お題「1年短国はまたもこの結果/ECBの買入は淡々と/先週のイエレン講演から少々」
蟹さん・・・・・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NRH2WL6K50Y301.html
カーニー英中銀総裁:利上げ開始の時期は近づきつつある
2015/07/14 19:34 JST
ところで今朝はこの話だと思ったらいきなり7時の国営放送のマクラが「ライオンキングの公演1万回!」となったので一瞬腰が砕けましたが、さすがにトップニュースはこれでしたので砕けた腰も治りました(^^)。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150715/k10010151081000.html
安保法案 15日委員会採決で緊迫も
7月15日 4時28分
○1年短国は別世界ですなあ
昨日の1年短国
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150714.htm
(3)募入最低価格 100円01銭1厘(募入最高利回り)(-0.0109%)
(4)募入最低価格における案分比率 53.0555%
(5)募入平均価格 100円01銭9厘(募入平均利回り)(-0.0189%)
はいはい別世界別世界という所で、マイナス1.89bpですかそうですかという結果なのですが、毎度おなじみのいわゆる不明玉が1兆円弱と微妙に中途半端なのですけれども、そうは言いましてもこんな利回りで1年FIXできるニーズがあるのかなとは????ではありまして、(モノとして必要なら3Mで十分じゃろ)何だかなあという感じではあるのですが、1年短国に関しては海外などのマイナスファンディングの世界の投資家さん以外の普通の投資家にとっては日銀とプライマリーディーラーに完全にシャットアウトされているような状態になっておりまして、それを債券流通市場と呼んで良いのかという気が昔からするのですが、何せ日銀としてはMB直線一気理論による馬鹿買入という設定があるので致し方なしという事ですな。
でまあMB直線一気理論が直線一気にワークしているのなら良いのですが、このMB馬鹿拡大によって国債流通市場がこの有様になっているという惨状にするだけの物価上昇をしているのかと小一時間問い詰めたい状態になっているのは今に始まった訳ではない次第でして、「長期の実質金利を下げて金融緩和効果」というのであればそもそも論としてもっと市場を殺さないで金利を下げる方法が無いのかもうちょっと考えろやヴォケとしか相変わらず申し上げようがないという所ではありますな。
まあ先週は6Mの短国入札があった週なのに短国買入が前週と同じという変化球が飛んで来まして、売参の都合から10日の短国買入では6Mが入らないで浮いていると思われる中で1年を強い所で入札するとなりますと、さすがに次の3Mは前回みたいな入札をすると短国買入で捌ききれないような気がしますので、1年短国は別世界として3Mが更に突っ込むようなイメージも無いんですけど良くわからん。
○ECBの買入残高の定例チェック
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150714.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 10 July 2015
14 July 2015
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150708.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 3 July 2015
8 July 2015
画面の体裁が変わって、もしかしてスマホ(持ってない)とかタブレット(持ってない)とかだと見やすいのかもしれんが、普通にPCでみると無駄に馬鹿でかくて一覧性が落ちているので見難くなったECBサイトですが・・・・・・・
先週のをネタにしていなかった気がしますのでついでに2週間分。
7/10残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 98.2 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 9.3 billion +EUR 0.4 billion -
PSPP EUR 216.3 billion +EUR 11.7 billion
7/3残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 96.1 billion +EUR 1.8 billion -EUR 0.3 billion
ABSPP EUR 8.9 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 204.7 billion +EUR 10.2 billion -EUR 0.6 billion
7/3の残高に関しては謎の「with 26 June 2015 - quarter-end adjustments」というのがあって、四半期なので何か決算的な補正が入っているみたいなのですが、恥ずかしながらこの会計処理まで詳しく知らない(調べればわかると思うのだがまだ調べていませんすいません)のでそこはスルー致しますと、基本的には淡々と買入が進んでいる感じがします。
なおその前1か月分のペースは以下の通り(過去分再掲)ですのでペースが特に変わっていなあというのが分かるかと思いますが、「夏になると市場の流動性が落ちるからその前に買入を加速させる」といった発言は一体全体なんだったのかと小一時間と申しますか、今朝のモーサテでのコメントの人なんぞは「夏になるとユーロ圏の国債発行ペースが落ちるので金利が低下しやすくユーロ安(キリッ)」とか解説していて、そういうの一応配慮するって話をECB高官発言があったのは無かったかのような認識になっていますな。
などと悪態をついていますが、まあ上記のように買入のペースがそもそも論として前倒しになっていない以上、見通しとして考えるとなると「買入が淡々と続くのであれば発行が減る季節には国債の需給がタイトになります罠」という発想になる方が普通だと思いますので、別に悪態でもなんでもなくて、もともとややこしい話を始めたECBの方が悪いという事になると思いますがね(--;
6/26残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 94.6 billion +EUR 2.5 billion
ABSPP EUR 8.6 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 193.9 billion +EUR 11.6 billion
6/19残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 92.1 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 8.3 billion +EUR 0.1 billion
PSPP EUR 182.3 billion +EUR 11.9 billion
6/12残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 89.9 billion +EUR 2.6 billion
ABSPP EUR 8.2 billion +EUR 0.7 billion
PSPP EUR 170.2 billion +EUR 10.6 billion
○イエレン議長の議会証言前にこの前のイエレン講演を後半だけ(手抜き)鑑賞である
今更遅いですかそうですか(汗)。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150710a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150710a.pdf
Chair Janet L. Yellen
At the City Club of Cleveland, Cleveland, Ohio
