ネット小説「works」

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深海少女物語「命の石」4月20日公開
しばしお待ちを!

「かっぱのななこ」Facebookページもございます。

https://www.facebook.com/ かっぱのななこ-1731129513852307/


1話から読みたい方はトップ画下の「記事一覧」→「テーマ別記事一覧」→左端の「古い順」にしていただけるとサクサク読めるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

決めた!!あなたの名前はね!

 

 

 

 

最終話にて、パプアンが新しい命につけた名前。

 

「」の中が空白になっていますが、決して書き忘れとかではありません。

 

他にも「」の中が書かれていないところが各所ある今回の物語。

 

白い画面に白い文字で書いてあるのです。

 

 

web小説でしか装飾できない書き方をたくさんさせていただき、本文の拙さも含め読み苦しい物語だったかもしれません。

 

それでも最後までお付き合いくださったみなさま、ありがとうございます。

 

 

今回の物語を書くにあたり、素晴らしいイメキャラ及び作画下さった「Itsuki」先生。

画像編集、HPデザインも手伝ってくれた「りこp」。

クラゲ及び深海世界の様々なアドバイス下さったT大学海洋学部の「さっしー」。

 

「命の石」チームwの「はるちゃん」「あにぃ」「紗々」「堂ちん」、ほんとありがとう!

 

 

 

海にて、水族館にて、この子たちに似た生物に出会った時。ぼんやりでいいので思い出して読み返していただけると嬉しいです。

改めて全7話、お付き合いくださりありがとうございました。

 

 

 

 
 

 
 

 

 

サオラが弾いていた曲を最後に。

 

 

     2019.6.1   croll

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
白いサンゴの墓場、ピアノの音色。
 
サオラ姉さんが奏でるサティの「ジュ・トゥ・ヴ」。

 

 
 
「かわいいなぁ。。。」

 

 

砂に寝っ転がったパプアンが、独り占めとばかりに愛おしく見つめているもの。

 

それは私が最後に渡した種。

白い砂漠でようやく芽吹き、彩りのない深海に一輪の花を咲かせた。

 
 
 
サオラ姉さんのワルツに合わせて、踊るように揺れる花。

パプアンのうつぶせて跳ね上げた足が真似するように、右に左にご機嫌にリズムを刻んでる。

 
 
 
「・・。サオラ、いい曲ね、それ。」
 
 
サオラ姉さんがピアノを弾く手を止め、意外そうに驚いてパプアンを見つめる。
 

 
「どうしたの?パプアンがそんなこと言うなんて珍しい。。」
 
「もぅなによ!サオラは私がただの乱暴者とでも思ってるの!?いいから続き弾いてよ!」
 
 
 

私の帽子より一枚多い、五枚のピンクの花びら。
 
 
でもね。
 
実はね。
 
 
ただの「おはな」じゃないんだなー、この子。
 
 
パプアンもサオラ姉さんも、きっと驚くだろうな。。
 
お楽しみはこれから!

 

 
 
 
再び流れる音楽に、再び踊り出す花。
 
 
「えいえい、こいつぅ~~!」
 
揺れる花が可愛くてたまらないパプアンが、バットでつつく。
 
 
「パプアン、触っちゃだめよ。そっとして・・・。」
 
 
たしなめるサオラ姉さん。
言い終わるや否やの出来事。
 
 
 
 

 
 
 
 
ポン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花びらはじっとしてられないとばかりに、その茎を切り離し空へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

「いってらっしゃい、小さな命」
 
 
 
 
 
 
「!!!??サオラサオラサオラサオラ!!!大変っ!!!!!」
 
 
 
 
崩れ落ちるように非常停止する「ジュ・トゥ・ヴ」。
 
冷静なサオラ姉さんも、未だかつてない驚きよう。
飛び立った小さな花びらを、ポカンと目で追っている。
 
 
穏やかとはいえ、その潮の流れに押されて引かれる花びら。
 
 
吸って吐いて。
吸って吐いて。

 
呼吸に合わせてピョコピョコと帽子を膨らませ、白い世界を確かめるように泳ぐ。

やがて砂の隙間から浮かんだ泡に捕まると、そのまま空高く浮かんで行った。

 
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・・。。。。。。。。。。。。。!!!待ってぇ~~~~!!!」
 
 
 
顔を見合せた二人は慌てて、遠ざかる花びらを追いかけた。



泡が割れると次は風。

読めない2枚潮の流れに、花びらは舞い踊る。

 

 

 

 
「サオラ!そっち行った!!」
 
「パプアン!上よ!あっ、違うぅ!右!右!」
 
「サオラ!スカートの下ぁ!!」
 
「いやん!パプアン捕まえて!どこどこ?」
 
「いたぁ!!サオラ!こっちこっち!」
 
 
 
追い詰められ、二人に囲われ行き場を失くしたピンクの花びら。
ようやく開いた大きな目をぱちくりさせて、二人を交互に見つめていた。


「。。。この子。。何?」 

「・・・かわいい。。」

「・・うん、。。そうね。


 
その小ささと可愛らしさに、二人が目を奪われている隙。
 
 

 
「カプッ」
 
 


小さな命はサオラ姉さんの手に噛みついた。
 
 
「!!?」
 
 
サオラ姉さんが猛毒とは知らない小さな命。
振り払い突き飛ばすには、あまりに儚い小さな命。
 
 
慌てる二人を気に留めるわけでもなく、その命はサオラ姉さんの手に抱かれて甘えた。
 
 

「えっ?なんで?」
 
「・・・。。。多分、・・この子がコルパタの子だからかも・・?」
 
「・・。サオラに一度触れたから、もう大丈夫ってこと?」
 
 
 
小さな命が不器用に泳いで渡った先はパプアンの手。
その手に頬ずりすると、持っていたバットの周りをクルクルと回りだした。
 
 
「あら・・?パプアンも大丈夫なのね?あなた、いつコルパタに触れたのかしら?」
 
「!?・・。あっ、ええ?あああ、そ、そ、それは・・・」
 
 

すべてお見通しなサオラ姉さん。

困ったパプアンは、顔を真っ赤にして照れている。

 

 

 
「この子・・、ただのお花じゃなかったんだ。」
 
「私たちの仲間・・。いいえ、「かぞく」ね。」
 
「かぞく?・・・。なんだそれ?」
 
「うーん?よくわかんないけど、ポカポカ温かそうでいいじゃない!」
 
 「コルパタの子だからきっと食いしん坊だよね。」

「そうね。それにきっと優しい子にちがいないわ。」
 
 
 

 

 

 

 

私はここにいるよ。

 

 

爆発で欠けてしまったヴィーダの破片。

ピアノの傍らに埋もれた、ヴィーダの微かな光。

 

 

私の体は水に溶けてしまったけど、ここであなたたちを見ているの。

 



 
 

サオラ姉さん、ピアノを教えてあげて。

 

パプアン、冒険に連れてってあげて。

 

 
その子に色んな事を教えてあげて。

 

過ちを恐れないで。

悪いことしたら、きつーーく叱ってあげて。

 
 
 
パプアンのように強く生きて。 
サオラ姉さんのように優しく生きて。
 
 

 
そしていつか、砂に埋もれた私に気づいてね。
 
 
それまで私、このヴィーダの光の中で、あなたたちを見守って輝くから。
 




 
 
命と魂。
再び蘇り、栄える日がきっと来る。

だから私たちは生きているの。
命の石が、きっと試しているの。

だって世界が絶望だけじゃ、悲しすぎるでしょ。


 
 
 
 
 
 
毒が効かない子だとわかると、パプアンがじゃれつく命をそっと抱き上げる。
 
 
 
 

決めた!!あなたの名前はね! 「 サクラ

 

 
 
 
 
小さな命が始めてもらったプレゼント。
 

その名前がよほど気に入ったのか、小さな花は元気に帽子をはためかせていた。 

 

