Monkees Monthly #15 (Apr. 1968)

Davy: The Secrets Behind His Jockey Days

by Jackie Richmond

 
最近デイビーがこの国を訪れた時に、ジャッキー・リッチモンドが聞いたデイビーと著名な調教師ベイジル・フォスターの内緒のおしゃべりの続きです。
 
ベイジル「君がポニーを卒業して、本格的に競走馬に乗り始めた時の事を覚えているよ。あれは悲惨だったな!」
 
デイビー「そう、ストーンクラッカーズ!」
 
ベイジル「彼はその前にも競走馬には何度か乗った事があるんだが、必ず手綱を引いてもらっていた。ストーンクラッカーズは背中に乗せているのが初心者だと気づくと、ふざけ始めたんだ」
 
デイビー「恐ろしかったよ。僕は馬の上、6メートル位の所で舞い上っていたんだ。何度か彼女の世話をした事があって、それほどいい競走馬じゃなかったけど、毛づくろいをしてあげたりとかね。それまで僕は老いぼれ馬のフレッドにしか乗った事がなくて、だから彼女に僕のタック、サドルの事だよ、を付けるのを許された時はすごく嬉しかった。
その時やっと老いぼれ馬に乗るのと競走馬に乗る事の違いが分かった。最初は軽快な駆け足だったんだけど、他の皆がペースを上げ始めたら、急にどんどんどんどん速くなっていくのに気づいた。僕にできるのはぐるぐる回る事だけだって分かっていたから、目が回るまでぐるぐる回っていた。彼女が止まってくれるとは思えなくて、すごく弱気になり始めた。だけど、ストーンクラッカーズもかなり弱っていた、疲れ切っていたんだ。彼女がやっと力尽きて、止まってくれた。厩務員たちに笑いながら叱られたけど、調教師だけは面白がっていなかった。『二度とあんな事をするな、もっと上手く乗れるようになるまで老いぼれ馬に乗っていろ』って注意されたよ」
 
ベイジル「でも、老いぼれ馬を卒業するまでそんなにかからなかったよ。彼はすぐにコツをつかんで、普通に乗れるようになった」
 
ジャッキー「ベイジルさん、デイビーがBBCでお芝居をした事があるのはごぞんじでしたか?」
 
ベイジル「いや、正直、人生で一番驚いたよ。デイビーの父親が手紙を寄越して、BBCのプロデューサーがデイビーにラジオドラマに出て欲しいと言っていると書いてきたんだから。それで、その為にデイビーが休暇をとる事はできるだろうかって。私はデイビーがそんな事をしていたなんて思いもしなかった。だけど、私には反対する理由は思い当たらなかった。だから、ジョーンズ氏にはデイビーがその為に休暇をとるのは歓迎すると伝えた。でも、私がデイビーを事務所へ呼んだ時、彼は興味がなさそうだった」
 
デイビー「だって、僕は厩舎ですごく楽しく過ごしていて、俳優業が騎手になる事より重要だとは思えなかったんだ」
 
ベイジル「彼にギャラをもらえれば衣服代の助けになるから、やるべきだと言ったんだ」

 

デイビー「その手紙はBBCのアルフレッド・ブラッドリーからで、その芝居の為にリーズ(訳注:イングランド北部の都市)に来てくれと言っていた。それで、僕はセリフを読みに行って、お金をもらって厩舎に帰ってきた。それからまた別の手紙が来て。今度はグラナダTVからで、『コロネーション・ストリート』(訳注:英国で1960年12月9日から現在も放送されている世界最長の連続ドラマ。デイビーは第18回に出演)にエナ・シャープルズの孫役で出演してほしいって事だった」

 

ベイジル「デイビーはそれでもまだ俳優業にあまり興味が持てないようだったが、もう一度私がやるべきだと言ったらマンチェスターに飛んで行った。父親に会いに行けるまたとない機会だと言ったんだ。普通、見習いの騎手が家族に会えるのは年に一度位だからね。デイビーが出演した回を見た時は本当に驚いたよ。それで、この子には本物の才能があると思った。私が知っているデイビーとは全くの別人だったんだ。私は、彼が厩舎で時間を無駄にしているんじゃないかと思い始めた」
 
デイビー「マンチェスターにあるグラナダTみたいな大きなスタジオでTVの仕事をするのはすごく楽しかった」
 
ベイジル「『Z Car』にも出てたんじゃないかい?」
(訳注:英国で1962年から1978年まで放送された警察ドラマ。デイビーは第15話に出演)
 
デイビー「うん、初期の頃にね。おかしな事に、警察官を演じている人たちが実は本物の警察官だって思い込んでる自分がいたんだ。でも、俳優たちとは仲良くなって、いい時間を過ごせたよ」
 
