扶養制度パフェークトマスター:税と社会保険の違い(離婚後の自立対策へ向けて)

※はじめに本ブログの情報は、2025年5月末時点のものですので、ご注意ください。

【今回、図表が多数ございますので、PCからの閲覧をお勧めします】

 

 

 

「扶養ってそもそも何?」

「扶養の制度がよくわからない」 

「扶養の制度を利用するにはどうしたらいい?」

「税の扶養と社会保険の扶養って何か違いがあるの?」

というお悩みありませんか?

 

cf、「現在扶養してもらってるけど離婚したらどうなるの?」

については、過去のブログ参照のこと → 「離婚後の保険証」必要な手続きの注意点から保険料の節約方法まで | 離婚マネー相談室:財産分与・年金分割など離婚に伴うお金の問題解決! 

 

それ本ブログで解決できます。

はじめに税と社会保険の扶養の制度それぞれについて説明していきます。

これにより混乱しがちな制度の違いを明確にし、そのうえで両制度を利用する方法をお伝えします。次に離婚に備え、扶養を外れ、経済的な自立を目指す際に、収入を増やした場合の手取り等が如何に増えるか考察していきます。終わりには、効率的に経済的自立へ向けたプランを描けるようになってきます。

それでは、説明していきます。

 

(目次)

1 税の扶養制度(配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除)

2 社会保険の扶養制度

3 双方利益を享受するには

4 自立へ向けての準備(配偶者に頼らない生き方を目指して)

 

 

1 税の扶養制度

 

 

 税の扶養制度は、イメージ的には、税金を計算するにおいて『個人的な必要経費の一つとして認められたもの』です。

よって、適用されると認められる経費が増えますので、結果として税金が安くなる恩恵を受けることになります。

税において扶養の控除は、3種あります。

 配偶者に適用される「配偶者控除」と「配偶者特別控除」さらには、その他要件を満たす親族に適用される「扶養控除」です。

所得税・住民税共にこの3種の控除が認められていますので、これを機に理解しておきましょう。

 では各控除を個別に見ていきます。

 

【1 配偶者控除】 

 

要件は次の通りです。

・民法の規定するところの配偶者(×事実婚、×内縁関係)

・納税者と生計を一にしている(=生計同一関係がある)

・納税者本人の年間所得金額が1,000万円以下

・配偶者の年間所得金額が48万円以下

・青色事業専従者または事業従事者ではない

 

 

(上記解説の上でよく聞かれる事柄)

 

Q生計同一ってどういうこと?

 

A.(所基通2-47)に答えが書かれています。↓

「生計を一にすること」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。

例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

 

なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

 

 

 

生計維持と生計同一は同じ意味ですか?

 

 

A.

生計維持は、健康保険や年金の受給時に登場する概念です。日本年金機構のホームページによると次のとおりです。↓

「生計を維持されている」とは、原則次の要件をいずれも満たす場合をいいます。

・生計を同じくしていること。(同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められます。)

・収入要件を満たしていること。(前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。)

 

 よって、イメージ的には、生計維持には年収要件が具体に課されているので、

(範囲) 『 生計同一 > 生計維持 』となります。

 

 

 

概念のイメージ図を載せます。

図表をご覧ください。

 

 

 

 

Q事業専従者ってそもそも何?

 

A.税では、個人事業主の仕事に専念している親族の給与を経費扱いにできる制度があります。

この一定の要件を満たす方を専従者と呼びます。専従の制度で税的恩恵を受けるのであれば、制度上更に配偶者控除のダブルの恩恵は受けられないようになっています。

 

 

 

(下の控除額表を見るにあたり3つの解説)

 

1そもそも所得とは、、、

 所得=収入―経費

 所得税・住民税は、この所得金額をベースに税額を計算します。

 

2合計所得とは、、、

 税は収入の内容等に応じ、日本では所得を10種に分けています。

参考:所得の種類と課税方法|国税庁

 

その合計額を合計所得とイメージすると良いでしょう(厳密には繰越控除の適用などがあり、差が生じる場合があります。)

 

3給与収入と給与所得の違い、、、

サラリーマンの場合、経費は特定支出控除を除き、認められていません。とは言え、自営業者の営業所得等経費が認められているのにサラリーマンの給与は認めないのは、公平性に欠きます。そのため、国が勝手に経費を計算し、一律に適用してくれています。これを給与所得控除と呼び、給与所得は次の計算式で算定されます。

