この1週間で結構聞かれることが多かったのが「ディスクブレーキロードって一過性のブームで数年後に無くなるんですか?」っていうご質問でして、その30倍くらい「〇〇のディスクブレーキロードが欲しいけど納期は!?」「ディスクブレーキロード買ったら、そのあとで〇〇のホイールにしてみたい」みたいなお声がけも頂いているので 「無くなるのかな」 と 「いますぐ欲しい」 のコントラストに、僕のほうが混乱してしまったりしてすみません(汗)
結局の所、未来予想な話なわけなので、
「地球が終わる日が来るのか」
みたいな重い話から、
「世界中の女子が俺のこと好きになる日が来る可能性はゼロなのか」
みたいなペラッペラな話まで含めて結論の出しようがないテーマですよね。
それではディスクブレーキのロードバイクがブームになるのか定着するのかを別の視点で検討してみましょう。よくある 効く とか 効かない とか、メンテナンス性がどうのこうのという話は一切しません。最初に書いとくと、ボク個人の考えではなくなりません。俺も困るし。
①急にディスクロード増えた。怖い!ブームなんじゃないの? いう声について
急に増えたように見えるのは、すごくよくわかります。理由はいくつかありますが、第一に普及価格帯まで商品が拡大した。これはカタログやネットでわかりやすいですね。第二は代理店をディスるわけじゃないですが、この数年、本国ラインナップにあったディスクモデルを一部や全部輸入しなかったブランドがほとんどってこと。全部を展開するのは無理でも、この数年の間にディスクブレーキモデルが日本で売れるかどうか悩んでいないところはないでしょう。でも、MTBとかグラベル強いところは別かな。
入れてないんです。日本に。本国がディスクのみにするわって宣言しても、日本向けにキャリパーブレーキモデルを作ってもらったところもあるはずです。それが悪いわけではなく、市場が求めた反応がそうだったということ。そして、その揺り戻しゆえに「急に増えた!!」という速度感の混乱を生んでいると思います。
②規格がまだ安定してないから今はまだ駄目なんじゃないか という声について
規格の安定 という言葉のパワーがすごい強いなぁ といつも個人的に思いますが、では逆に何年市場流通したら規格は安定したことになるのでしょうか。もしくは時間ではなく流通量でしょうか。っていうか、規格ってどこのことなのでしょうか。
仮にシマノのフラットマウントのことだとしたら、一般発表は2015年4月です。これ、ティアグラが4700系になったときと同時です。ポストマウントもスルーアクスルもそれ以前ですし。
シマノはフラットマウント発表の前段階から業界各社にゴリゴリの根回しをしています。
自転車業界人が思い出したくない と 言っている間にみんなおっさんになって酔っ払って爆笑するMTBディスクブレーキ混乱時代のような混乱期(長い!)が そもそも生じないようにして、フラットマウントを発表しています。もはや5年前です。
規格が安定していない とか言ってる間に、12ミリスルーアクスルのネジ山に種類がある話でもするほうがユーザーには良い気がします。
③自分は欲しいと思うんだけど、それってブームに乗っちゃっただけなんじゃないか?
率直にこういうふうに言ってくれるお客様大好きです(ニッコリ) 新しいもの買うときって怖いっすよね!
でも、欲しいと思った自転車がディスクブレーキだったってことは、メディアの陰謀だとしても シマノの陰謀だとしても 世の流れのなんぼかが、その方向性を打ち出しているってことでもあります。ブームだとしても乗りたくなったら乗っちゃって下さい!