ジャッキー「どうやってウエスト・エンドに出る事になったんですか?」
 
ベイジル「私にはよく厩舎へやって来て週末を過ごす友人が大勢いるんだ。ほとんどがショービジネスの人間でね。中でもチャーリー・ドレイク(訳注:英国のコメディアン、作家)とはよく狩猟に出かけた。ある週末に彼が友人たちを売れて来て、私たちはチェーザレウィッチ(訳注:ロシア皇太子障害競馬、ニューマーケットで行われる代表的な障害競走)に行っていたんだ。そこにビル・アレクサンダー大佐とその息子のヒューとレッグ・キャンベルがいた。彼らはチャーリー・ドレイクのエージェントで、世間話の中で、私の厩舎にいる少年がとてもいい俳優で、ちゃんとしたマネージメントがついたら舞台で成功するんじゃないかと思っていると話したんだ。私の話した事がアレクサンダー大佐たちの興味を惹いて、丁度6週間公演するピーター・パンの演者を探している所だという話になった。私がつかんだ最初の機会で、デイビーを事務所に呼んでその事を話したんだが、あまり喜ばなかったよな?」
 
デイビー「うん、嬉しくなかった。理由は分からないけど、僕はベイジルが僕を追い出そうとしているじゃないかと思い始めていたんだ」
 
ベイジル「それは全くの見当違いだと私は説明しようとした。彼の仕事ぶりには満足していたし、ぜひとも厩舎に残って欲しいと思っていた。しかし、同時にこれは成功のチャンスだと言った。彼にとって逃してはいけない素晴らしいチャンスだと思ったんだ。それに、もし上手く行かなくて、俳優は自分に向いていないと彼が思ったら、いつでも厩舎に戻って来られるからね」
 
デイビー「僕は厩舎を離れたくなかった、例え数週間でもね。もちろん時々はちょっとうんざりする事もあったけど、僕はその生活と仲間たちが大好きだったから。騎手になるのはその頃の僕の大きな夢だった、俳優は違う。でも、ベイジルに説得されて、とりあえず役のオーディションを受けにロンドンへ向かったんだ]
 

ベイジル「で、合格したんだろう?」

 
デイビー「そう。いつもと同じ事を要求されて、歩いたり、いくつかセリフを言ったり、他の人とちょっと芝居したり、歌をうたったり、それで最終的にいいねって言われて。だけど、丁度その時、もうひとつ重大な事が起きていた。ライオネル・バートの『オリバー』のウエスト・エンド公演に出るアートフル・ドジャー役のオーディションも受ける事になったんだ。レッグ・キャンベルがエージェントの世話をしてくれて、新しい劇場に連れて行ってくれた。でも、アートフル・ドジャー役のオーディション担当者に北部訛りを消せたら役をとれるって言われて。僕には『ピーター・パン』巡業中の6週間しか時間がなかった」
「ただラッキーな事に、ジェーン・アッシャー(訳注:英国の女優、ポール・マッカートニーとの交際で有名)が一緒に『ピーター・パン』に出ていて、彼女が素晴らしかった。僕が北部訛りを消そうとしていると聞いて、ロンドン訛りの先生を買って出てくれたんだ」
 
ジャッキー「本物のイースト・エンダー(訳注:治安の悪いロンドン東部の住人)になれたんですか?」
 
デイビー「いや。実際、ちょっとした笑い話でさ、だけど彼女は僕にいくつか言い回しを教えてくれて、ロンドンに戻った僕は2回目のオーディションに合格した」
「僕は厩舎を離れるのはすごく残念だったけど、ベイジルはとても良くしてくれた」
 
ベイジル「まあ、結局のところ、私は彼に俳優を勧めた一人だったって事だ。彼に言った事を覚えてる、『デビッド』、どうしてか分からないが私はいつも彼をデイビーではなくデビッドと呼んでいた、『デビッド、ロンドンのウエスト・エンドに出演する事を夢見て一生を過ごしても叶わない俳優もいる。君は二度とないかもしれない機会を掴んだんだ』とね」
 
デイビー「それで、僕は荷物を詰めてロンドン行きの列車に乗った。僕はそれから11ヶ月『オリバー』のアートフル・ドジャーを演じた」
「ロンドンではミルズ夫人の所に住んでたんだけど、彼女はすごく優しかった。僕を息子のように世話してくれたんだ」
 
ベイジル「ロンドンへはしょっちゅう出かけて、舞台を見てはデイビーと話をした。彼は厩舎と馬を恋しがっていたと思う、いつも公演が終わったら戻れると約束させられたよ」
 
デイビー「馬に乗りたくて仕方なかった。一度アレクサンドラ・パーク(訳注:ロンドン北部にある広大な公園、1970年まで敷地内に競馬場があった)のレースに飛び入りしたけど、馬と一緒だったキース・ビーソンにそんなバカな事をするなと言われて気が変わったんだ。その後、ライオネル・バートが『オリバー』のニューヨーク公演の依頼をしてきて、ブロードウェイの舞台でドジャーをやらないかと誘われる、という事が起きたのさ」
 
ベイジル「そうだ。君にとって千載一遇のチャンスだと私も思ったのでよく覚えてる。有名になれるかもしれないのに、君はアメリカ行きを拒絶していた。アレクサンダー大佐から電話があって、君には素晴らしい機会が与えられたのにそれを断固として拒んでいると聞かされたよ」
 
デイビー「うん。僕は厩舎に戻ると決めていたんだ」