集団的自衛権(6)安保法制懇の「4類型」を解説する | 「日本の問題」について、大学生のリョウが考えるブログ

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 我が国、日本は様々な問題を抱えています。領土問題、歴史問題、そして日本国憲法…などなど。どうすればこの国は独立することができるのか。このブログでは、現在大学生のリョウが日本の問題について考え、その問題についてどう対処すればいいのかを綴ります。

 引き続き「集団的自衛権」について解説します。


 最初に確認しておきたいんですが、現在の日本の仮想敵国がどこか答えられる方はいらっしゃいますか。


 「アメリカだ!」


 「いや、韓国だ!」


 という方がいらっしゃるかもしれませんが、誤りです。



 正解は中国北朝鮮です。




 アメリカはムカつく同盟国で、韓国は(相対的に)どうでもいい国です。


 これはこれからの話につながる大事なことなので、覚えておいてください。


 

 安保法制懇の「4類型」を解説する


 2008年6月の第一次安倍内閣時に、安保法制懇が報告書を提出します。「4類型」とは、その報告書で提示された、日本の集団的自衛権の行使容認の必要性が考えられる4つのシュミレーションのことです。


 以下がその4つの事例です。



 (1)公海での米艦艇の防護

 (2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃

 (3)国際平和維持活動(PKO)などでの他国部隊を守るための「駆け付け警護」

 (4)PKOや戦闘地域での他国部隊への輸送、補給などの後方支援


(出典:「集団的自衛権のトリックと安倍改憲」半田滋)


 それでは解説しましょう。



 安保法制懇の「4類型」を解説する①

 (1)公海での米艦艇の防護、(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃

 


 今回は(1)公開での米艦艇の防護(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃 について、詳しく見ていこうと思います。


 まず確認にしておきたいのは上の4つはシュミレーションであるということです。つまり「もしこのような事態になったら、今の法整備のもとでは日本の自衛隊が適切に動くことができない。日本が集団的自衛権の行使を容認すれば、自衛隊がこの事態に対して適切に対処することができる」という意味で、上記の4つのシュミレーションが想定され、集団的自衛権の行使容認に踏み切ろうとしているのです。


 集団的自衛権に反対する立場の人(たとえば9条が大好きな軍事専門家の方)は、「4類型」に対して主に次のような反論を述べます。



反論1 「4類型」にある状況は、現実には起こりえない


反論2 「4類型」にある状況は、個別的自衛権でも対処できる


 

 大体この2つに分類できるのではないでしょうか。


 とりあえず(1)公海での米艦艇の防護 (2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃 がどういうシュミレーションなのかを説明しましょう。



 (1)公海での米艦艇の防護 

 →共同訓練などで公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても我が国の艦船は何もできないという状況が生じてよいのか。


 (2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃

 →同盟国である米国が弾道ミサイルによって甚大な自害を被るようなことがあれば、我が国自身の防衛に深刻な影響を及ぼすことも間違いない。それにもかかわらず、技術的な問題は別として、仮に米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合でも、我が国は迎撃できないという状況が生じてよいのか。


 ※(1)の公海は、国家が領有したり排他的に支配することができない海域のことをいいます。



 (1)は日米の共同訓練等で(別にアメリカに限った話ではないのですが)、アメリカの艦艇が攻撃を受けた場合、日本には集団的自衛権の行使が容認されていないので、自分が攻撃されない限り何もできません。


 (2)はアメリカに向かって、誰かがミサイルを撃ったということがわかっても、日本は自分に対して攻撃されていないのでそのミサイルを撃墜することができません。


 こういうシュミレーションを想定して、「これからの日本は集団的自衛権の行使が容認される方がいいのではないか?」という議論が行われるわけです。


 このようなシュミレーションに対して、たとえば(9条が大好きな)軍事専門家の方はこのように反論されておられます。


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 (1)公海での米艦艇の防護 についての反論

 →自衛隊艦艇が米艦艇を防護するのは非現実的である


 シュミレーションは「日本有時以外」で、「武力行使ではない海外活動」に自衛隊が派遣された場合のことを想定している。


 その場合、考えられるのは


 ①「掃海艇派遣」 → 海に敷設された機雷を除去する


 ②「洋上補給」 → 海上で艦艇に対して補給を行う


 ③「共同訓練や周辺事態」 → 共同訓練やその他の事態


 の3つである。


 ①「掃海艇派遣」の場合、派遣されるのは排水量わずか500トンの小型艦艇である掃海艇である。掃海艇の武器は20ミリ機関砲一門のみで、米艦艇を防護するのはほぼ不可能である。


