久々振りにミニ即売会に行きました。
現在、大阪南港のATCトレードセンターでは巨大恐竜展2025が開催されていますが、あまりの暑さにATCトレードセンターまで出かける気にもならず、紀伊國屋書店梅田本店の告知で見た東京サイエンスのミニ即売会「化石鉱物即売会」に行くことにしました。
東京サイエンスが紀伊國屋書店梅田本店で行う化石鉱物即売会はコロナ以前から年に2回時期不定期に行われていましたが、新宿ショーや池袋ショーに遠征するようになってからは役不足ということですっかりご無沙汰になっていました。
では何故今回足を運んだかというと、梅田本店のイベント告知に以下の文言が出ていたからです。
イベントコーナーに居た東京サイエンスのスタッフに質問したのは2つ。
一つ目は2008年秋にここ梅田本店で行われた東京サイエンスの化石鉱石即売会で購入したこれについてです。
ちょっと恐竜に詳しい方なら何処が怪しいかお判りでしょう。
ちなみにサイズは、 CH 15.2㎜、CBL 11.1㎜、CBW 7.0㎜、CBR 0.631、CHR 1.369、DAVG 12/5㎜、MAVG 13/5㎜ です。
注)基底部の片側一番膨らみの大きい中央部付近が大きく欠けているのでCBWは細く計測されている可能性があります。
この標本を手に入れたのは恐竜化石を収集し始めて数年目の頃で知識も無く、Net環境も現在のようになんでも検索すればそれなりの情報が手に入るという時代でもありませんでしたので疑問に思うこともなく「わあ~、デイノニクスの歯だ!」とばかりに購入しましたが、デイノニクスが発見されたのは米国モンタナ州とワイオミング州に広がるクローバリー層とアーカーソン州、オクラホマ州、テキサス州に広がるアントラーズ層でいずれも白亜紀前期の地層であり間違っても白亜紀後期ではありません。
であるなら、属種名か地質時代、産地のどちらかが間違っていることになります。
自分で調べた範囲で云うとドラムへラーはカナダのアルバータ州南東部にある小さな町で近くには冬季五輪の開かれたカルガリーと州立恐竜公園があります。
近郊の地層を調べてみるとエドモントン層(Edmonton Formation;構成部層はホースシューキャニオン層、ホワイトマッド層、バトル層、スコラード層で 中生代白亜紀後期カンパニアン期~旧成紀暁新生に堆積)とアルバータ州、サスカチュワン州、米国モンタナ州にまたがるベアポー層(Bearpaw Forrnation;構成部層は複雑怪奇ですが、アルバータ州中央部ではベリーリバー層のダイナソーパーク層、東部およびモンタナ州の平野部ではジュディスリバー層に整合的に重なり合い、アルバータ州中央部ではホースシューキャニオン層、アルバータ州南部ではブラッドリザーブ層とセントメアリーリバー層、サスカチュワン州南部ではイーストエンド層、モンタナ州ではフォックスヒルズ層に覆われており、いずれも中生代白亜紀後期カンパニアン期に堆積)が候補になりました。
注)カナダのベリーリバー層は米国ではジュディスリバー層と呼ばれています。
では、アルバータ州で白亜紀前期の地層はないのかと調べてみるとフォート・セント・ジョン層群(Fort St. John Group)中生代白亜紀前期アルビアン期~新生代暁新生がありました。
ですが、この地層はブリティッシュ・コロンビア州北東部とアルバータ州北西部、ユーコン準州南部(カナダのピース川を中心としたポプラ林の緑地地域というアルバータ州北西部からブリティッシュ・コロンビア州北東部のロッキー山脈まで広がる地域の地下に分布)に広がっているので地域的にはドラムヘラーと真逆になるので可能性は低いかなと思います。
前置きが長くなりましたが、質問に対するスタッフさんの答えです。
「デイノニクスは間違いですね。2008年に買われたということなら当時のウチが間違いを見抜くだけの知識が無かったと云うことだと思います。」
では、「歯冠の形状からティラノサウルス科だとおもわれるが、ドラムヘラー周辺のティラノサウルス科であればアルバートサウルスの可能性が高いと思うが」という質問に対しては「私もそう思います」とのことでした。
二つ目の質問は「集めた標本を手放すことになった場合、どのような処分方法があるのか?」と云うことです。
スタッフさんの回答は「社内で買い取りの話が話題になることはあるが現在は行っていない。例外として弊社の常連さんが昔弊社から購入した標本と云うことがはっきりしている場合には買い取ることがある」というものでした。
また、博物館への寄贈についても現在は法的規制がややっこしくなっているため「博物館サイドから弊社に対し個人からコレクション寄贈の話があるが受け取っても大丈夫なものか調べて欲しい」という問い合わせが入るそうです。
ただ、近年は世界最大のミネショであるツーソンショーに出向いても新たな恐竜化石の出物がないためか「東京サイエンス社内でも今後は個人コレクションの買い取りが検討課題になると思います」ということでした。
なお、今回の化石鉱物即売会に並べられていた恐竜化石はモロッコ物を除くと2㎝サイズのT-REX歯と5㎜サイズのリカルドエステシア歯が目立った程度で後は半海棲哺乳類のデスモスチルスの束柱歯がありました。こちらも相場の上昇が半端ない感じでしたが、スタッフさんによると恐竜と哺乳類の相場を中国人バイヤーがを押し上げているから、ということでした。
最後に今回の即売会で参考用に購入したレプリカ標本と以前に手に入れた実物標本です。
どちらも形状が同じで時代は白亜紀前期アルビアンで産地はモンタナ州とワイオミング州のクローバリー層となっていますからデイノニクスで間違いないと思いますが、サイズの大小は成体・幼体というより下図の様な第一指から第三指までのどの部位の末節骨なのかによる違いと思います。
ついでにですが、クローバリー層にはデイノニクスと同じような大きさのミクロヴェナトルが発見されています。この爪も紛らわしい形をしていますので下に比較図(上段:実物、中段:レプリカ、下段:実物)を上げておきます。