Goldmine (Nov. 10, 2023)

Hey Hey! It's Micky Dolenz back on top with 'Dolenz Sings R.E.M.'

by TONE Scott

 

2023年は元モンキーズ、ミッキー・ドレンツの年になったようです。その筆頭が7aレコードから発売される、EP盤のR.E.M.カバー曲集です。

 
今年の初め、ミッキー・ドレンツが年内に新作を出すと聞いた時、私は最初にこう思いました。それがどんな内容になるのかぜひともいち早く知りたい!ライブ・アルバムになるのか?ドレンツと彼のチームが作る新しいスタジオ・アルバムになるのか?英国を拠点とする7aレコード:主に元モンキーズの4人のメンバーのソロ活動を中心にリリースしているレコード会社、を追いかけ始めてから、私は音楽的アンテナをこのレーベルの方に向け続けてきました。ここ数ヶ月、私はレコード会社との関係を育み、「もう一つのファブ・フォー」(つまりモンキーズ)に関係があってもなくても、このレコード・レーベルから発売されるレコードのレビューを「ゴールドマイン」に掲載してきました。全ては天啓への期待からです。言うまでもなく、内容・品質・企画において、このレーベルから発売された作品と彼らの持つ実績は、私の経験に基づくものです。このドレンツの新作がどのようなものになろうと、それはきちんと作られ、必ず良いものになる事は分かっていました。

 

しかしながら、私には到底知る由もないことが起きていました。モンキーズ/ミッキー・ドレンツの世界規模の熱狂的なファン集団である「私たち」に何が待ち受けているのか、それは私の想像を絶する想像力をも凌駕する出来事だったのです。

 

ほんの数ヶ月前のある日、私はグレン・グレットランド(7aレコードの創立者で最高経営責任者)からこの新しいミッキー・ドレンツのプロジェクトがどのようなものか、その発端を少し聞きました。7aレコードから、ミッキー・ドレンツがR.E.M.の名曲の数々を再構築して歌う、完全新録のスタジオEPを発売する予定だと聞かされて、心底驚きました。信じて欲しいのですが、100万年経っても予想できなかったでしょう。これはグレットランド自身の発案だそうです。次は何をドレンツに持ちかけようかと考えていた時、この元モンキーズをスタジオ復帰へ誘い、レーベルとファンのための音楽をもっと作ろうと思わせるユニークな何か、何かスペシャルなものがグレットランドの音楽心の中で煮詰まり始めたのです。ドレンツはR.E.M.の曲を自分流にアレンジして再現し、それを上手く活かして、モンキーズのファンにもR.E.M.のファンにも受け入れられるようなものを作れる、完璧な声色とパフォーマンス能力を持ち合わせていました。そのコンセプトは7aレコードからミッキー・ドレンツに提案され、快く受け入れられました。このプロジェクトに関わる全ての人間にとって、まるだ当たり前の事のようでした。そして数ヶ月に渡る計画、録音、プロモーションの後、私たちは "Dolenz Sings R.E.M." を受け取ったのです。

 
この素晴らしいコンセプト・アルバムの発売を巡っては、非常に多くの宣伝が行われ、モンキーズのデビュー当時を思わせるものがありました。発売にまつわるマーケティングの素晴らしさと広報活動におけるSNSの存在はさておき、このアルバムは画期的な発売イベントで最高の賞賛を受けました。その中心となっていたのはR.E.M.の着想が結実した場所でした。R.E.M.の歴史的な始まりがジョージア州アテネの有名なワクストリー・レコードで起きた事は昔から知られています。ここでマイケル・スタイプと店で働いていたピーター・バックが親しくなったのです(それがR.E.M.結成のきっかけでした)。2023年11月3日、この象徴的なレコード店(とその周辺)はこの記念碑的なEPの発売をメインとした祝賀イベントの会場となりました。レコーディングに参加したミッキー・ドレンツとR.E.M.のメンバーも集まり、アルバムの発売を祝うだけでなく、ジョージア州アテネのケリー・ギルツ市長からドレンツへ市の鍵(訳注:市が贈る名誉賞)が贈られました。ドレンツを中心とした活動とこの新しいスタジオ・プロジェクトにはこれ以上ないほど相応しいものでした。
 

新しいドレンツのアルバムの全てを監督した上に、全ての宣伝イベントに出席した7aレコードのCEO、グレン・グレットランドが「ゴールドマイン」に語ってくれました。

 
ゴールドマイン: ではグレンさん、ミッキーに次のアルバムでR.E.M.のカバーをさせるというアイデアが浮かんだ瞬間を覚えていますか?

