新宿ショー入手品紹介の2品目です。

とは言え、今回は2標本の入手なのでこれで最後になります。

 

 

 ラベル情報: プテロサウルス(翼竜)

        ケムケム(累層?)

        モロッコ(王国)産

 

 余りにも情報量が少ないので補足(推測)をしていこうと思います。

 

 最初のプテロサウル( Pterosaur 翼竜 )ですが、正式にはプテロサウリア( Pterosauria 翼竜類 )です。

翼竜類は脊椎動物として初めて翼で空を飛んだ爬虫類の一群の総称になります。

 

 恐竜と同じく三畳紀に現れ白亜紀末に絶滅していますが、大きさは開翼長が20㎝程度の小鳥サイズから10mを超えるセスナ機より大きなものまで数多くの種類が知られています。

 

 特長は胴体に比べ大きな頭部と皮膜で出来た翼です。

翼竜類の翼は現生のコウモリに似ていますが、コウモリの皮膜が親指以外の全ての指で支えらているのに対し、翼竜は長く伸びた第四指だけで支えている構造をしています。

 

 そのため、プテロダクティロイディア(翼指竜類 Pterodactyloidea)と呼ばれる事もあります。

 

 三畳紀からジュラ紀にかけてはラフォリンクスのような小型で歯の付いた嘴と長いを持つ翼竜が多く繁栄しましたが、小型の翼竜は白亜紀前期頃に飛翔を始めた鳥類との生存競争に破れ徐々に衰退、白亜紀末にはプテラノドンのような大型で歯のない嘴を持つ短い尾の翼竜ばかりになっていたようです。

 

 次の産地であろうと思われるケムケムはケムケム累層(テガナ累層とも呼ばれる)のことだと思われます。

ケムケム累層はモロッコ王国南東部からアルジェリアにかけて広く分布する中生代白亜紀後期の地層で巨大な湖の湖底に堆積した赤褐色の砂岩から出来ています。 

 

 詳細です。

 

 

 サイズ: L 165 ㎜、W 20.80 ㎜、H 29.76 ㎜ (Lはノギスで測れなかったので物差しを宛がいました)

 

 この標本については上嘴(じょうし)なのか下嘴(かし)なのかをブースで聞いたのですが、判らないとのことでした。

ラベルの表記も最低限なので実際の所仕入れ元から(というより、仕入れ元が)詳細を聞いていないんでしょう。

 

 この化石(自分では下嘴のように思います)の正体は歯のない嘴とモロッコ、ケムケムという情報を考えるとアズダルコ科のアランカ・サハリカ(Alanqa saharica)の可能性が高いように思います。

 

 アランカは開翼長6mほどの大型翼竜で2008年の4月から12月にかけて地元の調査隊がケムケム累層で行なった調査で発見された数種類の翼竜の中の一種で、トーズ(Taouz)の北東10kmにあるベッガー(Begaa)村近くのAferdou N'Chaft という場所で見つかっています。

 

 なお、アランカとラベルされた嘴は以前のミネショでも手に入れています。

 

 

 見ての通りとても同じ種類には見えません。

一時期、魚の棘(シャークスパイン)ではないかと疑ったこともありますが、空洞の状態や全体の形、表面の状態などから翼竜の嘴であることは間違いないようです。

 

 ネットでアランカの文献を調べる限りこの標本はアランカでは無く、今回の新宿ショーで手に入れた標本がアランカのように思えます。

 

 また、この標本の黒っぽく見える部分は修復されていると思いますので、今回の新宿ショー手に入れた標本が殆ど修復がないのに比べると状態に雲泥の差があります。