給与所得=給与収入―給与所得控除

 

 

 

(控除額について補足)

個人的な必要経費として算定可能な控除額について

所得税では、合計所得900万円(年収1120万円)までは一律38万円ですが、合計所得900万円(年収1120万円)を超える場合には段階的に控除金額が減額され、合計所得が1000万円超(年収1220万円超)の場合、控除の適用がなくなります。

 

 

 

 

【2 配偶者特別控除】

 

配偶者控除の適用を受けられない配偶者がいても、下記条件を満たす場合、配偶者の所得に応じて最大38万円の控除が認められています。

要件)

・納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下

・配偶者の年間所得金額が48万円超133万円未満

・配偶者控除の適用条件を満たしている↓

・民法の規定するところの配偶者(×事実婚、×内縁関係)

・納税者と生計を一にしている(=生計同一関係がある)

・青色事業専従者または事業従事者ではない

 

 

 

控除額は、納税者本人の合計所得金額と、配偶者の合計所得によって決まります。

次の控除額表をご覧ください。

 

 

 

※配偶者控除と配偶者特別控除の差は、配偶者の所得が違う点にあります。

配偶者控除であれば48万以下

配偶者特別控除であれば48万超から133万以下

あとは、現実には、会社によっては、配偶者控除であれば、家族への手当てが出たり、配偶者特別控除になるともらえなかったりというケースがあります。

年間48万超となる見込みならば、配偶者の勤務先の給与規定を確認しておきましょう。

 

次は、

【3 扶養控除】

 

要件)

・配偶者を除く親族、または養育・養護を委託された里子や老人であること

・納税者と生計を一にしていること(=生計同一関係がある)

・扶養家族の年間所得金額が48万円以下である

・青色事業専従者または事業従事者ではない

 

 

扶養控除の控除額は次の表のとおりです。

 

 

言葉で表現すると

・16歳以上18歳以下、23歳以上69歳以下の場合、上の要件を満たせば、一般の控除対象扶養親族に該当し、38万円(所)、33万円(住)の控除額が適用されます。

・19歳以上22歳以下の場合、特定扶養親族に該当し、同様に63万円(所)、45万円(住)の控除額が適用されます。

・同様に70歳以上の場合、老人扶養親族に該当し、同居の場合58万円(所)、45万円(住)で同居でない場合は、48万円(所)、38万円(住)の控除額が申告により適用されます。

★いずれも扶養される方の年間所得金額が48万円以下であることが必要です。

 

 

3 社会保険の扶養制度

 

 

 社会保険では、保険料の負担をせずとも、一定の要件を満たす者に限り、保険の給付を受けることができます。この制度を社会保険の扶養制度と一般的に呼ばれます。注意点は、要件を満たさなくなった場合は、扶養から外れなくてはなりません。外れると一般的に別の医療保険に加入し、保険料を負担する必要が生じます。

 

要件は、一定規模の企業(※2024年10月から従業員数51人以上)に勤務し、次の要件を満たすこととなります。

 

・雇用継続見込み2ヶ月以上

・学生でない(休学中、定時制、通信制の方は加入対象)

・週の所定労働時間が20時間以上

・(基本給と手当の合計額である)賃金が月額8.8万円以上

 

 

また、扶養として認められるために次の3要件が課されています。

1.生計同一要件(=生計を一にすること) 

 同居義務有り;三親等内の親族 配偶者の父母 配偶者の子

 同居義務無し:直系尊属 配偶者 子 孫 兄弟姉妹

2.収入要件

  ・被扶養者(扶養される人)の年収130万未満

  ・高齢(60歳以上)又は障害者 → 被扶養者(扶養される人)の年収180万未満 

 かつ 被保険者(加入者)の1/2未満の収入であること

3.後期高齢者医療保険の対象外であること

 

 

※注意事項※

税と保険で収入算定の考え方が違います。

次の図表をご覧ください。

 

 

社会保険では、保険料を多く集めると各個人の負担(保険料)額が抑えられることもあり、広く収入認定を行っています。制度上の差はこのような理由から生じています。

 

 

 

 

 

3 双方利益を享受するには

 

 

端的に言うと税・社会保険の両制度を比較し、厳しい要件を課す条件を満たしておく必要があります。よって、(離婚FPなので配偶者と子に限り、記します。)

 

