本物志向なライダーから支持を集めるDT SWISS。この数年はスターラチェット構造のパテントが切れたことで多くのブランドから同構造のハブが登場しています。では、DT SWISSの優位性は大きく損失したのかというと、、、そうではありません。

 

ちょうどハイエンドDTホイールを注文してくださったお客様がいるので、説明の不足を補いつつブログ一本書いてみます。

 

1.すべてのスターラチェットは優れているのか?

スターラチェット型のラチェット歯では、非常に高いレベルの製造精度が要求されます。台湾のいくつかのOEMブランドではスターラチェットの大規模生産をスタートしています。しかし軽量化と耐久性の両立(バランスではなく”両立”です)をDTと同水準で達成しているといえる部品はまだ見つけられていません。

 

重いけれど耐久性のあるラチェットを作るブランドは良心的です。しかし軽くて耐久性の低い商品をスターラチェットの名前で送り出しているところもあります。MAVICのID360は両立を目指した良品ですが、グリス切れまでのマージンが高いとは言えません。ラチェットEXPよりも先にシングルフロート化した点は素晴らしいし、ID360ハブボディベアリングの与圧機構は優秀です。しかし多くのホビーライダーには問題にはなりえませんが、長期間耐久性において比較すれば、DTにはまだ及んでいません。

 

2.DT SWISSの全面ラチェットのみが優秀なのか?

じつはDT SWISSは標準的スターラチェットの後継主力となる構造「ラチェットEXP」を製造開始した直後、予期せぬ不良を発生させました。ダブルスプリングタイプ(ダブルフローティングともいわれます)のスターラチェットは、ねじれなどによるコンタクト面の僅かなズレを双方のラチェットのバネが上手く補正してくれることで全面コンタクトを安定化させていました。しかし、より軽量で高剛性なシステムとして登場したラチェットEXPはシングルスプリング(シングルフロートとかワンサイドフロートとも言われる)によるラチェット構造です。

 

ラチェットEXP

 

高い精度による製造であることは間違いないのですが、初期のラチェットEXP部品の一部で固着もしくはラチェット歯の早期摩耗が起こりやすいことが問題視されたことがあります。その後、ラチェット面の表面処理や交差の補正により問題を解決しています。ダブルフローティングの製造要件と同レベルで製造していましたが、それ以上のレベルを必要としていたことを認めて、早急に修正しています。

 

ラチェットEXPに類する構造の他ブランドはいくつかあります。どれもよく出来ていますが、

 

1.比較的柔らかい素材でラチェット歯を作り、交差を広めに取ることでコンタクトを安定させる

 

2.硬い素材を採用しラチェット歯とスライド外周の外径に差異を付けることでコンタクトを安定させる

 

3.ラチェットサイズを両面とも超大径化させる(さらにはテーパー角を付けるなど)によりコンタクトを安定化させる

 

他にもあるかもしれませんが、だいたいこの3パターンになるかと思います。どれも良点があり魅力的です。しかしDT SWISSのラチェットEXPの目立たない大きな改良点はベアリング間の距離を大きく取り、ただでさえ高剛性で強靭なメインシャフトをさらに安定化させている点にあります。

 

 

奥側のラチェットを非フローティング化させているのと同時にベアリング位置をより外に配置できるようにしています。ディスクブレーキ用ホイールなどフランジ間距離の確保に各社工夫を必要とする中で、このアドバンテージは小さくありません。もちろん、スタンダードなラチェットおよびラチェットLNも高い剛性を有していますが、ラチェットEXPの見えないアドバンテージはもっと知られて評価されるべきだと思います。ホイールをいじめまくるオフロードジャンルでは圧倒的優位性を持っています。

 

スターラチェットパテント切れは業界に多くの影響を示し、多くのブランドが採用していますが、台湾で大規模にスターラチェットを採用しているブランドもその開発に着手したことが2017年前後であることを認めていました。またシングルフロートを実現する精度はまだ出せないと。まぁ、去年の話なので、大幅に進歩しているかもしれません。

ちなみにDT SWISSがスターラチェットハブを世に送りだしたのは1994年です。もともとはパテントを有していたHUGI社を吸収したことからスタートしていますが、以後もハブ、スポーク、リムまでを製造できて、ハイエンドOEMも受け付けるブランドとして進展してきた唯一のブランドとも言えます。

 

3.他社スターラチェット採用品はだめなのか?

ハッキリ言ってそんなことないと思いますwww よく出来ているもの、たくさんあります。一昔前は低価格ホイール=重いだけでなく、かかりが悪い だったのがカーボンリムの低価格化とスタラチェ開放w が合わさって一気にパフォーマンスの上がったものが増えています。

 

ただし、”トルク伝達を向上させる機構を採用した” と ”ハブ剛性/シャフト剛性/ベアリングの安定性” が三つ巴に向上してないメーカーはそれなりか、それ以下です。一要素を向上させれば全体の性能は上がるわけではなく、一要素を向上したがゆえに他要素をよりシビアに改変する必要があるのは先にラチェットEXP初期問題で示されているとも言えます。

 

50万円のホイールにはそれに見合う先進性と特別性が要求されて然るべき。15万円のホイールにもまたそれに見合う性能を満たして必要な耐久性を満たして提案させるべきです。

 

良くないのは、弱点をバレないようにして、軽量化や高性能化を謳い、3年くらい売ったらしれっとドロップして逃げ出すようなブランドです。ディスクブレーキが増えてきて、ベアリングがすぐ死ぬ系のハブが増えてきました。モノが重くなってきているから、シャフトを薄くしたり、内部パーツを簡略化(いや、そこは抜くなよ)っていう一応は軽量化した商品が増えているのかもしれません。そこは、使用環境や目的に合わせて判断して選ぶ必要があると思います。

 

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安くて耐久性が高くて軽くて駆動伝達が良くてカッコよくて、、、という商品は探せばあるのかもしれませんが、高いけど耐久性が高くて軽くて駆動伝達が良くてカッコよくて、、、という商品を悪者視する必要はないはずです。努力と成果と信頼性は、価格という面でも適正に評価されるべきです。

 

実際、完成車メーカーのハイエンドモデルがDT SWISSホイールを採用したり、OEM生産を委託したりしているのも各社の開発者やアッセンブルマネージャ-(完成車の部品構成を決定して商談して採用する責任者)が絶大な信頼と期待を寄せているからです。私も試して、仕入れて、売って、取り付けて、メンテナンスしてを繰り返してきているからこそ、お客様の予算やご要望に合わせたものをご提案します。その1項目にDT SWISSがあるのです。

 

 

長くなりましたが、ぶっちゃけ、 為替が良くなったら買いたいな~ って去年の年末あたりに言ってくれてた多数のお客様たちの淡い期待が爆散しました(本日ドル円/150円突破) ので、、、様子見を諦めて春先に間に合うようにお考えください。その後方支援のためにもホイール購入時のサービスポイントを期間限定で増量します。

 

2024年3月末まで

DT SWISSホイール

全商品対象

税別本体価格の15%分の

購入ポイント付帯

 

 

 参考例)

 ERC1400ダイカット ディスクブレーキ用 前後セット 定価¥374000(税込)

 税抜き本体価格¥340000 付帯ポイント 51000ポイント(51000円分の商品購入や工賃適用にお使いいただけます)

 

 ERC1100ダイカット ディスクブレーキ用 前後セット 定価¥451000(税込)

 税抜き本体価格¥410000 付帯ポイント 61500ポイント(61500円分の商品購入や工賃適用にお使いいただけます)