 
 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 
 
 
 

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墜落した戦闘機が、海の底へ沈んでいく。

抱いていた泡と油を吐き出しながら。

 

 

コックピットのガラスが、ひび割れて砕ける。

両翼に括られた爆弾が、水圧にぎりぎりと軋んでいる。

 

 

 

「サオラ姉さん!パプアン! どこ!?」 

 
 
光なき闇の中、あたりを見回し私は叫んだ。

 

 

 

朝なんて来ない海溝7000m。
 
だけど今は夜。
わかるんだ。
 
きっと、二人はまだ眠ってる
 
 
「・・コルパタ?」
 
 
サオラ姉さんが岩陰から顔を出した。
私の後ろに迫る鉄の塊を見つける。
 
 

「コルパタ!こっちよ!!」
 
 
ただならぬ状況をいち早く察し、岩陰に私を誘導する。
 
 
 
 
沈んでいく機体が、そびえ立った岩にその翼をぶつける。
 
 
雄叫びに似た禍々しい音が、平和だった私たちの世界に鳴り響く。
振動で水が震えて視界が歪む。
 
衝突の衝撃で、躓くように向きを変える巨大な機体。
砕け散った金属の破片が、砂ぼこりと共に巻き上がる。
 
 
 
「サオラ姉さん!パプアンは!?」
 
 
いつも冷静なサオラ姉さんが言葉を失い、指さした先。
翼にくくられた爆弾が外れ、谷を滑落する。
 
落ちる谷の先。
狭い岩場。
 
行き場を失ったパプアンが、そこにいた。
 
 
 
「コルパタ!ダメ!!」
 
 
無我夢中で飛び出した私。
サオラ姉さんの叫ぶ声が後ろから聞こえる。
 
 
「パプアン!!」
 
 
追いついたパプアンを抱きしめ、僅かに凹んだ岩壁にしがみついた。
私の背中をかすめて滑っていく爆弾。
 
 
「よかった。。。間に合った。。」
 
 
ほっとしたのも束の間。
触れた爆弾の尾翼が、パプアンの持っていたヒゲを弾き飛ばした。
 
 
「あっ、私の・・・。」
 
 
スローモーションのように緩く回転しながら、海の底へ沈んでいくヒゲ。
 

パプアンは手を伸ばす。
だけど届かない。
 
いつまでも目で追うパプアン。
お別れのような、寂しそうな眼差し。



私は思い出していた。

ヴィーダが蘇らせた、私たちの過去を。
 
 
 
 
サポーター焼けした手首。
絆創膏の貼られた手。
 
私からボールを受け取って、グラウンドに駆けていく野球部の女の子。
 
渡り廊下からの心なく囁く言葉に、歯を食いしばっていた女の子の顔を。
悔しそうに震えてた、その後ろ姿を。

 

 

 
あのヒゲはパプアンの大事なもの。
 
夕焼けが長い影を伸ばしても、部室の外で素振りしてた姿。
 
大切な大切な、その名前は「バット」。
 

あのバットはパプアンの勇気。

 
「ホームラン」と叫んで泣いたパプアンの気持ちが、今ならわかる。
 
 
 
私は岩のくぼみにパプアンを押しやると、落ちていくバットを追った。
 
 
 
「コルパタ!!?いいから!そんなもの!」

 

 

パプアンが泣き出しそうな声で叫んでる。

 

 

 

 

 

「そんなもの」なんかじゃない!

 

お願い、「そんなもの」なんて言わないで!

 

 

 

 

悔しい思いしてきたじゃない!

 

努力も夢も、全部全部奪われて、陰口までたたかれて。

それでも、野球が好きだったんでしょ?

 

亡くしたはずなのに、それでも思い出すほどの残影の「きおく」。
それはパプアンの「一番」だったものだからでしょ?
 
 
 
 
見失いそうな流れの中、体が思うように動かない。
気を許すと、流れに飲み込まれてしまいそう。

 
お願い、届いて!
 
もう少し。
 
もう少しだ!
 
パプアンのバットが私の手に触れる。
 
 
 
「コルパタ!!」
 

 
 バットを掴んだその瞬間。

粉々になった戦闘機の破片が降り注ぎ、私の顔と帽子を切り裂いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
海溝のさらに深いところ。
落ちた爆弾は、深い深い海の底でちっぽけな星となる。
 
 私を追い越していった彗星のような光。
ヴィーダの石が赤く燃えていた。
 


愚かな人間がこじらせた、未完成の魔法は解ける。
まるで、何もなかったように。
 
 
すべてヴィーダが受け止めた。

 

最先端の玩具(おもちゃ)の爆発さえ嘲笑うかのように、解除して融合する姿。
 



それが、私の目が最後に見たもの。
 
 
 
その先はもう何も。
 
何も見えなかった。。。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   とくん  とくん   とくん
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                 心配。。してくれてるの?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                                     ・。  ママ  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
うん。。   聞こえるよ。。
 
 
  よかった。
 
 
 
 
 
          どうやら  守れたみたい。。
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
闇に沈んでいく、私の体を受け止めた腕。
 
 
背中に小さく痺れる痛み。
サオラ姉さんの腕の中だと分かる。
 
 
「・・。コルパタ。。すぐにヴィーダに治してもらうから!」
 
 
 
 
・・。
 
 
 
らしくないなぁ。。
 
サオラ姉さん、取り乱したりして。。
 

 
私でもわかるよ。

 

 

もう私が助からないのは、サオラ姉さんなら当然わかるでしょ?
 
 
 
「ねえ。。。パプアン。。いる?」
 
 
まさぐって伸ばした手に触れた、パプアンの冷たい手の感触。
 
 
 
泣いてるの?
 
震えてる。
 
 
 
私はバットをパプアンに手渡した。
 
 
 
「・・・折れてないかな?・・大丈夫かなぁ?」
 
「バカ!!コルパタのバカ!!」
 
「ねぇ。。。二人にお願いがあるの。。」
 
 
 
終わっていく私の鼓動。
その命を引き継ぐように、その体の真ん中で力強く脈打つ「たね」。
 
私は最後の力を振り絞って、体の中で息づく「たね」をその手に取り出した。
 
 


「お願い。。。咲かせて。。。この子を。。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
溶けていく
 



海に


水に
 



消えていく
 


私の体



私の   


 
 
 
 
 
                 
   コルパタ   
                             
 


        サオラ姉さん
 
 
                         
 
 
          どうか  悲しまないで
 
 
            もう、終わっちゃう私だけど
 
 
  新しい命 引き継ぐことができるんだよ
 
 
 
 
   それって、すごーーく
 
 
        素敵なことじゃない?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この戦争が終わっても、もう地球は助からない。
 
落下した爆弾。
その中身の炎は、残った生き物の「種」さえ残せなく殺したから。
 
 
 
でもさ。

ひょっとしたら、眠るだけかもしれないね?
 

 
何千年なのか?

何万年なのか?
 
 
 
だからこれはきっと、ヴィーダがくれたチャンス。
 
滅びゆくどうしようもない世界で、それでも私、かろうじて残せたんだから。
 
私たちが命をあずけた、この海の底で。

命は、ゆっくりと時間をかけて育つのかもしれないよ。 

太陽の照らす。
月の微笑む。

滅びた地上を再び目指して。
 
 

 
私の中の「たね」は、どっちに手渡されたのかな?
 
 

パプアン?
 

それとも、サオラ姉さん?

