1989年に公開された作品で、『となりのトトロ』『風の谷のナウシカ』などに続く、スタジオジブリ作品です。

 

 観客動員数はトトロが80万人、ナウシカが91万人と興行的にはよくありませんでしたが、本作は264万人のヒットを記録し、スタジオジブリの名を一躍世に知らしめた作品です。
 
 原作とアニメの違いは結構あります。
 第一巻の前半部分を原作としていますが、個々のエピソードについては、細かい変更が加えられています。また、トンボさんと自転車に乗るシーンや最後の飛行船のエピソードは原作にはなく、飼い猫である黒猫のジジと言葉が交わせなくなることもありません。
 また、宅配のお礼として、原作では「おすそわけ」として、料理のレシピや編み物の仕方を教えてもらう程度で、現金を受け取ることはありません。
 運ぶものについても、原作では100㎏のカバ(の子供)を運んだりするのですが、映画では配達前に重さを図ったり、段ボールいっぱいのジャガイモを何とか運ぶ程度です。
 
 アニメのほうが、原作よりもリアリティを追及しているようです。

 アニメの評価について、原作者の角野さんは、「キキが旅立つ時にキキの故郷の木に付けられていた鈴を鳴らすこと」程度の注文でしたが、徐々に内容が変更されていくにつれ、ジブリと協議をしながら進め、最終的にはアニメ映画を結構評価していたと思います。

 公開に先立つ、記者会見にも同席していますし、もともと原作になかった、ジジとキキが会話できなくなるエピソードを、第三巻の『魔女の宅急便 その3 もうひとりの魔女』に取り入れています。
 私としても、映画のこのエピソードはずっと心にわだかまっており、映画の評価自体にも関わっているものでした。また、そのショックのせいで、原作にもしばらく手が付けられないでいました。
 
 宮崎駿監督は、ジジがしゃべらなくなったのは「キキが変わったからである。そもそもジジの声はもともとがキキ自身の声であって、キキの成長に合わせてジジの声が必要なくなってしまったのだ。」と切って捨てています。
 しかしこれは絶対やりすぎで、演出過剰だと思います。

 角野さんも、キキとジジを別れさすのは思いきれなかったのでしょう。原作では結局、ジジとキキが会話できなくなることはなく、第一巻で予告されている二人(一人と一匹?)の別れについてもなくなり、それぞれが大人になって結婚し、子供ができても別れることはありません。この辺は、読者の声に沿ったのか、角野自身が割り切れなかったためでしょう。
 
 いずれにしても、角野栄子の代表作には違いなく、最も稼いでくれた作品でしょう。