July 10, 2015
Recent Developments and the Outlook for the Economy
小見出しを並べますと
The Recovery from the Great Recession
Current Conditions in the Labor Market
Recent Inflation Developments
The Outlook for the Economy
Implications for Monetary Policy
Long-Run Economic Growth
となりますが、最初のパートはまあどうでもよくて、その次3つのパートに関してですが、こういうのって労働市場や物価に関して新しい見解が出てくると「おー」となるのですが、議会証言直前にいきなりそういうのを騙し討ちで出してくるというのはよーやらんと思うので、手抜きで読みたければ最後の2パートを読むあるヨロシということで・・・・・・・・・・
・説明は手堅いですなあ
『Implications for Monetary Policy』から
『My own outlook for the economy and inflation is broadly consistent with the central tendency of the projections submitted by FOMC participants at the time of our June meeting.』
ということで、6月FOMCで示された中心的な見解とほぼ同じ経済物価情勢に対する見方をしていますと発言していて、議長になる前のイエレンさんは時々独自見解を飛ばしてくれてハトイメージが強い人でしたが、議長になってからは「FOMCにおける中心的な見解の伝道師」という感じになっている(腹の中でどう思っているのかは兎も角としてこのような形で出てくるものに関しては)のは、政策委員会の議長としては当然ちゃあ当然なのですが、もうちょっとファンキーに出てくるのかという期待(?)も世の中的にはありましたよね。あたしゃイエレンさんって議長としては実に手堅い人だと思うしこれで良いと思いますけど。
『Based on my outlook, I expect that it will be appropriate at some point later this year to take the first step to raise the federal funds rate and thus begin normalizing monetary policy.』
でまあこれがヘッドラインになっていた奴ですが、そらまあSEPの中心的な見解と同じだったら年内利上げの方が圧倒的な意見なのだからそうなるわなということで、ヘッドライン的には話題になっても市場的には「まあそういう罠」という反応になるんでしょうな。
『But I want to emphasize that the course of the economy and inflation remains highly uncertain, and unanticipated developments could delay or accelerate this first step.』
先行きはとても不透明なので、不測の事態が起きたら・・・・・と言う話の部分でもまあ手堅いなあと思うのは、ここの後半の部分がたとえば「unanticipated developments could ”change” this first step」みたいな表現にしちゃうと「不透明なので利上げ先送りを示唆ヒャッハー」と反応されてしまうのを警戒してわざわざ「could delay or accelerate」とか表現する辺りの細かさというか手堅さというかで、相当注意深く書いているなあというのがアタクシの印象ですがどうでしょうかね。
『We will be watching carefully to see if there is continued improvement in labor market conditions, and we will need to be reasonably confident that inflation will move back to 2 percent in the next few years.』
で、労働市場が継続して改善することと、物価が「in the next few years」に2%戻るのが「reasonably confident」であれば正常化ステップという事ですので、この辺も同様ですし、別に物価が2%にならなくても普通に正常化ステップに入るという話。
『Let me also stress that this initial increase in the federal funds rate, whenever it occurs, will by itself have only a very small effect on the overall level of monetary accommodation provided by the Federal Reserve. Because there are some factors, which I mentioned earlier, that continue to restrain the economic expansion, I currently anticipate that the appropriate pace of normalization will be gradual, and that monetary policy will need to be highly supportive of economic activity for quite some time.』
でまあ最初の利上げ時期よりもその後の利上げペースという話も強調するのだが、そうはいっても実際に利上げするとなるとベース金利に跳ねてくる話だから直前になって来ると時期がどうのこうので市場が反応するのは仕方ないと思うの。
『The projections of most of my FOMC colleagues indicate that they have similar expectations for the likely path of the federal funds rate. But, again, both the course of the economy and inflation are uncertain. If progress toward our employment and inflation goals is more rapid than expected, it may be appropriate to remove monetary policy accommodation more quickly. However, if progress toward our goals is slower than anticipated, then the Committee may move more slowly in normalizing policy.』
この辺も声明文通りの話をしていて実に手堅いのですが、まあ超自信満々だったらもうちょっと強いトーンの話が出てもおかしくないとは思うので、そこまでではないんだろうなあとは思いますが、議長になってからのイエレンさんってあまりこの辺についてバイアス掛けてこなくなったのでこの声明文棒読み体制をどう解釈するのかは受けてによって幅があるかも。
・最後の部分では結局の所「生産性の向上が必要」という話なのでそれはつまり・・・・・・・・・・
最後が『Long-Run Economic Growth』でありまして・・・・・・・・・・・・
『Before I conclude, let me very briefly place my discussion of the economic outlook into a longer-term context.』
ほうほうそれでそれで?