 
 
どっちでもいいか。
 
だって二人とも、私の大好きなお姉さんだもん。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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下駄箱に靴がなかったので、上履きで帰った木曜日。

もうすぐ降り出しそうに垂れた灰色の空。
 
 
女子野球部がグラウンドで練習してる。
フェンスを超えたファウルボールが、私の足元に転がった。
 
 
「ごめーーん、取ってぇーー。」
 
 
拾って顔を上げると、バックネット越しに女の子が手を振ってる。
 

背番号のないユニフォーム。
補欠の3年生。
 
その子の名前を知っていた。
 
 
「・・。届くかな?」
 
 
少し後ろに下がって、空に向けて思いっきり放った。
私の手を離れた脆弱な弧を描くボール。
ネットの中間に当たり、私の後ろに跳ね返ってきた。
 
 
「あーー、いいよいいよもうー。こっちこっち!」
 
 
三塁側のフェンスのネットが破けてて、小さく穴があいていた。

サポーター焼けした手首。
絆創膏の貼られた手が覗く。
その子は私からボールを受けとると、グラウンドへ駆けていった。
 

 

 
「とっくに大会中止なのによくやるよ。」
 
「じっとしてられないんじゃない?」
 
「それどころじゃないっつーの、空気読めよ。」
 
 
 
それは私の斜め後ろ。
渡り廊下から聞こえた会話。
 
 
 
 
 
音楽室のカーテンが閉まっていた。
いつもならこの時間、サティが聴こえるはずの部屋。
 
通りすがりに微かに聴こえた不協和音。
わずかに開いているカーテンの隙間をそっと覗く。
 
 
ピアノを前に座ってる女の子。
足元に転がった松葉杖。
 
電気もつけない暗い部屋。
長い髪が影となり、闇に馴染んでいた。
 
 
包帯をした指を諦めたように見つめ、鍵盤に触れる。
ただ漠然と、不規則なテンポで繰り返し鳴らす絶望の音色。
 
 
無表情な髪の長い上級生。
その子の名前を知っていた。
 
 
「空襲の火傷で、指がもう動かないんだって。」
 
「天才美人ピアニスト、期待されてたのにねぇ~。」
 
「こんな時だし、しょうがないじゃん?あきらめ悪いよね、うっとおしい。」
 
 
それは先週の話題。
 

まるで電車の床、誰かが置いてった空き缶。
右に左に転がりまわる悲劇は、誰もがつま先で遠ざける。
 
 
 
基地となった隣の学校から戦闘機が飛び立った。
公園の炊き出し。
うどんの匂い。
剥がれた行方不明捜索者のビラが、風に回収され植え込みでゴミとなる。
 
駅に着くと、スマホのアラートが鳴った。
 
多摩川の向こうの町。
今日3回目の避難警告の発令。
 
 
「京急どこまで運行してる?」
 
「堀ノ内まで大丈夫みたいよ、ラッキー!」
 
 
乗らない方が良いのに。。
15分後、電車は爆撃受けてみんな死んじゃうのに。
 
上大岡駅は一昨日壊滅。
だから私は帰れない。

 

 

  「あぁ、今日はお父さん、機嫌良いといいな。」

 


帰れないのにそう思う。

 

 

 

支援センターの職員が、週3で家にやってくるの。



「ほんとの事、言っていいのよ。」


笑み浮かべ優しい口調で、私を諭すように問いただす。

 

 

「お母さんが出てったのは私のせいなんです。」

 

 ほんとの事なのに。。

何度言っても聞き入れてくれない。

 


私がバカだからいけないの。

 叱られても仕方ないよ。

 

背中の痣を、折れてる奥歯を、おとうさんのせいにしないで。

 

 

 私は助けなんか求めていない。

みんな大嫌い。

 

ほっといてくれれば良いのに。
誰もあなたたちの輪の中に入ろうなんて考えてないのに。
 誰に迷惑かけたわけじゃないのに。
非難され、後ろ指さされながら生きている。
 
 
 
聞き覚えのある音がポケットで鳴っている。

LINE?

違う、電話だ。珍しいな。

045からはじまる見知らぬ番号。
 
 
「。。もしもし」 
 
 
上空のヘリコプターが五月蠅くって、よく聞こえない。
電話の向こうの声は、取り乱す事なく告げる。
 
 
 

 
 
「アナタノ オトウサンガ ナクナリマシタ」
 
 
 

 
 
 
(・・もう、ぶたれないで済むんだ)
 
 
 
 

 
悲しかった。
 
 
ホッとしてしまった自分が悲しかった。
 
 




 
 
 
 
 
 
 
 
どうせ電車ないから、宮川公園まで歩いた。
海岸通り、折れた風力発電の風車。
千切れた羽根が、砂浜に突き刺さってる。

南京錠の壊れた扉。
錆びた螺旋階段。
カンカンカンと、傘で手すりを鳴らして昇った設備室。
 
ガラスは割れて風の吹きすさぶ窓から、広大な海が見える。
お気に入りの帽子が飛ばされたから、私は追いかけて空へ飛んだんだ。
 
 
 
 


 
 
 
そう
 
 
 




 
思い出した
 
 
 
 
 


 
かつて、私は「人間」だった。
 
 
 
 
 
 
私たちは命の欠片。
 

大好きなものを、大切なものを奪われて、自らを世界から切り捨てた命の欠片。

海の底に沈み、ヴィーダにより再生された無力な魂。

 

 

 

地上はすでに、収集つかない戦争を絶賛開催中。
指揮官も独裁者も、唱える正義もとっくに殺された。
欲しがることを繰り返し、進化を止めた貪欲な文明。
 
 
そして、お構いなしに月は空に浮かんでる。
 
 
私はその月の隣。
宇宙に立って、滅んでいく星を眺めていた。
 
 
 

 
 


 
パプアン。




サオラ姉さん。
 
 



あなたたちも、ここから来たのね。
 
どうせ終わっちゃうこの世界で、私たちはすれ違っていたのね。

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 




 
 
月となったヴィーダが私に語りかける。
 
 




 
         とくん
 
 
 


 
私の中の命が、私の答えを欲してる。 
 
どこかで落としたスカーフ。
制服のお腹に、そっと手を当てる。
 
 

 
 
 
「心配いらないよ。。」
 
 
 


 
 
 
             スニ ?
 
                                              
 
 
 


 
 
だって、守りたいものなんてなかったんだ、私。
  でも 見つけたんだ。。。
 
 
 
 
 
 
闇が迫る空、激しい空中戦を繰り広げていた2基の戦闘機。
翼に炎を蓄えて、落下していく機体。
高い水しぶきを上げて、それは海へと墜ちた。
 
 
 
「・・。あの場所は。。。」
 
 
 
 
嫌な予感がした。
 
 
 


 
 
 
            デ   マモマエニ 
 
 
 
 
 


 
寄り添っていた月がふっと消える
 
放り出された星の降る宇宙。
私の体は、螺旋を描き落ちていく。
 
 
 



 
                      ヲ 
                       
 
 

 
強い風圧の中、薄く目を開けると彗星の光。
並走する銀色の光が話しかける。
 
 
私は両手を広げた。
 
羽衣の翼が風を切る。
 
旋回する体が、深い雲を裂く。
導く銀の光を、私は追いかける。
 

 
持ち込まないで
この醜い争いを!

もう奪わないで
私たちの世界を!
 
 

加速する体が、世界の最期の夜を見下ろす。
 
焼けた鉄の黒い匂い。
チリチリと真っ赤に弾け、燃え盛る街。
 
 

待ってて、サオラ姉さん、パプアン!
 

