手荒いうがいを済ませ
リビングに行くと
彼女はプリンが入った紙袋を
じ~っと見ていた。



僕は打ち合わせの帰り
プリンを4個買った。


今日、変身した姿で食べる分と、
明日、本来の姿で食べる分。



変身した彼女も素敵なのだけど、
なんせ会話ができなくなる。


好きな人と
美味しいものを食べるなら
やっぱり会話をしながら
食べたかった。


だから、明日の分まで
つい買ってしまった



変身し超小型の狼になった彼女は
軽く尻尾を パタパタ させた。



何度か満月の夜を
一緒に過ごしていると、

直接会話はできなくても
何となく仕草や鳴き声で
彼女が何を言いたいのかが
わかるようになった。



今の尻尾 パタパタ は
たぶんプリンを催促している。



紙袋からプリンを取り出すと
パタパタ は早くなった。



顔は澄ましているけれど
尻尾は正直だ。



このままの容器だと
食べづらそうなので、
小さい器に移し替えて出した。



彼女は ペロペロ と美味しそうに
プリンを食べた。


そんな彼女を見ているだけで
癒し効果があった。


が、この事は本人には言っていない。



普段の彼女も
僕にとっては癒しであり
信用も信頼もおけるパートナーだ。



凛としたクールな佇まい、

僕にだけ見せる
ふんわりとした甘さを纏った感じ、

それを行き来しているようで
たまらない。



でも正直に言うと、
変身してからの癒し効果は
普段の数倍あった。


彼女を見るだけで
体中の筋肉が弛緩していく様な
感覚を覚えた。



至極の癒しだ。



だから彼女には
この事は言わない・・・・・


というか・・・言えない。



もう彼女がいればこの先
一生ペットは飼わn・・・・・



あ・・・これは絶対言ってはいけない。



本当は思ってもいけない。



彼女は僕の大切なパートナーであって
ペットではない。


満月の度に
自分にそう言い聞かせている。



最初の頃は、あまりの可愛さに
口から幼児語が漏れそうになったけど、
毎度それを必死で飲み込んだ。


僕が彼女の立場だったら
絶対ペット扱いも幼児扱いも
嫌だからだ。





・・・それでも


やはり僕は今日も
思いっきり、だらしないくらい
目尻が下がり、
口元が緩んでしまっている。





お口の周りにプリンがぁ・・・・・



あぁ・・・ かわいい・・・・・





彼女は綺麗な形の小さな耳を
時折 ピク ピク させながら
プリンを食べた。


その耳にも触りたくなったけど
食べてる最中だから我慢した。





「プリン食べたら、散歩に行こっか」



僕がそう聞くと、
彼女は食べるのをやめ、
少しの間考えているようだった。



その時僕は、自分の考えが
少し浅かったかもしれないと
感じていた。



いくら彼女が
満月の日に出掛けてみたいと
言ったからって、
散歩じゃなくてもいいわけで・・・



ちょっとそこまで散歩といっても、
今のサイズの彼女には
かなりの長距離だった。



ましてやワンコの様に
リードをつけて散歩なんてできない。


だってワンコじゃないから・・・



だからって、
抱っこして歩くのもな・・・



何だか過保護なペットみたいで
彼女は嫌がりそうだった。





「ごめん・・・・・
 僕の考えが足りなかった・・・・・」



僕がそう言うと、
彼女は僕によじ登り
肩にひょいっと乗っかった。


そして頬にすり寄った。





ん!? 肩乗りってこと・・・?



「・・・・・由依さん、
 それはつまり肩乗りなら
 オーケーって事ですか?」



すると彼女は クゥゥン と鳴いて
尻尾を振った。



私を肩に乗せて行け!!
という事らしかった。



彼女は僕の肩から降りると
またプリンを食べ始めた。



普段の彼女もたまに
Sっ気が滲み出ることがある。


けれど、
それは変身しても変わらなかった。


まあ、当然といえば当然だ。


由依さんなのだから。



僕がクスクスと笑うと、
彼女は僕がスプーンを持っている手を
カプゥ っと噛んだ。



だから、そういうとこね(笑)。





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