そんなある日、
午後の講義が休講になった。


バイトも入っていなかったから、
僕は昼食も摂らずに昼から図書館に
入り浸っていた。





異変を感じたのは夕方頃だった。





座っているだけで、
ぐらぐらと体が揺れているような
感覚があった。



次第に体に力が入らなくなり
頭が重たくなった。



方向感覚がつかめなくなっていた。



上を向くと
天井がぐるぐると回った。





ヤバい・・・・・





そう思った時はもう遅かった。



僕は椅子から落ちた。



由依さんの声が聞こえた。



そこでたぶん意識を失った・・・・・















うっすらと目を開けた時、
最初に僕の目に入ったのは
由依さんだった。



心配そうな顔で僕を見ていた。



透き通るような綺麗な瞳だった。



その瞳を見た時、
僕は自分の気持ちに気が付いた。










「・・・好きです」





僕は由依さんに告白していた。



彼女は驚いた顔をした。



僕も自身の急な発言に驚いた。



その時彼女にこう言われた。



「自分を大事に出来ない人は
 好きになれません」





僕はどうやら栄養失調で倒れ、
救急車で運ばれたようだった。



恥ずかしかった。



左腕には点滴の針が刺さっていた。



彼女の言う通りだった。



まだ若いから
多少、体の無理が利くと思って
油断していた。


そして、
ウェアウルフ語を習得しようと
躍起になっていた。


大学の講義もバイトもない日は、
時間の感覚がなくなるほど
机にかじり付いていた。


食事もジャンクフードで誤魔化し
栄養なんて考えていなかった。



バイト代だって多少はあったし、
仕送りだってしてもらっている。


自炊をする時間だって
ちゃんと確保できたはずだ。


恵まれた環境にいながら
普段の生活を疎かにしていた。





僕は自身の生活を振り返り、
恥ずかしくなった。



自分の身勝手で
人に迷惑を掛けてしまった。


しかも、こんな状態で
彼女に告白したことも
恥ずかしさに拍車をかけていた。



自分が情けなくなり俯いた。



すると彼女は、


「・・・・・でも、
 何かに一生懸命な人は
 素敵だと思います」



そう言って
そっと僕の手を握った。


そして、
彼女は僕の目を見ながら


「これから自分自身の体も
 大事にしていけるなら、
 好きになれます」


と言った。



その時、
低体温動物のように感じていた
自分の体に、
体温が戻っていくような
そんな感覚を覚えた。



でも、体温は
そのまま上昇を続け、
僕の頬と耳を真っ赤にした。


鼓動が早くなり、
またもぶっ倒れそうになった。


そこを何とか踏ん張った。





僕はやっとの事で
彼女の手を握り返した。



彼女は少女のような笑顔を僕に向けた。



「自分の事も、由依さんも
 大事にします」















これが僕たち二人の馴れ初めだ。





スマホに彼女からメッセージが入った。



(ごめん。 
 今晩急遽、女子会になりました。)



僕はカレンダーを見た。



今日は新月かぁ・・・



なら全然問題ないな。



(わかりました、
 楽しんできてね。
 遅くなるようだったら
 迎えに行くよ。)


(ありがとう。
 遅くならないようにしま~す。)



"しま~す"って時点で
遅くなる気満々だね、きっと・・・



夕飯は一人かぁ・・・ 寂しいな・・・



遅くならなくても
迎えに行くんだけどね。





なんて事を思いながら
僕は仕事を再開した。




 
ーーーーーーーーーーーーーーーーー