別の通路では、アクティアが一人の魔法少女と向き合っていた。
紫色のコスチューム。
暗い色の手袋。
アクティアとは正反対の色合い。
まるで、アクティア自身を反転させたような姿だった。
「……私に似てる」
だが、その顔を見た瞬間。
アクティアの表情が凍った。
「……え?」
その顔。
その目。
その面影。
忘れるはずがない。
「……ママ?」
そこにいたのは、
アクティアが初めて魔法少女になったあの日。
ネガティアの怪人によって命を奪われた母、
ミヅキにそっくりな顔だった。
「どうして……?」
アクティアの心が大きく揺れる。
死んだはずの母が、なぜ今ここにいるのか。
答えが見つからない。
その一瞬。
ミヅキの姿をした魔法少女が動いた。
レイピアが振られる。
アクティアは自分のレイピアで受け止めようとする。
しかし――。
パキンッ!
剣先が折れた。
「……!」
ミヅキはそのまま飛び上がった。
アクティアの頭上を越え、背後へ回る。
そして着地するより早く、
飛行マントを破壊した。
さらに背中へ攻撃が入る。
「っ……!」
アクティアはその場にしゃがみ込んだ。
アクティアは背中へ手を回した。
いつもなら、時間が経てば魔力による修復が始まる。
最近では、その速度もかなり早くなっていた。
しかし――。
「……どうして?」
再生しない。
まるで、リフォージ直後の頃に戻ったようだった。
魔力の流れが弱い。
ミヅキの姿をした魔法少女が再び迫る。
アクティアは右手にシールドを展開した。
連続するレイピアの攻撃。
キンッ!
キィンッ!
シールドが何度も攻撃を受ける。
やがて、
ピシッ……
亀裂が走った。
「まずい……!」
ミヅキが一気に踏み込む。
レイピアがシールドを貫いた。
さらにシールド発生部分まで突き抜ける。
アクティアは右腕を負傷し、その場でよろめいた。
それでも諦めない。
ミヅキの攻撃を、折れたレイピアの柄で受け止める。
そして左手を向けた。
「これで……!」
残された魔力を集める。
ドンッ!
ビームがミヅキの顔面へ直撃した。
ミヅキは顔を押さえる。
アクティアは息を切らしながら見つめる。
やがて、ミヅキが手を離した。
そこにあったのは――。
母の顔ではなかった。
無機質な、
V字の顔。
「……その顔……」
アクティアには見覚えがあった。
「量産型……魔法少女……!」
ミヅキは偽物だった。
量産型魔法少女が、アクティアの記憶にある母の姿へ擬態していたのだ。
「……ママじゃなかった」
アクティアの胸にあった戸惑いが消えていく。
代わりに、
闘志が燃え上がった。
「……そういうことなら!」
アクティアの身体の再生が始まる。
しかし、武器は戻らない。
レイピアは完全に破損。
シールドもない。
アクティアビットも全基破損。
飛行マントも損傷。
攻撃手段がない。
それでもアクティアは折れたレイピアを捨てた。
「これがなくても……!」
素手で向かっていく。
身体能力ではアクティアが上回っていた。
量産型魔法少女を押し始める。
しかし、相手にはレイピアがある。
一瞬の隙を突かれる。
「っ!」
刃がアクティアを捉える。
傷が増える。
再生する。
また傷つく。
また再生する。
しかし、アクティアの魔力最大値は極端に小さい。
再生するたびに、魔力が減っていく。
「まだ……!」
それでも戦う。
だが、ついには押し倒される。
アクティアは尻もちをついた。
目の前には、
ボロボロになった手袋とレイピア。
アクティアはそれを見つめた。
そして、静かに願った。
「……お願い」
手袋を握る。
「みんなの力になりたいから……」
折れたレイピアを握る。
「……協力して」
量産型魔法少女が迫る。
レイピアが、アクティアの胸へ突き出される。
その瞬間。
手袋とレイピアが光り始めた。
「……え?」
光が二つを包み込む。
そして、
新しいレイピアの柄へと姿を変えた。
量産型魔法少女のレイピアが迫る。
アクティアは柄を振り抜いた。
ブンッ!
その瞬間。
柄の先から、
光り輝く刃が出現した。
キィィンッ!
量産型魔法少女のレイピアが弾き飛ばされる。
宙を舞う敵の武器。
アクティアは一気に踏み込んだ。
「これで……終わり!」
光刃が敵を捉える。
量産型魔法少女の身体が崩れていく。
ミヅキの姿が消える。
無機質なV字の顔へ戻る。
そして、
灰へ。
静かな床へ落ちていった。
「……この剣」
軽く振る。
光刃が一瞬だけ現れ、消える。
そこでアクティアは気づいた。
このレイピアは、必要なときだけ魔力を使う。
常に魔力を流し続ける必要はない。
光刃を形成するときだけ、わずかな魔力を消費する。
「これなら……今の私でも使える」
切断力も、以前のレイピアより高い。
ただし、
シールドはもう使えない。
防御を捨てた。
その代わり、限られた魔力を攻撃へ集中できる。
アクティアは新しいレイピアを携えた。
「みんな……待ってて」
そして、基地の奥へ向かって歩き始める。
ルミナもまた、仲間たちのもとへ向かっていた。
それぞれが、自分の過去と向き合った。
失った妹。
失った母。
ネガティアは二人の記憶を利用した。
けれど、
過去そのものに負けたわけではない。
ルミナは前へ進む。
アクティアも前へ進む。
その先に待っているのが何であろうとも。
ネガティア基地のさらに奥へ。
四人の魔法少女たちは、少しずつ同じ場所へ近づいていた。