じゃあ、どうしてその方向を向くのかっていうと、これは商売的なことです。みんな何かを売りたいからです。
MTBは既に大多数がディスクブレーキです。クロスバイクもヨーロッパでは日本以上に雨でもクロスバイクで通勤しますからディスクブレーキの低価格化は大歓迎され、普及しました。ホイールやその他の自転車関連パーツがディスクブレーキの方に流れることで、コスト低減ができる面もあるでしょうね。クロスバイクとグラベルバイクだと結構共有できる部品も多いと判断する会社もあるでしょう。
新しいものを売っていきたいというのは市場原理だし、今後 多段化するにしても、新規ニーズを開拓するにしても、ディスクブレーキという柱が前提として必要なのは間違いないと思います。
もうひとつは、自転車全般における安全性向上へのニーズです。
近年の自転車大ブームは日本以外でもマーケットを大きくしました。良いものが増えましたが、悪いものも増えました。 自転車に興味を持って、低価格でチープなブレーキを搭載した見栄えだけのルック車的な自転車を選んで、ヨーロッパの山を2時間かけて登ったあとにあるのは、ガイドレールのない超高速ダウンヒルだったりします(怖)
極論なのですが、めちゃくちゃしょぼいキャリパーブレーキとめちゃくちゃしょぼいワイヤー式ディスクブレーキだったら、後者のほうが止まります。よく議論されるレースレベルじゃなくて、本当に低価格な商品群の話です。ワイヤー切れのリスクは同じ、調整不良は論外でもしょぼいキャリパーでブレーキゴムも減りまくって、シューがタイヤに当たるなんてことは起きないのがワイヤー式ディスクでもあります。
もうちょっとちゃんとタイヤを作れ。もうちょっとちゃんとしたブレーキ性能を最低限として設定しろ。自転車の安全性を高めろ。こういった消費者を守るための正しい外圧というものが確かにあるのです。その点においてもディスクブレーキはやや追い風を受けるでしょう。
④待ったほうが新しい良いものは出てくるよねぇ
そうですよねぇ。私もなんだかんだで携帯電話を買い換えるか悩み続けています。待っていれば、5Gに対応するアイフォンも出てくるんでしょうが、それまで僕のアイフォン7は持たなそうですw
待っていれば良いものは出ます。待っている間の時間は流れていくので、そここそがお客様が悩まられるべきとこですね。
今、自転車業界は ディスクブレーキロードバイク を推し進めていると思います。個人的には、「今まで数年間あえて見せないようにしてきたくせに急にゴリゴリ押すようになったら、これから始める人は混乱するよなぁ。。。」と思う気持ちもあります。
と同時に、「はよもっとやろうぜ!そこに楽しさを感じてくれる人だってたくさんいるはずなんだ!」という気持ち、「新しい波を感じたら、新しいことを始めようと思う人は増える」という、この仕事をしてきての経験もあります。
自分の同業には、都合よく何もしないで適当なことを言っている人はいません。そこは信じています。皆、様々なアプローチと努力とお楽しみ?で自転車の魅力を伝えたいし、自分も楽しみたいので。
一般のユーザーさんが今の市場環境に混乱を感じているなら、それは私含め、自転車を知ってもらって、買ってもらって、市場を成立させないと食べていけない側の怠慢です。私自身も省みるべき点はあります。
乗り遅れるというのは新しいものを否定することではないし、乗るということが新しいものを手放しに推奨するということではないです。知り、学び、取捨選択する。経営判断も伴うと思います。怖いのは「知らないから否定しておこう」のマインドです。誰かのきっかけを取り上げることにもなりかねないから、怖いのです。
最後になりますが、テーマを反転してみます。
キャリパーブレーキが潰える日は来るのか?
答えは 来ません。私が、私達自転車屋がキャリパーブレーキも愛しているし、ディスクブレーキも愛しているからです。商品ラインナップに消えてもなお修理は出来ます。修理部品が生産されなくなったら、工夫して対応します。キャリパーブレーキ最後の日なんてものが来そうになったら、レジスタンスでも組織しますわwww
なにかどうしても用意できない日が対応できない日が来ちゃったら、そのときは新しいものの魅力をお伝えできるような引き出しも持ちます。
ディスクもキャリパーもお手伝いができることが有るように研鑽を積みます。長々と失礼しました。