
5年も経つのによくもこんなに
鮮明に覚えているな~と
我ながら感心してしまうのと、
こうして思い出したらまた、
あの瞬間と同じ悲しさと絶望が
心に押し寄せて
涙が出てきてしまう感性にも
驚くのですが(笑)、
それでも、
あれも、私が私であるために
必要だった、大事な経験の一つ
という気持ちには、
一切の偽りも無理もありません。
あえて嫌な経験をすることはない、
とは思いますが、
起こってしまった辛い出来事は、
自分に何かを伝えるために、
めぐり逢った出来事。
今は素直にそう思えます。
過去のあれこれも含めて、
丸ごと自分を受け入れる
ってきっと、こういう感覚
なんだろうな、、、、
そんな事を考えながら、
洗濯物を干した、
今日の昼下がりでした。
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