 
「ヴィーダお願い!私を帰して!二人のところへ。」
 
 
 
ようやく掴んだ光は赤く輝き、私は思わず目を閉じた。
 
 
気付けば私は海の底。
紺色の海を戦闘機が、私たちめがけて降ってきた。
 
 
 
 
 
 

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ヴィーダの光が、緩やかな影を揺らす。
長い髪の影で、それがサオラ姉さんだとすぐに分かる。
 
 
「コルパタ、どうしたの?怪我でもしたの?」
 
 
気づけば長い時間、ヴィーダの前に座ってた。
サオラ姉さんは私の顔を覗き込む。
 
 
「・・・。なんでもない。少し体が重たいの。」
 
「そう。パプアンと遊んで疲れちゃったかな?」
 
 
サオラ姉さんは髪が私に触れないようまとめて整えると、隣に腰かける。
 
 
「それとも・・パプアンとけんかでもしたのかな?」
 
 
 
単純な私のわかりやすい顔から、サオラ姉さんが簡単に推理する。
悩んでるって事も、全てお見通し。
 
 
「ううん、そうじゃないの。」
 
私は首を横に振る。
 
 
 
「サオラ姉さん、。。ホームランって知ってる?」
 
「?。。ホオム・・ラン?・・知らないわ。」
 
 
 
パプアンが呟いた一言。
 
 
私はサオラ姉さんに、今日のパプアンの事を話した。
 
泡を打ち上げ喜びはしゃいだその言葉の後、こぼしたように染まったかつてない悲しい顔。
 
 
 

「それはたぶんね。。。「きおく」のせいかな?」

 
「きおく?」
 
「私たちが昔から持ってて、覚えていたものの事よ。」
 
「昔?。。昔、私たちは違う誰かだった・・って事?」
 
「・・かな?・・。かもしれないね。」
 
「それは・・きおくって。。悲しいものなのかな?」
 
 
あの時、パプアンは泣いていた。
 
気掛かりだった。
 
「ホームラン」がパプアンを悲しませるものであったならば、私はヒゲを拾うべきではなかった。
あのまま闇の底へ、葬り捨てるべきだった。
 
 
 
「悲しかったことや嬉しかったこと、どっちもかな。」
 
「悲しいことなのに、どうしてそんなこと思い出しちゃうのかなぁ?」
 
「そうね。。。心のすみっこに張り付いていて、時々めくれちゃうのかもね?」
 
 
 
ヴィーダの光が左右に揺れる。
サオラ姉さんの頬に影を落として。
 
 
「コルパタも持ってるんじゃない?ときどき思い出すようなきおくを」
 
 
 
 
 
 
「おとうさん」
 
 
 
 
 
 
噴火の前の、地面を叩くあの音。
私が「おとうさん」という言葉を思い出すのと同じなのかな?。
 
 
「おとうさん」ってなんだろ?
 
 
それが「きおく」だとするなら、それはとても悲しい「きおく」。
 
「かなしい」と同時に、 とても大切だったもの?
 
・・・・・・。。。
 
 
 
やっぱり思い出せないや。
 
そんな気がするだけ。
 
 
 
 
「じゃあ。。。「ゆび」っていうのも?」
 
 
 
「ぴあの」を前に、サオラ姉さんが呟いた言葉。
ぼんやり聞いてしまった自分に驚き、あわてて膝を抱えてうつむいた。
 
サオラ姉さんは困りも驚きもしなかった。
深く息を吸うと、懐かしむように闇の空を見上げた。
 
 
 
「私にとって、もう取り戻せない大切なものだった気がするわ。でも、それと同じくらい・・。。」
 
 
 
サオラ姉さんは思い出そうとしている。
 
私は待った。
じっと膝を抱えて、自分の手を見つめてた。
 
 
「・・。ゴメンね、やっぱ思い出せないや。」
 
 
ヴィーダの光がそっと揺れて、サオラ姉さんの髪が赤く煌めいていた。
 
サオラ姉さん、笑ってる。
 
 
「コルパタは優しい子だね。ごめんね、心配かけて。」
 
 
 
こんな時、きっとそっと頭を撫でてくれるんだろうな。
見知らぬ想像が追いかけてくるのも、きっと「きおく」のせい。
 
 
「・・・。サオラ姉さん。。あのね。。」
 
 
私はもう一つ聞きたい事があった。
 
 
の時。
 
 
聞き覚えのない声が聞こえた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                         (オシエテ アゲル)
 
 
 
 
 
 
 
 
か細い囁くような声。
 
 。               。
 
                               
 
 
                                                               (誰?)
 
                 。
 。
                        
 
                                        。
 
 
 
私の頭の中の言葉に返事をするように、声は答える。            。
 
                。
 
                              。
                                             。
       。
                   
 
                                  。
 
            。                   
 
         (アナタノ ステタモノ オシエ アゲル)

    。

                                      。

              。

 

  。                          

        。

                                    私のすてたもの?

           。                         。

               。           

。                                     

                         。

               。

                                       。

                                              (マモレル?)
                   。
 。
                          。         
 
           。                   。
 。                   。        
 
                             。     。
            守れるって?・・・なにを?

 。            

 

              。

                      

           

            。

                       (イチドハ ステタモノ)

                    。

                              

                                        。

           

                                    。

 

                               。

 

 

                                      。

「とくんとくん」と、私の体の真ん中で動いてる。

聞こえない声に,その言葉に反応し、まるで返事をしているように。。

 

パプアンと抱き合ったあの日から、私の中で芽吹いている「たね」が。
 
 
 
 
 
 
 
 
   オナ  
        モツ
            
             
                ミ           。
             
              。
   オシエテ アゲル       ア

                   

                  タ

                 ガ

                  

                   レ

                    

                     
                      
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                どうすればいいの?

 

 

 

 

                                      

 

 

 

                        

                               

                                              

                                イ     

                                   ヨ

   

 

 

 

 

 

 

 

                                               

                                              ム 

                                               レ    

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「どうしたの、コルパタ?」
 
 
 
 
 
 
サオラ姉さんが、ぼんやりしてる私の顔を覗き込んでいた。
ヴィーダの光が目の前で、誘うように揺れている。

 

 

「・・。。あれ?・・わ、私。。?」

 
 
 
見廻すけれど誰もいない。
 
 
 
不思議そうなサオラ姉さんの顔。
あれは、私にだけ聞こえた声?
 
 
 
 
「おやすみコルパタ。だけど、そこで寝ちゃダメよ。」
 
 
 
サオラ姉さんは闇の染める空に浮かんでいった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
       耳鳴りがする。
 
 
 
 
 
 
 
ああ       これ は
 
 
                   「ひこうき」?
 
 
 
  違う
 
                      「ふうしゃ」の音だ。
 
 
 
 
        ぐるぐる                廻る
 
 
 
 
 
     「ひこうき」?
 
 
 
 
            「ふうしゃ」?
 
 
 
                          なに?   それ?    
 
 
 
 
   おもいだせない
 
   
 
 
 
 
 
               ドコ?
 
 
 
 
  私のきおく
 
 
 
 
 
  私は   
 
             誰?
 
 
 
 
 
 
 
            
               
 
                    テ 
            
            ク        ナル
 
 
 
 
 
 
 
 
 
銀色の光が瞬いている。
 
 
 
「さっきの声はあなたなのね、ヴィーダ。」
 
 
銀色の光が、うなずくように揺れた。
 
 
 
 
 
ヴィーダ。
 
連れてって、私の「きおく」へ。

 

 

私は決めた。

                         

怖い夢の向こうにいこう。
 
 
 
 
 
 
                       トクントクントクン
 
 
 
 
 
 
呼んでいる
 
求めている
 
私の中に息づく「たね
 
 

 

 

 

「大丈夫だよ。。。」

 

 

 

私は答えた。

 

 

 

静寂に耳をすませて、そっと目を閉じる。
 
瞼の裏の残像の碧を、その闇を溶かして。
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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サオラ姉さんにはお気に入りの場所がある。

 

 

 

そこは、白く枯れ果てたサンゴの墓場。

 とっくに崩れ落ちた白い粉が、深く積もっただけの彩りのない場所。

 

 

殺風景ともいえる真っ白い世界に、ぽつんと取り残された大きな黒い塊。

緩い曲線を描いた黒い塊が座っている。

 

