季節は移ろい
風が冷たく感じるようになった。


そろそろ厚手のコートを
出した方が良さそうだ。


今朝は、朝から雨が降っている。


穏やかで静かな雨。


乾燥して埃っぽくなった地面を
きれいに洗い流し、
草木に潤いを与える。


そんな雨が降っている。



わたしが好きな人は
雨が好きだ。



好きな人が好きなものは
だんだんと好きになっていく。


誰かがそんな事を言っていたけど
本当にそうだ。


最近のわたしは
穏やかで静かな雨が降ると
心が踊り出す。控えめにだけど。


そして、外に出掛けたくなる。


勿論好きな人と。



その人は、


ひょろっとしていて、

見た目は大人っぽい。


だけど、中身はかなり少年で、

くしゃっとした笑顔が
誰よりも可愛い。


真面目で実直で、

ちょっと不器用な性格を
している。


でも、
そういう所もひっくるめて
わたしは好きだ。



その人は今わたしの隣で
濃紺の傘を差して歩いている。



今日は二人とも休みだから
お昼は彼の部屋でナポリタンを
作ることになっている。


その食材を今からスーパーに
買いに行くところだ。



なぜナポリタンかというと・・・



昨日の夜、
二人で観たテレビ番組が
いけなかった。


なんで夜に
あんな美味しそうな料理を
大々的にテレビ画面に映すかなぁ・・・


その番組を観てから
二人とも完全にナポリタンモードに
なってしまった。



なんて単純な・・・

って思われても構わない。


でも、結構そういう人多いでしょ・・・?



それに、
こういうチョットした事で
彼と共鳴し合うというか・・・
(ちょっと大袈裟な言い方だけど)


そういうのが
今のわたしには
とても嬉しくて幸せな時間だった。





スーパーに到着すると、
彼がカゴを持ってくれた。


なのでわたしは
彼の濃紺の傘と自分の赤い傘を
持った。



彼のこの濃紺の傘を見ると
少し前までの自分を思い出す。


後ろ姿しか見ていない彼を
"彼"と重ね合わせて
一喜一憂していた。


まさか彼が"彼"だったなんて
思ってもなくて。


同じマンションの、同じ階。


こんな偶然ってあるんだなって。



大学生の頃、
最初の告白は彼からだった。


だから、
二度目はわたしからした。


彼が告白を受け入れてくれた時、
心の隙間風が止まった。


温かいものが
体に溶け込んできて、
満たされていくのを感じた。


自然と涙が出ていた。


あんな嬉し涙は初めてだった。



再びめぐり逢えた事に
本当に感謝した。


わたしはもう二度と
彼を手放すような真似はしない。


あの日の彼の
無言の涙が教えてくれた。



こんな素直な人、
絶対に逃したらいけない。


そんな事をしたら罰が当たる。


彼と過ごせなかった期間、
それを身をもって感じた。


本当に苦しいくらい・・・・・





そんなことを思いながら
スーパーの店内を歩いていたら
彼が、


「椎茸とマッシュルーム
 どっち入れる?」


と聞いてきた。


こういう
何気ない会話が出来る今を
大事にしなきゃね。



「両方入れちゃおっか!
 うま味倍増(笑)」


「おっ、そうだね! じゃあ両方」



彼はそう言って、
目尻を下げてニコッと笑った。


その彼の一瞬の笑顔に
わたしのハートは射抜かれた。


完璧にやられた。


誰か~! 衛生兵を呼んで下さい!!


ここにキュン死寸前の人が
いまぁぁぁっす!!!



恋煩いしている時も、
恋いに落ちてからも、

どうやらわたしは
かなり重症のようだ。


もうホント責任取って下さい!

平手くん!!



「ん? 今、何か言った?」



えっ!?


まさか心の声、聞こえてるのぉ!?


エスパーなのっ!?




心の中で独り言を
言っていた事が
急に恥ずかしくなった。



わたしが、
この恥ずかしさのやり場に
困っていると、
彼はそんな事つゆ知らずで、
白のパプリカを興味津々に見ていた。



「これって栄養あるのかな?」


「あはっ、どうなんだろうね・・・」



"あはっ"って何なの?


ねえ、わたし、落ち着いて!!



自分で自分にツッコミを入れていた。


早くも幸せボケしているのだろうか・・・



この先
わたしは一体どうなるのやら・・・



怖い・・・



勿論、良い意味で!!





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