『The Federal Reserve contributes to the nation's economic performance in part by using monetary policy to help achieve our mandated goals of maximum employment and price stability.』
そんな事は言われんでもわかっとるんじゃ。
『But success in promoting these objectives does not, by itself, ensure a strong pace of long-run economic growth or substantial improvements in future living standards. The most important factor determining continued advances in living standards is productivity growth, defined as the rate of increase in how much a worker can produce in an hour of work. Over time, sustained increases in productivity are necessary to support rising household incomes.』
長期的かつ持続的な成長に関して一番重要なファクターは労働生産性の向上であるという話が来ました。
『Here the recent data have been disappointing.』
アイヤー。
『The growth rate of output per hour worked in the business sector has averaged about 1-1/4 percent per year since the recession began in late 2007 and has been essentially flat over the past year. In contrast, annual productivity gains averaged 2-3/4 percent over the decade preceding the Great Recession.』
労働生産性の伸びが弱くなっていると。
『I mentioned earlier the sluggish pace of wage gains in recent years, and while I do think that this is evidence of some persisting labor market slack, it also may reflect, at least in part, fairly weak productivity growth.』
で、賃金の上昇が弱いのは労働市場のスラックがまだ経済に残っているからというのが主因とみられるが、要因の中に労働生産性の向上が弱いという面も反映している可能性があるという指摘がキタコレなのです。
『There are many unanswered questions about what has slowed productivity growth in recent years and about the prospects for productivity growth in the longer run.』
でまあこの2007年後半以降の生産性の伸びの弱さに関してや、今後のロンガーランでみた場合の生産性の伸びがどうなるかという見通しに関してについてはまだ解明されていない点が多いという話をしていますな。
『But we do know that productivity ultimately depends on many factors, including our workforce's knowledge and skills along with the quantity and quality of the capital equipment, technology, and infrastructure that they have to work with. As a general principle, the American people would be well served by the active pursuit of effective policies to support longer-run growth in productivity. Policies to strengthen education and training, to encourage entrepreneurship and innovation, and to promote capital investment, both public and private, could all potentially be of great benefit in improving future living standards in our nation.』
ということで、纏めの所では生産性向上の為に労働者のスキルを上げたり、起業やイノベーションを活発化させたり資本投資を活発化させるとか色々な施策をすべき、という話で纏めているのですが、労働者のスキル向上がという話の部分では(このパートでは触れていませんが)従来からイエレンさん(だけではなくFEDの高官のほとんど)が言ってるのが「長期失業者の増加は(該当者のスキル喪失によって)労働者の平均スキルを下げる」という話をしている訳でして、その前に生産性向上が弱いと賃金が上がりにくい可能性についても指摘しているとなりますと、このあたりの労働市場の指標についても単なる労働市場のスラックだけではなくて、中長期的な経済の生産性という面でも留意していますよ、というメッセージになっていますなと思いましたがどうでしょうかね。
つまりですな、労働市場のデータが質的(というのはここで指摘されている労働生産性向上に繋がるようなという意味での)改善を示すのが遅いとなると、経済の生産性向上が弱いので、必然的に賃金や物価への上昇圧力が弱くなるので、初回利上げはともかくとしてロンガーランの均衡金利やら利上げペースやらにも押し下げ圧力が掛かるし、裏を返せばそのあたりの労働関連の指標の質的な改善が進むともっとFEDは自信満々モードになって来てうっかりすると利上げペースとかも速くなるという事を説明しているのではないかなどと思ったりする訳で、雇用関連の指標ではヘッドラインの数字よりもそちらの質的指標を見ていきますよという話をしている(ただしマンデートの関係でロンガーランの失業率というのを出している以上失業率のヘッドラインを軽視はできないと思うけど)ように見えましたぞな、というのが後半部分のポイントだったのかなあ等と思うのでした。
#前半はどうしたというツッコミをしないように(^^)