 

サオラ姉さんはそれを、「ぴあの」と呼んでいた。

 

 

 

蓋を開けると、揃って並んだ白と黒の板。

 

まだ色を僅かに残したサンゴの残骸を椅子にして、サオラ姉さんはその板に触れる。

 

 

 

 

                         ♪

 

                                   

 

 

 

音が鳴る。

 

 

震えた水が揺らいで、体の中に溶けるような澄んだ音。

厳かに響く音が伝わる。

 

 

「なにそれぇ~!?私もやるぅ!」

 

 

私やパプアンでは鳴らない。

鳴らせるのはサオラ姉さんだけ。

 

パプアンに至っては怒ってその板を肘打ちし、サオラ姉さんに怒られる始末。

 

 

 

サオラ姉さんの奏でる音を、じっと聞いていた私達。

 

しかし、自分には鳴らせないのが分かって、パプアンはすっかりご機嫌ななめ。

膝を抱えて座ってた姿のまま、サンゴの砂に倒れるように転がった。

 

 

「パプアーン、そんなとこで寝てると沈んじゃうよぉ。」

 

「う~~ん、だって退屈なんだも~~~ん。。。おやしゅみぃ~~~。」

 

 

 

ごろんと転がったパプアンの黄色い体が、貝のようにズブズブ砂に埋もれていく。

 

 

「もうーー、こんなにきれいな音なのにぃ~。。」

 

「パプアンはじっとしてられないのよ。」

 

 

サオラ姉さんはそんなパプアンの恰好をみて、クスリと笑う。

 


   

               

       ♪           

 

 

 

丁寧に選ばれた音が、白い世界を彩る。

 細かく生まれた泡が、まるで踊り始めるようだ。

 

 

 

 

とくん  とくん ・・

 

 

 

 

その音を喜ぶように、私の真ん中で新しい鼓動が踊っていた。

まるで、笑ってるみたい。

 

 

「ねぇサオラ姉さん、このぴあのはどこから来たの?」

 

「。。たぶんね、上の世界から落ちて来たのかな。」

 

 

 

上の世界

 

 

サオラ姉さんも、かつて見たことがあるのかも?と曖昧な返事をする。

「たぶんね」と、思い出せないことがたくさんあるようなサオラ姉さんの口癖。

 

 

サオラ姉さんの言う事が正しいのか確かめるすべもなく、それが仮に嘘だとしても私はなにも困らない。

 

 

「ぴあの」のやってきた上の世界はさておいて、私は考えていた。 

頭のいいサオラ姉さんなら、もしかして知ってるかもしれない。

 

 

 

パプアンと抱き合ったあの日。

サオラ姉さんが私を助けてくれたあの時。

 

私の中で溢れた気持ちの名前を。

液体を零し、互いに夢中に絡まった行為の名前を。

 

 

だけど。

 

 

 

 

「サオラには内緒だよ。」

 

 

 

 

パプアンと約束した。

 

 

 

いけないことの気がしてた。

サオラ姉さんを困らせるような、恥ずかしくていけないこと。

 

だから言えないし、聞けない。

 

 

 

 

「ぴあの」の音が、突然止まった。

 

サオラ姉さんは何か思い出したかのように、自分の手をじっと見つめていた

 

 

 

 

 

 

ゆび・・・

 

 

 

 

 

蒼ざめ悲しそうな顔をして、ぽつりと呟いた。

 

 

「サオラ姉さん?。。。」

 

 

返事はなかった。

 

顔を伏せそっと「ぴあの」の蓋を閉め、何もいわず去っていくサオラ姉さん。

私のかける声に、振り向く事もなく。

 

 

 

「ゆび?・・・」

 

 

 

私もじっと自分の手を見た。

そこには何もない。

 

ただ腕から伸びた突起のない楕円があるだけ。

「ゆび」なんて、そこにはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コルパタ、いい遊び思いついちゃった!ついてきて!」

 

 

岩陰でまだ寝ていた私をたたき起こすパプアンの声。

寝ぼけまなこの私は言われるまま、ぼんやり後をついていった。

 

 

そこは以前、噴火のあった場所。

まだ熱を帯びた海底が、ゴボゴボとたくさんの泡を吐き出していた。

 

 

「こんなとこでなにするの?」

 

 

パプアンは浮かび上がる泡を前に立ち、愛用のヒゲを立てて構える。

 

 

「いいから見てなさいって。 エイッ!」

 

 

浮かび上がる泡を狙って横にヒゲを振る。

当たった泡はそのまま砕け散り、ばらばらと空に浮かんでいく。

 

 

「あっれぇ~~~?うまくいかないなぁ。。」

 

 

 

パプアンは遊び方を説明してくれた。

 

浮かび上がる泡をヒゲで打って、潰すことなく空高く飛ばそうというのだ。

 

 

「。。そんな事してなにが楽しいの?」

 

「わかんない!」

 

 

パプアンは構え方や立ち位置を変えながら、きっぱりとぶっきらぼうに答える。

 

 

「(ヤレヤレ)。。。それで、私は何すればいいの?」

 

「私の打った泡を捕まえるの。そうすればコルパタの勝ち!」

 

「?・・」

 

 

こんな遊びに勝ちも負けもあるのかしら?

 

 

「勝ったらなんかくれる?」

 

「あー、、じゃあアルテミアいっぱい捕まえてきてあげる!」

 

 

起きたばかりで腹ペコの私に、少しだけやる気を起こさせる条件。

 

私はパプアンの斜め上に浮かび、飛ぶのかすら分からない泡を待った。

 

 

パプアンは浮かび上がる泡を打つ。

泡は同じように細かく砕けるだけ。

 

 

「あーー!うまくいかないぃぃーー!」

 

 

地団駄踏んでパプアンは悔しがる。

 

 

 

短気なパプアンのことだ、想像できる。。

 

そのうちヒゲを放り投げて、飽きてしまうに違いない。

そんなパプアンより先に、飛んでこない泡を待つ私はすっかり飽きていた。

 

 

 

それでもパプアンはいつまでもやめなかった。

 

 

何度も構えを変え、ヒゲを握り直し、無我夢中で泡を打つ。

その顔は真剣で、楽しんでいるようには到底見えない。

 

 

なんでパプアンはこんな事に夢中になるの?

 

「もうやめようよ」なんて、軽々しく言えない姿。

 飛ぶはずなんてないのに。。。

 

 

 

その時だった。

 

 

パプアンの打った泡が、壊れず飛んだ。

 

砕けることなく泡は軌道を変え、力強く私の斜め上の空を走っていく。

 

 

捕まえたら勝ちのルールも忘れ、私はポカンとそれを見送った。

 

同じくらいポカンとしてたパプアンが、飛び跳ねて声を上げる。

 

 

 

「やったーーー!ホームラン!!!」

 

「?。。ホームラン?」

 

 

 

パプアンはその言葉を叫ぶと、そんな自分に驚いて我に返る

 

握っていた愛用のヒゲはパプアンの力無い手を離れ、ゆっくり水に落ちていく。

 

 

 

「どうしたの?パプアン。」

 

 

 

蒼ざめた悲しい顔をしていた。

パプアンは黙って泣いていた。

 

 

パプアンの愛用のヒゲが、左右に揺れながら闇の底に落ちていく。

 

 

だめ!

 

あれはパプアンの大切なもの。

 

 

 

私は慌てて追いかけた。

 

幸いヒゲは岩にひっかかり、それを拾うと俯いたままのパプアンに手渡した。

 

 

「パプアン、。。どうしたの?・・ホームランってなぁに・・?」

 

「知らない。。。わかんない・・わかんないよ。。」

 

 

 

 

ホームラン

 

 

 

 

パプアンにとって、それは怖い言葉なのかな?

