フランス社会の「人は見かけによらず」から考えたこと | 沖縄で語学と日仏バイリンガル教育と

沖縄で語学と日仏バイリンガル教育と

フランスで6年、東京で4年過ごしたのち、2020年8月に私の故郷(夫と出会った場所)沖縄に来ました。
2011年生まれの息子、2013年生まれの娘がいます。
2020年8月より、沖縄在住。
公立小+おうちフランス語で日仏バイリンガル育成中。

上の子は、今年の9月から幼稚園に通い始めます。


※フランスは、3歳になる年から幼稚園がはじまります。

年少、年中、年長と、三年です。




それに先立ち、今月中に通う予定の幼稚園に提出しなければ

ならない書類があり、今日の午前中に寄ってきました。



何度か別の用事で近くを通ったことがある場所だったので、

すぐに分かりました。



しかし、門を探したことはなかったので、どこかな~と

思いながら周りを歩いていると、



門らしき場所の前に、ジーンズにTシャツといったカジュアルな

格好をした中年女性、作業着のような服装をした中年女性、

二人のマダムが立ち話をしているのが見えました。




二人ともタバコをふかしながら、日差しを手で

さえぎるように顔を隠しながら、けだるそうな感じで

おしゃべりをしていました。




幼稚園の清掃スタッフ…? 

それとも、ここの関係者ではないのかな…?




と思っていたら、一人の方と目が合ったので、

軽く会釈気味に頭を下げつつ、

その横にあった幼稚園の門の呼び出しのボタンを

押そうとしたところ、




「あ~、書類、持ってきたんですか?」


と話しかけられました。




「あ、はい。そうです。」と答えると、




「急いでますか?」と言うので、




「いや、特に。大丈夫です。」と答えました。



すると、


「じゃあ、中に入ってちょっと待っててください。

すぐ行きますから。」



と、門を開けてくれました。




「ここから入ると、部屋があるので、そこの椅子にでも

座っててください。」




と言うので、指定された場所に向かいました。

二人はタバコを吸い続けていました。




あの方たち、幼稚園の関係者だったのね…(汗)

そうは見えなかったけど(^^;)。




なんて思いつつ、その部屋の椅子に腰掛けて

待っていたところ、




さっきタバコを吸いながらイカツイ雰囲気を

かもし出していたマダムがやって来て、



「さぁ~、では書類を見てみましょうか~」



と言い、責任者の席らしきところに腰掛けました。




「幼稚園に通うのはキミかしら?」

「幼稚園は楽しいわよ~。」



などと言いながら、息子に話しかけてくれました。



ハイ。


ちょっとガラの悪い通りがかりの方?



とも思えた中年女性は、実は幼稚園の

責任者だったのです(苦笑)。





日本人が「幼稚園の先生」と聞いたとき、

そこにはだいたい共通するイメージがあると思います。




先生の印象としては、男女問わず、


優しそうな感じ。

元気ハツラツとした感じ。

爽やかな感じ。




服装もだいたい、

活発に動きやすそうな、スポーティーな感じ。




しかしフランスの先生たちは、それに当てはまりません。

私が実際関わっているのは週二回息子を通わせている

保育園のみですが、おそらく幼稚園も似た感じだと思います。




日本へ里帰りをした時に、実家の近所の保育園で、

息子に「一日体験入園」をさせました。




いつも通りがけに見ていましたが、そこの保育園の

先生たちは毎日全員、朝からジャージにTシャツの

ような格好をしていました。




長い髪はきっちりと束ね、お化粧はナチュラルな感じ。

アクセサリーなども一切なし。

スポーティーな感じで、いつでも子供と一緒に遊べそうな

雰囲気でした。





しかしフランスでは、そういう「保育園の先生」

のイメージぴったり合う先生に、出会ったことがありません。




メイクや香水もばっちりですし、汗を吸いそうもない

化学繊維の洋服を着ていたりします。

露出した背中からタトゥーが見えていたり、アクセサリーも

首周りや腕周りに色々付けているので、文化の違いを感じます。




はじめは私にとって、軽いカルチャーショックでした。

しかしよくよく考えてみたら、

「どんな職業だからどんな服装であるべき」

という縛りがなく、なんだか羨ましいな~

と思うようになりました。




実際問題として、

子供と接するにあたって不便はないのかな?

とは思いますが、本人がいいのならよし、

ということなのでしょう。



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実は私には、職場のドレスコードで

苦い経験をした恥ずかしい過去があります。




「ドレスコード」というよりも、厳密には

ストッキングですが。




ある夏の暑い日に、私はパンツスーツの足元に、

足の甲付近までを覆うタイプのカジュアルな

ストッキングを履いて出勤してしまいました。




普通の、腰まで続くパンストタイプだと、

暑すぎると思ったからです。




暑いし、足首まではズボンで隠れているの

だからいいだろう。

その甘えがいけませんでした。




ドレスコードに厳しかった当時の職場は、

それはルール違反でした。




業務中、年上の女性上司に呼び出され、

家に帰って履き替えてくるように言われました。




自宅まで30分近く、車を走らせながら、

私は自分の愚かさに涙をこらえることが

できませんでした。




規律を甘く見た自分が許せなくて、

いい年して社会のルールが守れなくて、

罰を受けてしまった自分が恥ずかしくて、

しばらく立ち直れないほどにみじめな

経験でした。




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フランスに来てから、医者が特に白衣を

来ていなかったり、保育園の先生もファッションを

意識した服装をしていたり、色んな場所で、

「職業による服装の縛りがほとんどない」自由な

スタイルを見て、その苦い過去を思い出しました。




あの出来事によって、私は自分自身に、

「社会のルールを全うに守ることの

出来なかった恥ずかしい人間である」

という烙印を押しました。




しかし、、、、。




あれって、


国が変わって文化も変われば、、、


別の価値観を持つ人たちから見れば、、、


全くなんともないことだったんだな




そう思えて、長い間自分を苦しめてきた

つき物が取れたような気分になりました。




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同じ価値観の中にずっと浸っていると、

自分でも自覚がないうちに、

その価値観の外から見るといささか無意味なことで、

自分を苦しめてしまっていることがあります。




違う価値観を持つ人から見れば、

なんともないこと、取るに足らないことで

自分の心を殺してしまっているとしたら、

自分なんてダメだと思ってしまっているとしたら…。




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異文化での生活は、努力を要します。

毎日が毎日、楽しく愉快なことばかりではありません。

日本では当たり前のことが当たり前に通らない。

そのもどかしさに苦悩することも、しばしばです。




しかし、今まで自分が「100パーセントそうだ」

と信じて疑わなかったことに、ふと別の可能性を

見せてくれたり、




思いがけず人生の景色を変えるきっかけを

与えてくれるもの。

それもまた、海外生活なのです。




異文化のはざまで意識を研ぎ澄まし、

自分の世界観を、価値観を、より自分が幸せに

なれるものに、つくり上げていきたい。




そう願いながら、今日もまた異文化との格闘を

楽しみたいと思います。




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