俺には放浪癖がある。なぜ~か分からないけど、突然消えたくなる。我がままなのは十分わかっているが、突然あちこち行きたくなる。日本という場所から離れて、日本人というのを観察したくなったり、日本人なんだ、というのを確認したくなったり、「なぜ?・どうして?」という疑問がでたら、自分の目で確かめたくなり、突如として「いってきま~す」の言葉残し、旅にでる。 残された人はたまったもんじゃない。

特にうちの大御所、兼ちゃんなんて最初の頃は「ダメだ、危ない、・・」などと言っていたが、最近は慣れたもんで、「いつ帰ってくる?」くらいしか聞かなくなった。

十数年前、フィリピンに行った時なんて、まだ英語も分からない時、1人で旅立った。

空港に着いたとき、さすがに後悔した・・英語の辞書片手に話すが、自分の意見は言えたが相手が何を言っているのか?さっぱり分からなかった・・勉強しとけばよかった・・って後悔の連続。しかし、来なけりゃ良かったとは思わなかった。

しかし、空港を出たときに、「どうしよう・・こなけりゃよかった・・」と少し思った。

空港の周りに、ギラギラと目を輝かせた人だかりが出来ていて、足がすくんだ事を思い出す。ホテルまでタクシーで行く途中、ストリートチルドレン達が、信号待ちの車に集まり、物乞いをしている。日本では考えられない光景を目にし、気分的に、ナーバスになった。しかし、生きる手段として、その方法を選んでいる子供達に、人間としてのパワーをも感じたのも事実だ。町は汚く、道路も穴ぼこだらけ、外に出れば、日本と全然違う町並み、バラック小屋に殆んどの人が住み、匂いもきつい、帰りたい気持ちと、まだ見てみたい気持ちが葛藤しながら過ごした。

フィリピン人独特の陽気さに何度か助けられ、ここは神のいる国みたいだ・・とも

思った。国の貧しさに反比例し、国民は無茶苦茶陽気であった。

治安は最高に悪かったが、そのデンジャラスさにワクワクして、変な意味、生きている実感をも感じた。また帰る日、クーデターに遭遇し、空港閉鎖なんて事も経験し、実際に「ドンパチ」やる寸前の空気も味わった。・・さすがに、生きて帰れないかも・・

と感じた事も幾度となくあった。そんな国だったが、人間の原点をも垣間見る事ができた。この国に発展はあるのだろうか?とその頃考えていたが、数年前に行った時

道路は整備され、町並みは綺麗になり、黒煙を吐きながら走っていた車も、綺麗な車に変っており、国として、見てくれは結構発展していたが、相変わらずストリートチルドレンは信号待ちしている車に物乞いしていた。それでも、国民達は笑顔で、日々を暮らしている。人間の強さを感じる国だった。