 

サオラ姉さんの「ゆび」と同じように。

私の「おとうさん」のように。

 

私たちには、思い出せない昔があるかのように。 

 

 

 

 

 

           とくん 

 

 

 

 

パプアンの悲しみを拾うように、私の真ん中の鼓動が答えた。

 

 

 

「・・パプアン、。。帰ろ。。。」

 

 

 

パプアンは小さく頷いた。

打ちそびれた泡が、次々と私たちを追い越して空に浮かんだ。

 

 

 

 

 

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まんまるのヴィーダの石。

 それは、闇を照らす淡い光。

 

 

私達のひっそり暮らす岩影で、ぼんやりとした銀色の灯を常に燈している。

 

 

 

どこかから転がってきたのか?

それともずっとここにあったのか?

なぜ「ヴィーダ」と呼ぶのか?

 

 

サオラ姉さんですら、知らないと言う。

 

 

 

どんな傷もヴィーダは治し、癒してくれる。

 

眠ってしまいそうな優しい光。

私はその前に腰掛けて、体中を這う傷を癒していた。

 

 

「ヒャッ!!!?」

 

 

私の背中を誰かがつっついた。

パプアンだ。

 

 

 

「凄い噴火だったね!二人とも大丈夫だった?」

 

 

パプアンは私をつついた棒を腰に引っ掛けて、辺りを見渡す。

 

 

「大丈夫?」って言われると・・・。

大丈夫じゃないけど。。

 

でもその状況を話すのは情けなく、サオラ姉さんを責める気がして私は黙っていた。

 

 

 

「おかえり。あなたこそ大丈夫だったの?」

 

 

外の様子を確かめて帰ってきたサオラ姉さんが、ケロッとしたパプアンを呆れたように見つめる。

 

 

 

「あのさ、浅瀬の魚が一斉に逃げたから、なんだろなーー?と思ったらっ!。。ドッカーーーン!!!いやぁ、さすがに焦ったわ!」

 

 

 

パプアンは持っていた棒を振り回し、大袈裟な身振り手振り。

あんなおっきな噴火だったのに、関係なく楽しそうに話す。

 

 

 

「あれ?コルパタ怪我してるの?」

 

 

サオラ姉さんが申し訳なさそうに視線を落とした。

 

 

「うん、ごめんなさい。私のせいなの。。」

 

「サオラ姉さんは悪くない!私がのろまだったから。。。」

 

「どうせモタモタごはん食べてて逃げ遅れたんでしょ? どれどれどれえ?」

 

 

パプアンがヴィーダに照らされた私の胸を覗く。

 

 

「やだ、はずかしい!」

 

 

治りかけているとはいえ、不気味にひび割れた跡に驚き後ずさる。

 

 

 

「えっ!。。。なにこれ?・・。まさかサオラの・・・。」

 

「いいの!大丈夫なの!サオラ姉さんは逃げ遅れた私を助けてくれたの! それよりパプアン、その棒なによ?」

 

 

話を変えるにはもってこいだった。

 

パプアンは待ってましたばかりにニヤリと笑い、誇らしげに話しはじめる。

 

 

 

「あのね、浅瀬に行く途中にこーーーんなに大きなエビがいたの!こーーーんな真っ赤なハサミ振り上げてドドドドって私に襲い掛かって来たわ!! でもね!私そいつのヒゲへし折ってやったの!これはそのヒゲ!!すごいでしょ!!」

 

「へえ~~。怖くなかった?」

 

「怖くなんてないわよ!それでね。・・。。。」

 

 

パプアンは勝利の証とばかりに、棒を振り回し夢中で話し続ける。

 

少し離れて小さな笑みを浮かべ見つめていたサオラ姉さん。

パプアンはその視線に気づくと、急に話を止めた。

 

 

 

「な。。なによサオラ。。。私が嘘ついてるとでも?」

 

「いいえ、なんでもないわ。それが落ちてたサンゴの枝なんて誰も言ってないわよ。」

 

「!!!?・・・。サオラのばかあ!!」

 

 

パプアンは顔を真っ赤にし頬を膨らませ、ヒュンヒュンヒュンとロケットのようにどっかに飛んでいった。

 

 

「あれ?パプアーーン!!・・・?。どうしちゃったのかしら?」

 

「さぁ、どうしたのかしらね。」

 

 

サオラ姉さんは愉快そうにクスクスと笑ってた。

 

 

 

 

 

すごいなあ!勇敢なパプアン。

 あんな立派なヒゲを持ったエビと戦うなんて、私には到底出来ないよ。

 

 

私はちびだしおバカだし、何にもできない。

 

サオラ姉さんのように綺麗で物知りでもないし、パプアンのような強い勇気も行動力もない。

 

 

 

 

「コルパタ可愛いよ。その帽子の模様なんて「おはな」みたいで。」

 

まだ小さい頃、落ち込む私をパプアンが慰めてくれた。

 

 

「おはな?・・おはなってなぁに?」

 

「?・・そ、それはあれよ、、。。えと・・・。なんだっけ?」

 

 

結局「おはな」は誰も知らない謎の物体となり、いつまでも首を傾げたパプアンを前に私は泣いたっけ。

 

 

 

 変わりたいなぁ。。。

 

 

 

時々。

 そして、今もぼんやり考える。

 

 

 

ヴィーダの光のおかげで、傷も痛みもだいぶ癒えた。

再生され火照った自分の体を、そっと撫でてみる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パプアンが冒険に行かない日、私は誘われて近くのクレータを散歩していた。

 

 

かなりお気に入りなのか、パプアンはあれ以来戦利品のヒゲを手放さない。

ヒュンヒュンと水を切り聞こえない音を鳴らし、今日もご機嫌に振り回している。

 

 

 

「傷は治った、コルパタ?」

 

「うん、すっかりいいよ。不思議ねヴィーダって。」

 

「でも絶対ヴィーダに触っちゃダメよ!昔私見たんだ!」

 

「なにを?」

 

「むかーし、おっきいイカが家を襲ってさ、ヴィーダを飲み込もうとしたのよ。」

 

「それで?」

 

「いつもは銀色のヴィーダが赤くバーーーンって光って、ヴィーダの何倍もあるそのイカを逆に飲み込んじゃったんだのよ!」

 

 

 

穏やかで優しいヴィーダの光。

その奥に潜む、言い知れない恐さ。

 

 

触ろうなんて到底考えられない。

臆病な私はいつも感じていた。

 

その光の向こうに、戻れなくなる別の世界があるような果てしない深さを。

 

 

 

「あとね、ヴィーダの前で眠っちゃダメよ。

 

「どうして?」

 

「こわーーーい夢を見るんだって!サオラが言ってた。」

 

 

 

「見るんだって」 っていうことは、パプアンも眠ったこともそんな夢を見たことがもないんだろう。

 

 

恐い夢。。。

 

一体どんな夢なんだろ?

