Disc and Music Echo (Jan. 13 1968)

Monkee Tork!

The stories of Pete, the Monkee who is, and Tim, the 'Monkee' who wasn't

by David Hughes

 
先週の「トップ・オブ・ザ・ポップス」(訳注:1964年から2006年までBBCで放送された生放送の音楽番組)での「ピーター・トーク」は、彼自身の言葉を借りれば、「僕の一般的なイメージ」であった。おどけた間抜けのようなキャラクターで、ジミー・サヴィルとの迷走すれすれの30分の生放送をいつも通り道化に徹したのだ。あんなもの演技に決まっているとの批判もあったが、彼自身も演技であると認めている。それは世間が求めていたものだったからだ。
 
しかし、リージェント・ストリートにあるデッカ・レコードの事務所の小さな部屋でテーブルの上にあぐらをかいて穏やかに座っていた「ピーター・トーク」は、演技もなく、おふざけもない、非常に知的な若い男性だった。そして(TVでのキャラクターと比べたら)驚くほど語彙力が高かった。「それは自分でも分からない。生まれつき語彙力に恵まれてるんじゃないかな、今じゃそこから抜け出せなくてさ!」
 
つかみどころのないモンキーを探り出すのは古いことわざ "Softly, Softly Catchee Monkee"(訳注:サルを捕まえるにはゆっくりと。日本で言えば「急がば回れ」)が言うほど容易くはなかった。
 
シェパーズ・ブッシュにあるBBCテレビでは彼がいつ到着するのか知っていた人はほとんどいなかったし、彼がいつ帰るのか知っていた人も皆無だった。私は、ピーターが普通の自立した一人の人間でありたい、そして、絶え間なくカメラマンや英国の取材担当者やボディーガードに急かされずに人々と話をしたいと切に願っているのだと強く感じた。
 
形勢逆転
一度ならず、自身のカメラで武装した彼は無防備なカメラマンたちと形勢を逆転したが、ほとんどのカメラマンはトークの繊細な皮肉を理解してはいなかった。
 
しかし、部屋と座るテーブル、そして一杯のビールが用意された。トークが話し出す。
 
●TVシリーズについて
「僕たちは前の2シリーズと同じ調子でもう1シリーズやる事はできなかった。そんな事をしたら、僕たちの人気はほとんどなくなる所まで落ちていただろうね」
 
「有難い事に、今は自分たちで何をするか前より発言できるようになったんだ。ただ支持されるだけじゃなく、自分たちのアイデアを出すようになってきた」
 
「例えば、ミッキー・ドレンツは1話の脚本を書いてプロデュースもしたし、マイクもそうだし、僕もそう。僕がやったのは「負けるなデイビー」で、デイビー・ジョーンズがヒーロー然としていた、モンキーズでもほとんど忘れられてる時代に回帰したんだ」
 
「他にも新しく始めたのは、サード・シーズンを見れば分かるけど(訳注:セカンド・シーズンの間違い)、僕たちのインタビューだ。僕たちが出したアイデアなんだけど、個人的に尊敬してる好きな人たちにちょっとしたインタビューをするんだ」
 
「マイクはフランク・ザッパにインタビューして、ミッキーはチャーリー・スモールズで(訳注:デイビーの間違い)、僕はピート・シーガーが良かったんだけど、スケジュールが合わなかったみたいなんだよね」
 
●グループとしてのモンキーズについて
僕たちがグループとしてTVシリーズより長生きできるかどうかは言いたくない。今はモンキーじゃない自分なんてイメージできないんだ。ミッキーは良い友だちだよ、デイビーと僕には深い部分で分かり合える絆がある。
 
多分、僕たちは誰よりもお互いを理解している。それから、マイクは1点を除いて僕とは真逆だ。同じ宗教的な信念を共有しているって事以外はね、僕には理解しがたい事だけど。
 
僕がモンキーズを辞める事はないと思う。見出し用のセリフみたいだけど、僕の本当の気持ちさ。だって、ジョン・レノンが84才になったって、彼はずっとビートルズの一人なんだから。そこから逃れる事はできないんだ。
 
●フォーク・ミュージックについて
僕がグリニッジ・ビレッジにいた頃から時間が経っているけど、いまだに僕にとってものすごく身近なものなんだ。僕はピート・シーガーとティム・バックリィの大ファンで、撮影の合間に時間さえあれば、ギターを弾いてるよ。
 
僕のバンジョー・ソロがウェンブリー公演でのハイライトの一つだって言ってもらえて、すごく嬉しいよ。それも僕の一面で、いつになるか分からないけどそっちでも花を咲かせたいと思ってる。
 
●ロンドンについて
スウィンギング・ロンドン(訳注:ツイッギーやビートルズなどロンドン発祥の若者文化)の神話を信じているかって?何とも言えないな、ここに来てまだ数日しか経ってないから。実は、内緒でロンドン空港に来たから、3日間は全く気づかれずに街中を歩き回る事ができたんだ。
 
「グラニー・テイクス・ア・トリップ」(訳注:ロンドンのチェルシーにあるブティック)と「アップル・ブティック」(訳注:ビートルズが設立した会社アップル・コアの事業の一つ)と「スピークイージー」(訳注:ジミ・ヘンドリックスなどが出演したライブハウス)に行ったよ、どこもすごく良かった。今、僕が着てるジャグラー・シャツもアップルで買ったんだ。
 
ロンドンはアメリカの大部分の都市よりも少し独創的なところがあると思う。だけど、嫌いなものに対してはあからさまに言わない感じだよね。
 
●モンキーズの熱狂的な人気について
ファンが興奮状態になる事は心配してる。ついさっきもここの入口で、一人の女の子が僕に身を投げ出して「愛してる」と言ってきたんだ。もし彼女が本当に僕を愛してるなら、僕がお願いしても離してくれないのは何故だろう?と思うんだよね。
 
一方的な愛
愛とは相互関係があるべきで、興奮して我を忘れているのは愛じゃない。多分、それは一方的な愛で感情を転換しただけなんだ。
 
僕がファンの事で一番心配しているのは、直接触れ合う機会がない事だ。唯一の接点はあなた方報道機関を通してのものだけど、全くもって満足のいくものじゃない。
 
時折、ファン・クラブの会報に何通か掲載されることもあるけど、それが精一杯だ。
 
●次週、ピーター・トークが語る、彼の恐れ、自由、貧しさの利点、そして "Magical Mystery Tour" について。