掃海艇「すがしま型」




 ②「洋上補給」の場合、洋上補給中に攻撃を受けたら、自衛隊は集団的自衛権を意識するまでもなく、自らの防御のために反撃する。集団的自衛権を行使せずとも、個別的自衛権で対応可能である。


補給艦「とわだ型」


③「共同訓練や周辺事態」の場合、共同訓練中日米双方の艦艇はかなり距離をとって行動する。現代戦で艦艇への攻撃に使用されるのは、魚雷か対艦ミサイルの2種類。この2つは迎撃することがほぼ不可能である。


   
イージス艦



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 まず誰もが感じると思うのですが、不可能だから目の前で危なくなってる人に対して何もしなくていいのかという、人間としての当たり前の感情が湧いてこないでしょうか。


 もちろん助けた場合、自分も危なくなります。しかし、相手は同盟国です。アメリカは日本が他国から攻撃を受けた場合、助けることを明言しています(本当に助けるかどうかは別にして)。


 「お前は俺を守ってくれ。だけど俺はお前を守れない。だって命って大事だろ?俺の国では何よりも命を尊重するんだよ。しかもお前を守ろうとしたところで、守れるって保障があるわけでもないしさ。でも、俺が危なくなったら、きちんとお前命をかけて守れよ」


 つまり日本はこういうことを言ってるわけです。


 僕がアメリカだったら、「ナメてるのか」と思います。


 あと、そんなことを言う国を命をかけて助けたいと思いますか?いわゆる集団的自衛権を、「そもそも自分の国を守るためのものではない」とか何とかいって反対していたコメンテーターを報道ステーション(テレビ朝日)で見ましたが、どれだけ自分に都合よく物事を考えているんでしょうか。


 あと、集団的自衛権の行使ができないということの問題は、助けられないとかミサイルを迎撃できないとかいう問題以前に、何もできないということが問題なのです。行使が容認できれば(あと法整備が整えば)現場の判断で対処することができます。攻撃を受けるというのは非常事態です。その場合に、国内の日本国憲法とかいうわけのわからないもののせいで判断が制限される方がよっぽど危険です。


 続いて(2)について。


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 (2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃 についての反論

 →そもそも「ミサイル迎撃」は技術的に不可能


 日本のミサイル防衛システムは、発射されたミサイルに対して洋上のイージス護衛艦が搭載する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃し、撃ち漏らした場合、地対空迎撃ミサイル「PAC3」で迎撃する2段階を採用している。


 「PAC3」は射程が20キロしかないため、長距離弾道ミサイルを撃ち落とすことは不可能。


PAC3


 日本が想定しているのはイージス護衛艦による迎撃だが、搭載されている「SM3ブロック1」は高度、速度が劣るため、長距離弾道ミサイルを迎撃するのは、技術的に不可能である。


SM3ブロック1



 少しでも迎撃の可能性が出てくるのは日米で共同開発中の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」が実戦配備された場合である。

 しかし仮に実践配備されたとしても、発射台の弾道ミサイルが米国を狙うか、日本を狙うかわからない。

 弾道ミサイルはその目標によって飛行経路が大幅に変わるため、例えば北朝鮮から発射され、米本土を狙う弾道ミサイルを迎撃するには、日本のイージス艦は北海道の西沖に配置する必要がある。

 だが日本本土が狙われているのなら、イージス艦の配置は本州西側の日本海になる。


 迎撃ミサイルを搭載できるイージス艦は日本に4隻しかなく(アメリカは26隻保有しており、今後更に増やす計画を持っている)、優先されるべきは米国よりも日本防衛であり、集団的自衛権の行使が必要な事態にはならない。


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 (2)の反対論は説得力があります。確かに、弾道ミサイルがアメリカに飛んでいくのか、日本に飛んでいくのかわからないため、まずやるべきは日本の防衛です。


 ですが安全保障とはあらゆる事態を想定して対策を講じておくことをいいます。いわゆる(1)の米艦艇の防護や、次に説明する(3)の「駆け付け警護」など、自衛隊が現場の判断で対処できる法整備を整えておくことが、結果的には日本の安全を守ることにつながるのです。


 おそらく集団的自衛権に反対している人は、「日本が軍隊を持つと侵略戦争を始める!」という強迫観念を持っているのでしょう。


 なので「4類型」のシュミレーションや集団的自衛権の行使容認が、結局は日本が侵略戦争をするためのこじつけだと思っているのかもしれません。


 じゃあなぜそんな考えになっているかというと、「過去に日本は軍部が暴走し、侵略戦争を遂行した」という歴史観によるものだろうと思います(みなさんもそう学校でそう教わったのではないでしょうか)。


 しかし、あえてここで言っておきます。それは間違った歴史認識です。


 いずれその話も書こうと思うのですが、今日はとりあえずここまでです。