新宿ショー入手品紹介の2回目です。
今回はこの標本を取上げます。
ラベルの記載内容です。
ニジェールサウルス(ニジェールのトカゲ)
全長 9m、体重1,8t
亜目:竜脚亜目
科:レバッキサウルス科
白亜紀中期(約1億1千万年前)
ハマダ・ドゥ・ギル ー タウズ
ケサールエススーク県
ケムケム盆地
モロッコ王国
ニジェールサウルスは白亜紀前期に現在の西アフリカ、ニジェール共和国で化石が発見された首の短い小型の竜脚類です。
最初に化石が発見された年代は不明ですが、1970年代初頭には発見されていたようです。
*ニジェールサウルスと思われる化石はフランスの古生物学者フィリップ・タケが率いる学術調査隊が1965年から1972年にかけてニジェール共和国に遠征した際にカドゥファウア地域のテガマ層群エルハズ累層で発見したようです。
その後、ポール・セレノ博士が率いる調査チームが改めて多くの化石を発見したことにより1999年にNigersaurus taquetiとして正式な記載が行なわれました。
なお、種名は最初に化石を発見したフィリップ・タケに敬意を表して命名されていますが、ポール・セレノ博士は同じ論文でニジェールの別種恐竜ジョバリアも記載しています。
ニジェールサウルスの特徴はがま口(こんな言い方は死語かもしてませんが)のような横に幅広い口先と太さ数ミリの細い歯が上下併せて100本以上直線的に並んで生えている顎、そして最前列の歯の後ろに予備の歯が並ぶ総数5百本に達するデンタルバッテリー構造を持っていることです。
このような特徴からニジェールサウルスは地面に生える柔らかい下草を効率よく食べる為に特化した竜脚類と考えられています。
発見された当初は全長15m、体重4tと推定されていましたが、その後の研究により背骨の中に空洞を持つなど軽量化に適応した骨格を持っていたことなどが判り全長9m、体重1.8tに見直されています。
地質時代は白亜紀中期となっていますが、1億1千万年前は現在の地質区分では白亜紀前期の最後の時代アルビン階です。
産地のハマダはアルジェリア民主人民共和国の南西部サハラ州ベシャール北西部にある石と岩の多い高原地帯の砂漠です。
タウズはドラー・タフィラレット地方エルラシディア県にある村でハマダとは行政区域が違うので最寄りの集落という程度の意味だと思います。
では詳細です。
この標本自体は見た目表面のエナメルが剥げ落ちたちょっとボロい標本ですが値段は結構しましたので確たる目的が無ければパスしていた標本だと思います。
この標本が昨年の池袋ショーに出ていた物と同じ物なのかは覚えていませんが、昨年池袋ショーから帰り道の新幹線の中で比較用資料として買っておけば良かったな、と思っていた種類の恐竜歯です。
サイズは CH 34.3㎜、CBL 4.7㎜、 CBW 6.7㎜ です。
では、何故この標本の入手に拘ったかと言うと、この標本の正体を調べたかったからです。
サイズは CH 27.9㎜、CBL 3.8㎜、CBW 5.0㎜ です。
この標本は10年以上前、多分京都ショーのP商会さんのブースだったと思いますが、モロッコのスピノ歯を箱買いした中に一本だけ混じっていたという説明を聞いて購入しましたが、その後に同じような形質の歯を見たことがなかったので何時か正体が判ればと思っていました。
その後、アフリカ大陸の竜脚類の姿が徐々に明らかになる中でレバッキサウルスに比べ細身の歯冠を持つニジェールサウルスが持ち主の最有力候補だと考えるようになりましたが、論文では歯冠について「僅かに湾曲した歯冠を持ち、断面は楕円形」、「歯冠は正中線と側面の縁に目立つ尾根がある」と記載してはいるものの、これをハッキリと確認出来る歯冠の画像や図を見つけることが出来ませんでした。
2標本の比較です。
形質や咬合跡を見る限り同じ種類の歯冠だと思いますが、両者に見られる最大の特徴は、
矢印に示した畝とその間にある広い溝です。
この畝は遠心側ほど目立ちませんが近心側や側面にも存在する普通の竜脚類歯には見られない特徴です。
これは細長い歯冠が折れ難く補強する構造になっているのだと思われます。
今回は以上になりますが、正体不明だった竜脚類歯がニジェールサウルスの歯冠だったと特定出来たことが今回の新宿ショー最大の成果となりましたので余り状態の良くない歯冠でしたが手に入れた価値は十分にあったと思います。