国際法とは何か
国際法(International Law)とは何でしょうか。一言でいえば、国際社会を規律するための掟のようなものです。
国際法は条約と国際慣習法の2つに分類できます。条約は文字として残りますが、国際慣習法は文字で表されてはいません(成文化されていない)。その名の通り、一定の範囲の人々の間で反復して行われるようになった行動様式などの慣習が、国際法として機能するのが、国際慣習法です。司法の判例のようなものと考えれば、イメージできるでしょうか。
ここで問題です。国際法と法律(国内法)は、どちらが優位でしょうか。
正解は国際法です。だから国際条約に反する国内の法律(国内法)は、原則変更をしなければなりません。
多分ここで、ある疑問が湧いてきた方もいらっしゃると思います。
「あれ………?韓国は1965年に日韓請求権協定を日本と結んでいるはずなのに、今になって戦前の個人賠償を認める判決が裁判所で出たり、いわゆる従軍慰安婦の補償を請求したりしてるよね…?条約守ってないよね?」
そうなんです。実は国際法というのは、国内の法律ような強制法ではないのです。法を破った者には制裁が下されます。いわゆるこの制裁措置があることが、法を機能させている側面がありますね。しかし国際法の場合、国際法を破った者が必ずしも制裁を下されるわけではないのです。
たとえば、有名な例がアメリカです。アメリカは大東亜戦争(1941年~1945年)時、国際法違反の連続で日本に勝ちました。しかし、誰もアメリカを裁いていません。誰も裁く人がいなかったんですね。もう一度言いますが、法とは制裁措置を持って初めて機能する側面があります。万引きしてもお咎めなしでしたら、みんな万引きしますよね。万引きしたら捕まるから、万引きしないわけです。
最近ではロシアのクリミア編入が挙げられます。ロシアがやっていることは明確に国際法違反なのですが、どの国もちゃんとした制裁措置を下せていません。国際連合は常任理事国であるロシアの拒否権で動けず、ヨーロッパはロシアから天然ガスを輸入しているため、あまり大きな声を出せないのです。G8からは退場させられましたが、G20がありますからね。あまり効果はありません。
ここに国際法の本質を見ることができます。日本人のほとんどが国際法を国内の法律のような「法」と理解していることによって、国際法の正しい理解ができていないのです。
国際法は、守るために存在しているのではない
はっきり言っておきます。国際法は守るために存在しているわけではありません。このことを理解できていない日本人が多すぎです。
先日、某有名大学の学生が「国際法を学んだけど、国際法って全然世界で守られてないことを知って、あんまり意味ないんだなって思った」という話をしていたので、僕は驚愕しました。某有名大学の学生ですら、国際法の初歩的な理解ができていないのです。
国際法は守るために存在しているわけではありません。何故ならそもそも国際法は国内法のような強制法ではないですから。じゃあ国際法は何のために存在しているのかと言ったら破った者を糾弾するために存在しているのです。
国際法を破った国には、原則として国家責任が生じます。現代の主権国家の成立要件とは、国内的には治安維持能力であり、対外的には条約遵守能力だからです。この国家責任により、国際法を破った国に対して制裁措置を下すことができるのです。
”International low ”を”国際法”と訳したことが、日本人が国際法の本質を掴みづらくしている理由でしょう。この場合のlowの実態は”法”のことではなく、”仁義”という方が正しい。はっきり言って国際法はヤクザの仁義と同じです。ヤクザはなぜ仁義を守るのか。報復の口実にされるのを恐るからです。「仁義を破った者」と「国際法を破った国」は同じであり、弱いと思われれば報復される。逆を言えば、破っても強いと思われれば報復されない。この原理は今でも生きており、国際法が法でありうるのは、軍事力による抑止力のためです。
つまり、国際法は主権国家の軍事力なしには成り立たないのです。
世界は結局、力関係で動いていることを、今の日本人は理解していない
だから国際法を守らない国があるのは、当たり前です。破っても報復されないことがわかればいくらでも破ります。ロシアがクリミア編入をしたのも、現在の国際情勢を睨んで、「今だったらクリミア奪えるな」とプーチンが考えたからです。
このロシアの動きを最も観察しているのは中国です。今回のクリミア編入で、ロシアの暴力によるルールの変更に対して、国際社会が何もできないことが露呈されました。このことはかえって戦争を誘発する要因にもなりえます。報復されないとわかれば、中国は南シナ海で軍事的行動を起こしまくるでしょう。実際今でもやってますからね。
平和とは、軍事力によって守られています。秩序を維持するために、国家権力が暴力を独占しているのです。
「軍隊がなくなれば平和になる」
「日本国憲法を拝んでいれば平和が来る」
もうそんな思考停止の状態から抜け出しましょう。あなたは日本人として、中国に弾圧されているチベット民族やウイグル民族の人々に何も感じませんか。強いものが弱いものを虐げている中国の現状に何も感じませんか。日本だけが平和であれば、それでいいですか。
日本人はいつからこんなに卑屈な民族になったのでしょうか。