前回、米国ベースでは、購買力で見た場合20年前比で日本の資産の価値が46%に落ち込んでいることを記載した。また内訳として日米の物価上昇率の差で67%、為替変動で69%であること、つまり日本の資産価値の下落は決して為替が円安になったことだけが原因ではなく、物価上昇率を購買力と読み替えれば。購買力の低下がその要因の半分以上占めていることを説明した。

 

またグローバルベースでは、同様に日本の資産の価値が33%に落ち込んでおり、物価上昇率の差を購買力と読み替えるとそれだけで48%になっていることを説明した。

 

ここから今後考えられるのは

外国人向けには、日本人向けより2倍から3倍の価格設定でも彼らは購入してくれるということであり、当然そうした層向けの価格設定をしてくるであろう。逆にそのような価格設定で購入できない日本人は切り捨ててもいいという経営判断となろう。

そうした業種として考えられるのは、ホテル・レストランや観光に付随する業種があろう。たとえば築地場外の食事などはその典型であろうか。

 

そのような業種は自分には無関係と思うかもしれないが、それ以外でも日本で生産した製品(食料生鮮品含む)は、海外では日本より円ベースで2倍から3倍の価格を提示してくるわけであるから、例え日本の企業であってもはたして日本人向けに売ってくれるであろうか? 

常識的に考えれば、日本が提示価格を引き上げなければ日本人向けに販売してくれることはなく、海外が欲しがる良質な商品は海外に流出し、日本で売られるのは海外が見向きもしない2流から3流の売れ残りということになろう。

 

また海外から輸入する場合、日本は円ベースで2倍から3倍の価格を提示しないと海外のバイヤーに買い負けることになる。

これは工業・農業製品だけではなく、人の輸入も同様である。

一時期外国人看護師やヘルパーの日本参入に対して、賛否いろいろあったが、この購買力の低下を鑑みると、彼らが日本に来るインセンティブは極めて低下しているといえよう。

これはいわゆる実質低賃金労働者として使っている技能実習生も同じであろう。

現状の日本の購買力の低下を認識せずに、かれらを「働かせてやってやる」という考えであれば、かれらに「選ばれない」とうことになってしまうであろう。

 

最後に日本の富裕層の定義として金融資産1億円以上5億円未満という調査があったが(5億円以上は超富裕層)、これは米国の1ミリオンUSドルを富裕層としたものの日本版と思われる。足元の日本の購買力の低下を考えると先ほどの2倍から3倍をあてはめ、金融資産約2.5億円以上ないとグローバルな基準でみた富裕層とはいえないのではないだろうか?

この定義を発表した野村総研によれば、富裕層は増えていると結論づけているが、それは定義として金融資産1億円以上5億円未満の数が増えているというだけであり、先ほどのグローバルで見た富裕層という視点で定義をくくりなおした場合、金融資産約2.5億円以上ある富裕層+超富裕層は本当に増えているのか検証が必要であろう。