配偶者であれば

・民法上で認められた配偶者であること

・合計所得金額が48万円以下であること

・生計を一としていること

 

子であれば

・民法上に認められた子であること 

・合計所得金額が48万円以下であること

・生計を一としていること

 

補足 民法上の子について

(嫡出の推定)

民法第772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

 

(婚姻の届出)

民法第739条 婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

 

●ネックはそう、『年間の合計所得金額』になります。

 

 

4 自立へ向けての準備(配偶者に頼らない生き方を目指して)

 

 

 本ブログをご覧の方は、離婚検討中又は、調停・訴訟中の方が多いかと思います。離婚は、経済的自立無くしては、成り立ちません。婚姻中も正規職員でバリバリ働いているのであれば、まだ良いですが、そうでない方は、感情におもむくまま相手方に離婚を切り出してしまうと、離婚後の生活見込みが立っていない以上、その後に非常に苦労してしまいかねません。

先ずは、段階的に離婚向け現金を貯めていく必要があります。

 

一度 ケース例で考えてみましょう。

 

(ケース例:仮想夫婦)

・本人=妻 (時給1000円で月80時間)月8万の範囲でパート勤務。夫に配偶者控除が適用されている。いわゆる扶養の範囲内で働いている。が離婚を考え中。少しづつ手取りを増やしていきたい。

・配偶者=夫 年400万の収入の正社員。妻が扶養の範囲内なので、会社から月1万の扶養手当もらっている。

 

 

この方が離婚へ向け資金を貯めたいので、次の様にパートを増やした場合、いくら手元にもらえるのか検証してみました。

 

時給1000円で月80時間入っているパートを

→月120時間(週30時間)

→月160時間(週40時間)

→月240時間(他のバイト掛持ち)

と増やした場合

 

検証結果は次の図表の通りです。

 

 

【個人で見ても税と社会保険、年金の扶養を外れると大幅な出費が待っている】

・本人が月1.5倍働いても、(額面上48万増えたのにも関わらず)、270,456円が扶養を外れることで出費となり、48万まるまるもらえず、209,544円しか増えない。

 

・本人が今の倍働いても、(額面上96万増えたのに)398,784円が扶養を外れることで出費となり、96万まるまるもらえず、561,216円しか増えない。

 

・更に本人がパートをかけもちし、月の3倍働いても(額面上192万増えたのに)636,556円が扶養を外れることで出費となり、192万まるまるもらえず、1,283,4444円しか増えない。

 

 

【世帯でみると更に驚愕の結果】

更に図表をご覧下さい。

 

 

・本人が月1.5倍働いても、(額面上48万増えたのに)世帯でみれば年間約9万しか増えない。

 

・本人が今の倍働いても、(額面上96万増えたのに)世帯でみれば年間約32万しか増えない。

 

・更に本人がパートをかけもちし、今の3倍働いても(額面上192万増えたのに)世帯としては、半分程度の101万しか増えない。

 

 

 

 

 

5 結びに

 

 

【最後にお伝えしたいことは2つ】

 

1 国が設けた扶養の制度は、手厚い。中途半端に働くと世帯で見ると苦しくなるだけ。

夫婦生活継続ならば、やはり扶養の範囲内である月8万に抑え、働くのが効率的。

2 離婚へ向けて働くにしてもまずは社会保険と年金の扶養の範囲内まで。その後に、夫同様に正社員となるようにし、経済的にも対等となるのが良い。そうでないと夫婦ともに更に疲弊が加速していく。

 

 

 

 

いかがでしたか?

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

お力になれれば、幸いです。

また良ければ、次回お会いしましょう。

次回は今回を踏まえ、新税制制度での100・103・106(・123)・167万の壁について記したいと思います。

 

 

なお、今回も「離婚マネーアドバイザーFP.Daiki」のX(旧Twitter)(リンク有)の補足です。

月に一度は、お金の勉強に関する情報を更新予定です。

X(旧Twitter)、ブログ共にフォローいただけますと今後の励みになります。

 

 

 

【執筆者】離婚マネーアドバイザーFP.Daiki

・AFP

・社会保険労務士有資格者

・年金アドバイザー2級

・離婚カウンセラー

産後クライシスを乗り切れず、離婚。離婚を機に「同じ苦しみを味わう人を救いたい」という思いで再起。

現在は、家計診断・勉強会・個別サポートでお客様の離婚×お金の問題を二人三脚で解決しています。