 

 

 

「でもよかったよ。サオラの毒を喰らってあんくらいで済んだんだから。ふつうなら死んじゃうよ!」

 

 

 

 

 サオラ姉さんの毒。

その強さは知っている。

 

一度だけ、サオラ姉さんが本気で戦った姿を見たことがある。

 

 

口の裂けた細長い深海魚に、私が追いかけられた時。

駆けつけたサオラ姉さんは、その髪を相手に巻きつけた。

 

腕は針となりほんの一撃。

 

抵抗をする魚の動きは一瞬で止まり、勝負はあっという間。

毒がまわり、のたうって沈んでいく長い体と色を失くした目。

 

深い海の底に息絶えて消えていったのを覚えている。

 

 

 

 

私もパプアンも毒を持っている。 

サオラ姉さんの毒に比べたら微々たるものだけど、それでも自分を守るための武器。 

 

 その毒ゆえ、お互いに触れる事の出来ない私たち。

 

 

 

 

私はまだ薄く残っているサオラ姉さんの跡をなぞった。

 

あの時生まれた気持ち。

 

 

「すき」

 

 

近いけど、・・ううん、たぶんそれ以上の気持ち。

 

 

 

たとえ痛みを伴っても、触れたゆえ感じた愛おしい気持ち。

 

まるで私の中に古くから住んでいたかの感情。

ずっと求めていたものなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 だから、私は確かめたかったんだ。

 

 

 

 

「。。ねえパプアン。。手ぇ。。つながない?」

 

 

 

 

「えっ?」

 

「だ、大丈夫!私サオラ姉さんの毒でも治ったし、それに。。」

 

 

 

もちろんその後に続く言葉も見つからず、そっとパプアンを見た。

 

 

パプアンは恥ずかしそうに、少し困った顔をしていた。

うつむいてた顔を上げ、覚悟をしたように大きく頷く。

 

 

「い。いいよ。。。」 

 

 

少しどもった、パプアンらしからぬ小さな声。

「来い!」とばかりに私に向き合い、そっと手を差し出す。

 

 

「・・ほんとにいいの?」

 

 

確かめる私の返事より先に、不意にパプアンが私の手を握った。

 

 

ビリッと刺すような痛み。

 

はじめて触れるパプアンの手の感触に、私は体を強張らせた。

 

 

「・・痛い?」

 

 

パプアンが心配そうに聞く。

 

 

「・・うん、ちょっと。。でも平気。」

 

 

パプアンは手を寄せて体を近づけると、もう片方の手で私の頭を撫でた。

 

 

「ち・・ちょっとパプアン!危ない!やっぱり痛いわ。」

 

「なによ。。コルパタが言い出したんじゃない。」

 

 

パプアンの両手がそのまま、私の体を抱きしめる。

触れた背中から全身に痺れが走る。

 

怖くて突き飛ばすつもりの私の両手は、なぜかパプアンの体を抱きしめていた。

 

 

「ん。。」

 

 

パプアンの体がビクッと反応する。

小さく開いた唇から、声が漏れる。

 

いつもの強がりなパプアンとは違う。

 

 かわいい。。

 

 

 

「パプアン。。。痛い?」

 

「い!痛くなんてないもん!コルパタこそ痛いんじゃない?」

 

 

私を抱きしめる腕に力がこもる。

 

 

「あ・・・。。や。。」

 

 

おもわず漏れた小さな声。

 

 

胸が苦しい。

息が荒くなる

 

 

「い、・・痛いよ。。。でも・・・」

 

「。。。でも?」

 

「・・・。きもちいい。。。」

 

 

あの時と同じ。

サオラ姉さんの腕が私を縛り付けた時。

 

 

「きもちいいの。。」

 

 

 

その時。

 

私の体の真ん中から、その感情は肌をつたって零れだした。

 

 

透明なぬるぬるとしたものが、私の体から溢れる。

 それは細かい糸となり、パプアンの体をゆっくりと包みはじめた。

 

 

 

「ち、ちょっと、コルパタ。。なによこれ?」 

 

「・・わかんない。。でも、パプアンも。。」

 

 

パプアンの体からも、糸となったぬるぬるが私を包みこむ。

互いの腕に足に絡み付き、体中を確かめ探るように蔦っていく。

 

 

 

「ち。。ちょっとパプアン。。変なとこ触らないで。」

 

 

 

 

潤んだ目で見つめ合った。

それはお互いの合図。

 

 

言葉にならない声が、だらしなく開いた口から泡となって漏れる。

 

 

あぁ

 

どうかしちゃったんだ、私。。。

どうしようもなく胸が高鳴る。

 

 

無数の糸はやがて毬となり、私たちを隠すように囲う。 

誰にも邪魔されない部屋の中で、私たちは夢中で互いに求めあった

 

 

 

 

 トクン

 

 

 

 

体が鳴って、私に注がれたもの。

 

それは、「たね  」。

 

その時は夢中で気づきもしなかったけれど。

 

 

 

ひとしきり抱き合って、互いの毒と針で傷だらけの私たち。

「痛い痛い」 と言いながら、無様な姿を笑いあった。

 

 

 

「 帰ったらヴィーダに治してもらお。」

 

「うん、でもサオラには内緒だよ。」

 

 

 

パプアンがそっと耳元で囁いた。

 

 

 

 

 

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         だれかの願い   

 

 

                                                いまのせかい

 

 

               そうぞうして

 

 

      

 

たとえれが

 

       

 

ぜつぼうから  の

 

 

 

 

 

 

 

        であって  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             コ  ルパタ

 

 

 

 

                          コルパタ

      

 

 

                    ねぇ        コルパタ   

            

 

 

 

 

                                               聞こえる?

 

 

           いるんでしょ?    そこに

  

 

 

            。       。

 

 

 

 

 

おてんばさんになったよ、あの子。

 

 

今日はエビのヒゲ折りに行くって聞かなくて、約束させられちゃった。。

私のコレ、欲しいんだってさ。

 

 

 

怖いなぁ。。

 

だってほんとはコレ、。。。

 

ま、ほんとの事なんてどうでもいいか!

 

 

 

頭いいのはサオラに似たんだろうけど、その分ずるがしこくて困っちゃう。

 

一度言い出したら聞きやしない!

 

 

あぁそっか。。。それは私に似たのかな?   w

 

 

 

 

 

 

      ‥・・・   ?

  。

 

                           。

  聞こえてる?

 

 

                   。                                       。 

 

                                            あの日ありがとね。

 

 

 

                                            。      。

                          。                                     。

                                                        。

      。        。                 。            。

 

  。          コレ、       バットの事           。

                                                       。           。

          。           。                                                  。

              。                     。     。

                            。

                                                       。

 

                  。                                。               。

      。 

              。                。                                   。         。

           。                             。            。

         。          。                                              。 。

                  。          。            。                              。

          。           。

 

             。                。                      。

                  。     。                  。          。       。  。

        。                         。            。                       。

                         。             。  。              。       

         。      。         。 。                    。           。   

              。                 。     。

       。          。     。                  。           。           。

                                                        お礼言えてなかったし

              。  。                 。                    。           。 。

     「そんなもの」なんて言って。。ごめん

  。 。                。       。                。   。           。           。

            。            。 。             。          。       。             。

 。            。     。          。                  。      。       。

    。               。         。             。               。         。    。

 。          。          。             。                   。     。

           。 。            。            。          。   。            。         

代わりなんてないし いないんだ            。                。   。

       。                

今だからわかるよ       。

 

         。         。           。      。           。            。      。

    。            。           。                       。          。          。

     私は                    。  。    。         。

       わたし

 。     。            。        。 。               。           。 。    

    。   コルパタは。。                                コルパタだよ

 。         。 。      。          。     。    。           。。

  。         。 。           。         。         。     。         。    。

        。                       。                          。 。

   。 。      。        。  。             。          。           。      。         。。

 。     。  。           。       。          。  。      。      。         。 。  。

     。 。        。    。          。   。          。 。     。       。 。       。 。          

    。。     。 。     。 。    。    。           。ホームラン

  。 。         。 。       。 。           。 。      。   。          。 。 。   。       。。

。         。           …     。   。   。。              。   ;。  。        。きっと

      。        。       。   。。。              。            。              。 。    。   

 。 。      。 。     。 。    。 。     

あの子なら打てるね

 。        。 。        。

     。           。         。      。      。         。       。        。         。 。

 

その輝き       。     。       。          。 。         。      。   。 。     。 

ヴィーダの石の中     。           。     。   。          。 。     。      。  。      。。

                     。        。            。         。     。        。        。

いるんでしょ?

