「趣味はドライブです」 | 沖縄で語学と日仏バイリンガル教育と

沖縄で語学と日仏バイリンガル教育と

フランスで6年、東京で4年過ごしたのち、2020年8月に私の故郷(夫と出会った場所)沖縄に来ました。
2011年生まれの息子、2013年生まれの娘がいます。
2020年8月より、沖縄在住。
公立小+おうちフランス語で日仏バイリンガル育成中。

少し前の話になりますが、フランス語会話を

教えている方の、仏作文を添削していました。




自分の言いたい事を日本語で考えて、それを

フランス語に直す、ということをしていました。




話題が趣味の話になっており、日本語文では
こうなっていました。



「趣味はドライブです」



その言葉を見て、私は一瞬止まってしまいました。




「ドライブ」これって、フランス語ではどう
言えばいいんだろう。。。




「ドライブ」のイメージにあう言葉が思い浮かばず、
辞書を引いてみました。



すると、こう書いてありました。



faire une randonnée en voiture.



直訳すると、「車で散歩する」という意味です。




しかし、ここで使われている「散歩」という単語。

これは、私がそれまで聞いていた文脈では、



木が深くおい茂っているような森の中を、
長袖長ズボン&ウォーキング用の靴という
身なりで『散歩する』というような感じ。



言わば、「本格的な森歩き」という文脈において

使われていた単語なのです。




なんだかしっくり来なくて別の辞書を引いてみると、

今度は



se promener en voiture



という表現が出てきました。




これも直訳すると「車で散歩する」という意味ですが、

ここで使われている「散歩」という単語も、家族で

近所の公園までふらりと散歩するとか、「歩いてぶらぶら」

というニュアンスが、イメージとしてどうしても強いので、

とても違和感を感じました。




辞書なのに、なんでこんなおかしな表現しか載ってない

んだろう?

そう思って、気がつきました。




フランス人には、「ドライブをする」という概念がない

のです。




車に乗って、お気に入りの音楽をかけ、一人で、

あるいは友人とおしゃべりをしながら、流れる風景を

楽しみつつ、あてもなく車を走らせる。




そうすること、つまり「ドライブが好き」だと言われて疑問に

思う日本人はいないと思います。




しかし、これは、ごく一般的なフランス人には理解が

できない概念なのです。




試しに、夫に意見を聞いてみたところ、やはり、


「日本の事を知らないごく一般的なフランス人だと意味が

分からないと思うよ」


とのことでした。




うちの夫は、仕事の経験も含め、日本に4年ほど滞在した

経験があり、日本文化や日本人の習慣についてもよく

知っているので、「ドライブが好き」ということが何を意味

するのか知っています。




しかし、これを単純にフランス語に置き換えてフランス人に

「私の趣味はドライブです」と言っても、意味が通じないのです。




文法的なレベルでは、文章は正しいです。でも、
「車で散歩する」というのがどういうものなのか、
それの何が楽しいのか、頭がハテナだらけになる
ということです。




フランス人にとって車は単なる移動手段であり、

その空間や雰囲気を楽しむものではないのです。




実際にフランスに住んでみると、その理由が

分かります。




パリなどの都市部は渋滞が酷く、流れる景色を

楽しむどころか、ほとんどのドライバーはストレスに

さらされながら、戦々恐々としてハンドルを握って

いるように思われます。




逆に田舎のほうに行けば、土地が広い分、まったく

変わらない田園風景が延々一時間くらい続いたり

するので、だんだん飽きてしまい、これもまたそんなに

楽しいものではありません。




車をなんとなく走らせながら、行き先も決めずに走って

みる。




日本では珍しくもないそんな「楽しみ」が、ところ変われば

まったく通用しない代物になるのです。




言葉と文化は一体である。

文化を知らずして、言語を操ることは不可能である。

そこに、外国語学習の醍醐味を感じます。




こういう発見をするたび、外国語を操ることの

「スリリングさ」に知的好奇心が刺激され、外国語学習の

魅力に益々取りつかれてしまう私なのでした。




にほんブログ村