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いつも心に青空を 

フランスMOF最優秀職人と共にパン菓子研修を行っている「ドゥ・カリテ」の日記です。マカロンの製造販売もしています。

 

突然ですが、イタリアのパンをご紹介していきます。

今年はイタリアの人気リテイルベーカリーオーナーシェフを日本にお呼びするに当たり、イタリアのパン事情をイタリア語と共に勉強していきます。「その国を知るにはまずは言葉から」です。

 

今回は「イタリアのパン」紹介。

パーネ トスカーノPANE  TOSCANO

イタリア・ルネッサンスの中心地となったフィレンツェをはじめ、ピサ、シエーナなど多くの古都を擁するトスカーナ州のパン。このパンには塩が使われていないのが特徴で、素朴な味がする。

「パーネ PANE」= パンpain

「トスカーノ TOSCANO」= トスカーナ州 Toscane

 

パーヌ ディ ブラPANE  DI  BRA

北イタリア・ブラ村のパン。チーズとの相性は抜群。大型の食事パン。

「ディ DI」= ~の de

「ブラ BRA」= ブラ村(北イタリア)

 

パーネ オル ファッロ  PANE  AL  FARRO

スペルト小麦のパン。

「ファッロ FARRO」= スペルト小麦 épautre

「オル AL」= 冠詞un

 

パーネ コン グラニ アンティキ デレ ランゲ

PANE  CON GRANI ANTICHI  DELLE  LANGHE

ピエモンテ州ランゲ地方の古代雑穀のパン。

「コン CON」= ~と共にavec

「グラニ GRANI」= 雑穀 grains

「アンティキ ANTICHI」= 古代の ancien

「デレ DELLE」=  ~の du

「ランゲ LANGHE」= ランゲ地方 (北イタリアのピエモンテ州の地方名)

 

パーネ ディ モンターニャPANE  DI  MONTAGNA

レーズン、イチジク、マロン、クルミの入った全粒粉のパン。

「モンターニャ MONTAGNA」= 山 montagne

 

パーネ ディ カルロ アルベルトPANE  DI  CARLO   ALBERTO

美食家カルロ アルベルト(サヴォイア家国王)にちなんだパン。濃厚な味で大変腹持ちが良いこのパンはサヴォイア家の軍隊が戦闘中に食した。たくさんのクルミとアンチョビ、ライ麦粉、バター、砂糖が入る。

 

舌を噛みそうな名前ですが味は美味しい素朴なイタリアパンたちです。

 

ドゥ・カリテ

 

下:パーネ ディ カルロ アルベルト

 

フランスでは大手製パンメーカー(Boulangerie industrielle)により工場で大量生産されるバゲットを始めとするフランスパンにより、リテイルベーカリー(Boulangerie artisanale)は危機的状況にありました。その窮地を救ったのが、1993年9月13日に公布された「パン ド トラディション フランセーズ Pain de tradition française」に関わる政令です。

この「パン ド トラディション フランセーズ」はリテイルベーカリーのパン職人たちが率先して国に働きかけ誕生したフランス製パン業界では画期的なパンです。フランス製パンの特性を保護し、また添加物と共に工場生産されるフランスパンやその添加物の使用に対抗するために生まれました。事実、パン屋がこの「パン ド トラディション フランセーズ」と称してパンを販売するには、政令が定める2つの条件をクリアしていなくてはいけません。その2つとは、添加物を使用していない事、パンを冷凍していない事、です。

この「パン ド トラディション フランセーズ」と称するパンは当初、なかなか売れませんでした。しかし現在では非常に消費者から支持を得ており、リテイルベーカリーのパンが大手製パンメーカーが工場で作るパンと差別化するための大変有効な手段となっています。

1993年に公布された「パン ド トラディション フランセーズ Pain de tradition française」に関する政令によると:

「パン ド トラディション フランセーズ Pain de tradition française」、「パン トラディショネル フランセ Pain traditionnel français」、「パン トラディショネル ド フランス Pain traditionnel de France」と称して販売して良いのは、パンの形に関わらず、パンの製造工程中に一切冷凍されていない、また添加物を一切含んでいない場合である。このパンの生地条件(材料条件)は以下の通りと定める。

①製パン用小麦粉、飲料水、食塩でのみ生地が作られている。

②パン生地はパン酵母(サッカロミセス セレビシエ Saccharomyces cerevisiae)とルバン(Levain)、またはこのパンアルコール発酵を促す2つのうちのどちらか1つにより発酵する。