コルパタ        。  。         。     。       。            。 。        。

                             。 。          。             。  。       。 。    。    。。

会いたいよ、

もう一度。     。       。      。 。 。        。 。        。  。 。

                          。      。     。        。 。       。     。     。          。  

変わらなくて

 

いい                 。       。 。。。 。        。   。        。     。 。       。

             。    。              。     。         。          。 。   。          。 。

あなたは   あなた               。           。      。 。         。             。   。

                 。         。。                  。 。         。                。   。

花飾りの帽子

かわいいよ           。           。 。             。 。          。   。     。     。

                  。          。       。      。          。             。 。     。

   それでね                  。         。         。              。        。 

               。        。  。      。         。         。 。            。       。

やっぱまだ、 

 かなしいよ                 。           。 。         。           。    。         。

             。        。 。            。   。        。    。   。

      。   。     。 。          。  。          。 。       。  。

             。 。        。         。 。          。     。     。

       。     。     。         。       。 。          。 。    。

          。         。 。     。 。 。       。 パプアーーン!       。  。       。

    。  。           。      。  。       。 。       。      。

  。     。   。       。          。 。         。    。  。        。。

         。    。                                        どこお?

 

                今日冒険連れてってくれるんでしょ?  

      。       。      。 。      。     。    。      。     。   。 

   。       。     。   。。

       。   。     。       。 。      。

          。     。     。    。     。          。    。

 。          。         。      。  。    。         。 。     。   。

   。        。 。  。    。               。    。 。         。

呼んでるww                 。 。       。 。  。         。

  。  。   。      。         。   。        。     。 。      。 。

                   。     。      。      。         。     。

  。      。   。           。       。          。 。      。 。         じゃ行くね

                 。      。      。 。         。

。      。         。 。    。          。       。     。     。 。 

         。       。      。        。        。  。        。

   大丈夫 

       危ない目に

絶対あわせな い       。       。        。       。        。        。    

   。      。      。       。 。      。        。       。      。                                         

  。 。     。    。        。 。     。   。  。

       。 。 。          。 。          。        。

                                              又来るね     。 。 .    。

 。    。       。       。            。     。

 

コルパタ

 

 

 

 

           あなたはいのち

 

                    かけがえのない

 

          たいせつな命

 

         

                  愛してる

 

 

 

 

 

 

              

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コルパタ、そろそろ行きましょ。」

 

 

その声に顔をあげた。

 

 

深い海の底から見上げる、薄暗く紺色の空。

 

 

わずかに届く光は、浮かび上がる泡の中。

まんまるの光が、空に泳いでる。

 

サオラ姉さんの自慢の長い髪が、ぼんやり蒼い水にそよいでいた。

 

 

 

水温が高いせいか、ここはアルテミアが集まるいいところ。

 

のろまな私にとって最高の餌場。

セッセと追いかけなくても帽子を広げるだけで、お腹いっぱいアルテミアを集めることができるんだもん。

 

 

 

「え~~~、もうちょっとぉ、、」

 

 

「ダメよ、もうすぐ噴火が始まるわ。

 

 

 

ん~~~~~~

 

 

まだお腹いっぱいじゃないんだけどなぁ。。

 でも・・・サオラ姉さんが言うから仕方ない。

 

でももう少しだけ!

 

 

 

物知りなサオラ姉さん。

この危険な世界で生きるための全てを教えてくれる。

 

たぶんサオラ姉さんがいなかったら、臆病でバカな私なんかとっくに海の藻屑。

 

 

「ねぇコルパタ、ところでパプアンは?」

 

「しらなーーい。又浅瀬まで冒険へ出かけてるんじゃない?」

 

 

サオラ姉さんは呆れた顔をして深いため息をついた。

 

 

 

 

 

噴火の訪れを知らせるように、ドンドンと地面が揺れている。

地面の底から、誰かが叩いて呼んでるみたい。

 

 

私はこの音がこわくて大嫌い。

 

 

 

「おとうさん」

 

 

 

この音を聞くたび、思い出すこの言葉。

 

 

「おとうさん」ってなんだろ?

 

サオラ姉さんと違って私バカだから、その意味はわかんないんだけどね。

 

 

 

 

 

「コルパタ、下!!急いで!!

 

 

サオラ姉さんが声を荒げた

 

 

見下ろすと、深い闇を次々と裂いて走る稲光。

 

それは噴火の前触れ。

金色の光の帯が、物凄い速度で岩を割って右へ左へ走る。

 

 

 

なにこれ!?

 

今まで見たことないくらいおっきい!

こんなのに巻き込まれたら、ひとたまりもないわ。

 

 

浮かび上がろうとするけれど、怖くて足が動かない。

光の帯が口を開ける。

 

 

 

始まる!!

 

 

 

 

金色の稲妻と同時に、音もなく吹きあがる炎。

 

逆流する滝の衝撃が迫る。

無数の浮かび上がる泡が、渦を巻いて私を襲う。

 

 

だめだ、もう!

 

間に合わない!!

 

 

煮えたぎる水に焼かれる自分を想像した時だった。

 

 

 

 

私の体は引っ張られた。

 

それはサオラ姉さんの長い髪と腕。

 

しっかりと私を絡めとり、間一髪私の体を岩陰に引き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

噴火はおさまった。

 

熱い水の滝が何事もなかったかのように消え、いつもの暗い闇が横たわっている。

 

 

帰り道、サオラ姉さんは何度も謝っていた。

 

 

「ごめんね、コルパタ。。痛かったよね、ごめんね。」

 

 

私達はヴィーダの石のある家に向かった。

 

 

 

 

サオラ姉さんが謝ることないのに。

 

食いしん坊で、のろまなわたしがいけないのに。

 

サオラ姉さんがいなかったら私、今頃とっくに死んでるわ。。

 

 

 

でも言えなかった。

 

怖さに震え、ただ泣きじゃくって。

 

 

 

私の足に 

 

 

腕に 

 

胸に 

 

帽子に

 

 

 

サオラ姉さんの毒の跡がくっきりと残ってる。

ひび割れ夥しく走り回っている無数の傷跡。

 

 

始めて触れたサオラ姉さんの髪。

 

危険な毒を蓄えた、しなやかな腕。

 

 

泣いてるのは痛いからだけじゃないの。

 

 

触れてくれた。

抱きしめてくれた。 

生まれてはじめて。

 

 

縛られた私の体の、ちょうど真ん中で疼いていた。

溢れだしそうな、見知らぬ気持ち。

 

紅く爛れたその痣に、自分で触れる。

貫く痛みさえ、宝物のように感じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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新作書きました。
4月20日より毎週土曜0時公開、全7話となります。

深海に住む3人の女の子のお話。
3人を簡単に紹介いたします。



コルパタ

末っ子の怖がり。
この物語の主人公。




パプアン

活発な次女。
冒険大好き。



サオラ

しっかり者の長女。
物知り、戦闘力高いw




今回のイラストは「青山いつき」さん。
HPデザインや写真エディターは初仕事20歳のクリエイター「りこぴー」。

作品共々、この3人が多くの人に愛される事を願います。
よろしくお付き合いくださいませm(__)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんとのこと いうはずないじゃない

 

たとえば  

 

一時間後 この町は沈みます だなんて

 

 

ほんとのこと いうはずないじゃない

 

混乱なく 100にんに正しく伝わる言葉

 

そんなもの ないんだから

 

 

 

知らなくていい 知らなくていい

 

汚れた土に 野菜が育つんだから

 

 

知らなくていい 知らなくていい

 

黒かった海に 魚が戻ってきたんだから

 

 

10年後 20年後 

 

目に見えない まき散らされた

 

未来への言い訳と たねあかし

 

その花の色の違いに 誰も気づきはしないから

 

 

 

 

ほんとのこと いうはずないじゃない

 

君の病気の 原因なんて

 

みんなの笑顔を くもらせる 理由なんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしだけ?

 

ねぇ

 

ほんとは知ってるんでしょ?