ノーベル賞作家アレクシエービッチによるノンフィクション『戦争は女の顔をしていない』を原案にした作品です。
従軍していた2人の女性が中心に描かれます。
 (のっぽの)イーヤは、従軍中に爆弾を受けたことから戦地を退き、レニングラードの病院で看護師として働きながら、共に従軍していたマーシャの子供と共に生活していました。しかし、戦争によるPTSDの発作が時々起きます。そのため、ある日預かっていたマーシャの子供を死なせてしまいます。
 その後、マーシャが帰還。2人での生活が始まります。マーシャは戦時中の傷がもとで、再度妊娠することはできませんでした。子供を死なせたことをマーシャは強く責めない代わりに、失った子供の喪失を埋めようと、イーヤに代わりに出産するよう要求します。

 原案となった『戦争は女の顔をしていない』は、従軍していた女性たちからのインタビュー集なので、それらのエピソードを再現ドラマ風にするのかなと思っていました。
 

 しかし、本作は『戦争は…』を原案として扱っていながら、実際の戦争は一切描いていません。

 

 その代わり、戦争から生み出された「傷つき」や「喪失」が本作の核として、戦争が生み出す「残酷」を映像化するのに成功しています。
 

 戦争映画は数多くあります。しかし、帰還兵の苦しみや悩みを、これだけリアルに描写した作品はそうないように思えます。

 第72回カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」で監督賞と国際批評家連盟賞を受賞、その他多数の賞を受賞したそうですが、そうした評価に値する作品です。

 

 後半部の、マーシャによる従軍中の告白も、聞いていて胸が苦しくなります。