今週はずっと天気がいい。



今日も一日中天気がいいようだ。



今朝のテレビの天気予報で、
夜には綺麗な満月を見ることができる、
と気象キャスターが言っていた。






そう、今日は満月。



由依さんは、
昼には仕事を切り上げ帰って来た。



満月の日は、
学校は短縮授業になり、
ほとんどの会社は
日没の3時間前に終業する。


細かい規定は、
各学校や会社、業種によって違う。


変身しても
業務に差し障りのない人は
仕事をしている。


しかし、
満月の日の残業は
原則禁止されている。



飲食店は通常営業している。


だから満月の日は、
業種によってはかなりの稼ぎ時だ。



由依さんの会社は
狼人間にとっては
働き易い会社のようだ。


満月の日は退社時刻を
自分で決められるらしい。



僕のようなフリーランスで、
変身しても業務に差し障りのない人は
満月の日に仕事が入ることがよくある。


僕の担当編集者曰く、
その方が時間を有効に使えるから
らしい。


でも、僕だってたまには
満月の日に休みたい。


そして、
由依さんと一緒にいたい。



今日は彼女と一緒に昼食を
食べる事ができた。


それは嬉しかったのだけど、
夕方から打ち合わせが入っていた。










そんなわけで僕は今
担当編集者と挿絵作家と
今後出版予定の
ウェアウルフ語絵本についての
打ち合わせをしている。


この後に、
"一杯やりましょう"
という誘いを上手く断れるかが
早く帰れるかの鍵になる。



僕は満月の日は
特に由依さんといたい。


彼女はあまり
寂しさを口には出さない。


でも、表情には出てしまっている。


彼女の寂しそうな
悲しそうな顔は見たくない。



見たくない、
なんて言っておきながら、
僕が原因で彼女をそういう顔に
させてしまっているのだけど・・・・・





僕は飲みの誘いを上手く断れない。



打ち合わせの度に
飲みのお誘いがある。


付き合っても、
何とかその日のうちには
帰っている。


だけど毎度、
彼女は先に眠ってしまっている。


その度に僕は彼女の頭を撫で、
彼女の寝顔に謝る。


ここ数ヶ月、
満月の日はその繰り返しだった。



今日こそは上手く断れるだろうか・・・



断りたい・・・・・





そろそろ打ち合わせが終了する。



この挿絵作家とは
今日が初顔合わせだった。



あるよな、飲み・・・・・



僕は既に変身して頭の上に生えた
大きな耳の脇を指で掻きながら、
飲みを断る理由を探していた。



もみあげ部分の毛が濃くなり
牙が生えて少々滑舌の悪くなった
担当編集者が、


「ちょっと場所を変えて
 飲みながらお話しましょうか」


と言った。





ああっ・・

どうしよう!? と思った時、




僕と同じように耳の生えた
挿絵作家が、さらっと言った。



「私、今日は満月なので
 これで帰らせていただきます」





実にシンプルだった。


だけど驚いた。


それでいいんだ! と感心した。



編集者は僕に、


「平手さんはどうしますか?」


と聞いてきた。



僕は思い切って、


「僕も今日は帰ります」


と言った。



すると、
彼はどういうわけか
安堵の表情を浮かべた。



どうやら今までは、
編集部内の慣例に従って
飲みに誘っていたらしかった。





担当編集者は
僕と挿絵作家の顔を見ると、
少しばかり畏まって話をした。



編集者のパートナーは、
変身パーツが手足らしく
少し生活に支障をきたしてしまう、
と話してくれた。



挿絵作家も同じような理由だった。





僕は二人の話を聞いて
とある決心をした。





僕はこの日、
僕のパートナーが
純血の狼人間であることを
初めて他人に打ち明けた。







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