夜空の星は、
雲に邪魔されることなく
輝きを放っていた。



その星を眺めながら
僕は駅まで由依さんを
迎えに行った。



僕が彼女と同棲を始めた日の夜も
夜空に無数の星が輝いていた。





月が出ている時は、
夜空の主役は月に見える。


でも新月の日は、月が見えにくい。


それでも、
薄らとぼんやりと
その輪郭が見えることがある。





由依さんはあの日の夜、
月が好きだと言った。



自分で光を放たなくても
しっかりと自分を主張できている。


主張しても
周りとの調和がとれている。


それは、
全ての生き物の
調和を図っているようで
とても神秘的に思える。


けれど、
それはどこか
物哀しくもあり惹かれてしまう、


と彼女は言った。


彼女の顔はどこか寂しげで
憂いを帯びていた。


でも、宿命を生きている
彼女の目は淀みなく美しかった。










コーヒーショップの前で
数分待つと、
由依さんが改札を通って
こちらに来た。


ほろ酔いで、
頬がほんのり赤くなっていた。


彼女は愛くるしい顔で微笑んだ。


その笑顔を見ただけで、
今日一日の疲れが癒されていった。



僕が手を差し出すと、
彼女はその手を握った。


星が瞬く夜空の下を
指を絡ませながら帰った。





「新月かぁ・・・
 あと15日・・・・・」


と彼女が言った。



あと15日すると、また満月になる。



僕はその満月の日、
夕方から打ち合わせが入っていた。


どうしても予定を変更する事は
できなかった。


その事を彼女に伝えると
少し寂しそうな顔をした。



「ごめん」


僕がそう言うと
彼女は首を横に振った。



「仕事だからしょうがないよ。
 大丈夫・・・・・
 でも・・・早く帰ってきてね」



僕は街灯の下で
彼女と指切りをして約束した。



「早く帰るから、
 おみやげも買って帰る!!」



僕のその言葉に
彼女は目を輝かせた。



「えっ、本当!!
 じゃあ期待しちゃおっかなぁ」



そう言って、
悪戯な笑顔を僕に向けた。



そんな会話をしながら帰っていたら
マンションに着いていた。










由依さんは歯磨きをし
シャワーを浴びると
ソファーで船を漕ぎだした。



おーい。


眠いならベッドで寝てね。



なんて声を掛ける隙もなく、
彼女は本格的に寝ていた。



「風邪引くよ~」


と言ってはみたものの、
ピクリともしなかった。



彼女はソファーの上で丸まり、
まるで子犬のようだった。


彼女を抱きかかえると、
ふわっと花のような香りがした。


普段あんなにクールに見えるのに
寝顔は愛玩動物のようで
隙だらけだった。


そっとベッドに下ろすと
またも子犬のように丸まった。


髪を撫で額にキスをすると、
顔を軽く ペチッ っと叩かれた。



・・・・・ごめん(笑)。



彼女は既に夢の中にいるようで、
ニコッと笑い寝返りを打った。



どんな夢を見ているのやら・・・





新月の日は、
満月までのカウントダウンだから、

と以前彼女は言っていた。


だから、新月を目印に
仕事に区切りをつけている、

とも言っていた。



全身まるまる変身してしまう
彼女にとって、
満月の日は何かと制約が多い。


小さい頃から
そうだから慣れている、と
話していた。


だけど、
満月の夜に出掛けてみたい、と
僕に愚痴をこぼしてくれた事が
あった。


僕は「出掛けよう」と言った。


だけど、
満月の日に限って
仕事が立て込んでいたり、
今度のように打ち合わせが入ったり
していた。



帰り道での彼女の寂しそうな顔が
頭から離れなかった。



また、あんな顔にさせてしまった・・・



自分がもどかしかった。



彼女の寝顔を見ながら
僕はまたも謝っていた。





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