③パン生地に使用する小麦粉100%に対し、以下の改良剤は含有が認められる;

a)ソラマメ粉      最大2%まで

b)大豆粉      最大0.5%まで

c)モルトパウダー 最大0.3%まで

 

ドゥ・カリテ

 

下:リテイルベーカリーのパン

 

現在フランスには約35000店のパン屋が存在します。これはパン屋1店舗当たり1800人の人口に相当する数です(フランス総人口6600万人 2016年1月現在)。ここでフランスと日本で大きな違いがあります。それは「パン屋 boulangerie」を定義する法律の有無です。日本には明確なパン屋の決まりがありません。しかしフランスでは法律でパン屋(Boulangerie,Boulanger)を名乗って商売を行うことが規制されています。

フランスの法律上、「パン屋 Boulangerie」と称して商売を行える場合は以下の2点です。

①パンを製造する全工程がパンの販売所と同じ場所で行われている。

②パンは製造工程中、また販売中、いかなる時も冷凍されていない。

※ここで言うパンはバゲットなど食事パンの事を指し、クロワッサンなどの菓子パンは含まれません。事実、フランスの多くのパン屋(リテイルベーカリー)では冷凍クロワッサン生地を使用しています。

もしこの法律に違反し「パン屋 Boulangerie」と称して販売を行った場合、フランスでは次の罰則が科せられます。

①37500ユーロを上限とする罰金刑、日本円でおよそ470万円の罰金(1ユーロ125円計算)。

②懲役2年を上限とする禁固刑。

※この罰金刑と禁固刑ですが最も重い場合は両方が違反者に科せられます。

 

フランスのパン市場から話が逸れました。

現在フランスのパン屋1店舗当たりの平均年間売上は、

273000 ユーロ(税別)、日本円で約3400万円です。

パン業界に従事する者の数は合計約16万人でその内訳は、

-従業員、賃金労働者(Salariés) 11万人以上

-見習い(Apprentis)2万2千人以上

-経営者、雇主、オーナー(chefs d'entreprise)3万人以上  です。

更に、従業員の51%は女性でその大半が販売員です。残りの49%は男性でその大半がパンの製造員です。
他の分野に比べ製パン製菓業界は見習いの比率が多く、これにより業界の平均年齢が若くなっています。パン業界の女性従業員の平均年齢は33.6歳、男性は30.2歳。

見習いの最新の男女比率(2014年報告)は、男性7割、女性3割です。

 

フランスのパン屋の77%は従業員(Salariés)の数が6人以下です。

1990年にはフランス全土で36500店あったパン屋が2006年には32000店にまで減少しています。

 

第二次世界大戦後、フランス人がパンを消費する行動には大きな変化が生まれました。

戦前におけるパン、バゲットを中心とした食事パン、は生きていく上で最も大切な生活必需品としての位置づけがあり、フランス人1人当たり1日900gの食事パン、主にバゲット、を消費していました。現在(2015年末)では1人が1日当たり130gのバゲットを食べるまで消費が落ちています。現在ではパン、、バゲットを中心とした食事パン、は生活必需品でなく、嗜好品としての位置づけに変わっています。

 

危機感を感じたフランスのパン業界が行った策が、1993年に発表された「パン ド トラディション フランセーズ Pain de tradition française」に関する政令です。

この「パン ド トラディション フランセーズ Pain de tradition française」により、フランスの製パン製菓店は復活し、製品の品質向上、商品の多様化を消費者にアピールする事に成功しました。

 

現在もフランスの製パン製菓店では消費者に支持される新商品の開発に熱心で、消費者もまた専門店がどのような製品を製造販売しているかに関心を寄せ、日増しに要求する商品レベルが高まっています。

 

フランスのプロのパン菓子職人は消費者の動向に合わせ、市街地や都市近郊でバラエティ豊かなサンドイッチを提供し、キッシュやピザなど各種惣菜品や調理パンに力を入れています。

 

参考資料:

2015年11月発表のフランス国立製パン製菓連盟 Cofédération Nationnale de la Boulangerie Pâtisserie française の公式報告書より抜粋

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読みずらい文章で申し訳ありません。今後の日本のベーカリー・パティスリーに生かしていきたいものです。

 

ドゥ・カリテ 

 

下:フランスの製パン製菓専門店にできるお客の列