Kバレエカンパニー、熊川哲也振付『死霊の恋』がテレビ放映されます!
2019年1月27日(日):BS-TBSで放映予定
番組は、制作ドキュメントと作品全編で構成されているそうです。
■作品:『死霊の恋』
■振付:熊川哲也
■音楽:ショパン『ピアノ協奏曲 第1番 第1楽章』
■出演:
クラリモンド 浅川紫織
ロミュオ― 堀内將平
セラピオン 石橋奨也
この作品は、19世紀フランスの詩人テオフィル・ゴーチエが書いた同名の短編小説に、熊川さんが振り付けたものです。
私も昨年2月に劇場に足を運びました。
テオフィル・ゴーチエは、バレエ『ジゼル』の台本作者の一人で、19世紀ロマンティックバレエの大物立役者です。
ゴーチエによる『死霊の恋』は、カトリックの僧侶であるロミュオーが、実は既に亡くなって吸血鬼となってしまった美女クラリモンドと恋に落ちるというストーリー。
吸血鬼というとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、クラリモンドはロミュオーの血を吸って生命を得ることに罪悪感を感じるほどロミュオーを愛しているピュアな存在であり、ロミュオーもまたクラリモンドを心から愛しています。
しかし、二人の仲は、ロミュオーの師である神父セラピオンによって引き裂かれてしまいます。
原作の特徴は、本来恐ろしい存在であるはずの「吸血鬼」クラリモンドが決して醜悪な姿に描かれてはおらず、ラストで二人の仲を引き裂く神父セラピオンの方が、むしろ悪役のように描かれていること。
吸血鬼であり邪悪な存在と思われがちなクラリモンドの方が、よほど「天使」のように描かれているのです。
クラリモンドとセラピオンの描写の言葉を比べてみるとよくわかります。
この事実は、「キリスト教的」なものよりも「異教的」なものを好んだゴーチエの芸術観が現れているのですが、それについては長くなるのでまたいずれ。
さて、肝心の熊川さんによる『死霊の恋』について。
もちろん設定等、原作と若干異なるところはありましたが、ロミュオーとクラリモンドのピュアな恋愛が描かれていることや、吸血鬼クラリモンドの美しさや哀しさが実にきめ細やかに表現されており、原作の趣旨をちゃんと取り込んで素晴らしい作品だと感じました!^_^
ショパンの『ピアノ協奏曲 第1番 第1楽章』もストーリーと合っていて流石でした。
見たのが一年前なのでだいぶ記憶が薄れていますが、前半で椅子を取り入れているところなど、コクトーによる「若者と死」を少し思わせるところもありましたね。
浅川紫織さんの丁寧な踊りも素晴らしかった。
将来に受け継がれる古典作品として残っていくのではないでしょうか?
テレビ放映を見てから、また感想を書きたいと思います^_^