 

グレン・グレットランド: 1990年代初頭の大学時代、私はR.E.M.の大ファンでした。そして1年程前、彼らを再発見したというか、また聞き始めて、彼らの作品にのめり込んだんです。聞けば聞くほど夢中になりました。同じ頃、ミッキーが歌ったらカッコいいと思える曲の候補リストを作り始めていました。それで、リストの中にかなりのR.E.M.の曲が含まれている事に気付いたんです。この二つの事で閃いたんです、これは素晴らしいプロジェクトになると思いました。特に、R.E.M.のメンバーがモンキーズのファンで、"Shniy Happy People" はモンキーズにインスパイアされた部分があると聞いた事があったからです。

 

GM: ミッキーの次なる7aレコードの企画としてR.E.M.の曲をやるというアイデアについて、どういう感じでミッキーに提案したのか覚えていますか?

 

GG: 信じられないような事が起きて、、、ミッキーにその企画を持ちかけようとしていた時にゲイリー・ストロブルという人から連絡があったんです(多くの方がご存知のようにゲイリーはヘンリー・ディルツの写真の管理・保存の専門家です)。私たちはその企画とは関係のない話をしていました。すると何の前触れもなく、彼が突然「ミッキーに "Shiny Happy People" のレコーディングを勧めて欲しい」と言い出したんです。それで分かったのですが、ゲイリーはモンキーズの生みの親で、亡くなったボブ・レイフェルソンから手紙を受け取っていたそうです。そこには例の曲について、モンキーズにインスパイアされた曲だと聞いた事があると書いてあったそうなんです。私は心の中で「なんで私がR.E.M.の企画を立てている事が分かったんだろう!?」と思いましたよ。偶然にも程がありますよね。ゲイリーはもうミッキーに話をしていて、ミッキーも基本的にその曲のレコーディングに前向きだったそうです。それで、私もこの4曲入りEPの話を彼に持ちかける決心ができて、ありがたい事に彼も了承してくれたんです。

 

GM: そのアイデアについて、すぐにR.E.M.のメンバーと連絡を取り合ったのですか、それとも、即座に楽曲の適切なライセンスを申請する方向に動いたのですか?

 

GG: このプロジェクトの初期段階から、R.E.M.のマネージャー兼顧問弁護士のベルティス・ダウンズと連絡を取り合っていました。彼は最初から最後まで信じられない位に協力的で、私たちは大いに助けられました。彼が話してくれたんですが、R.E.M.のメンバーたちは初日から大興奮で、レコーディングを聞くのが待ちきれない程だったそうです。

 

GM: 最終的にEPに収録される事になった4つのR.E.M.の曲は誰が選んだのですか、それから他に候補に上がったものやデモ段階で最終的なレコーディングには至らなかったものはありますか?

 

GG: 当然 "Shiny Happy People" は事の経緯から言って、外せませんでした。私は何日もかけてR.E.M.の全曲を聞きこんで、ミッキーに提供された全ての曲を自ら選びました。最初はミッキーに "Bang And Blame"(アルバム "Monster" より)を歌ってもらいたかったんですが、そこだけ変更しました。プロデューサーのクリスチャン・ネスミスが再構築した曲は素晴らしい出来でしたが、この曲だけは苦労していました。私たちが作りたいのは「カラオケ・アルバム」じゃない事は明白だったので、クリスチャンが新しく(そして独自の)アレンジを考え出してくれるかが私たちにとって重要だったのです。クリスチャンが代わりに "Radio Free Europe" を提案してくれたので、それが採用される事になりました。 "Losing My Religion" や "Everybody Hurts" のようなヒット曲も検討したのですが、何度も言うように、私たちは「カラオケ」にしたくなかったので、クリスチャンがミッキーに合わせた曲にできないと思ったものは外しました。

 

GM: 今回のプロジェクトはまさにあなたの発案だった訳ですが、レコーディングからミキシング、マスタリングと完成した時はどんな気持ちでしたか?

 

GG: 現実とは思えませんでした。モンキーズとR.E.M.両方のファンとしてこれ以上嬉しい事はありません。"Leaving New York" を聞いた時は本当に泣いてしまいました。どの曲も大好きなんですが、個人的にこの曲が一番好きかもしれません。英国でトップ5に入ったヒット曲ですが、ヨーロッパのほとんどの国でもヒットしたんです。けれど、アメリカではチャート入りしてなかったとつい最近知ったんです。この曲が収録された事に驚く人が多いのはそのせいかもしれませんね。

 

GM: ジョージア州アテネで開催された発売記念イベントやミッキー・ドレンツに名誉市民の鍵を授与する式典など、あなたにとって一番印象的だった出来事は何ですか?

 

GG: ミッキーと私と会社の同僚何人かで、ジョージア州アテネでのレコード発売の前の夜、ベルティス・ダウンズの家に行きました。R.E.M.のピーター・バック、ビル・ベリーとマイケル・スタイプがいて、壮観な眺めでした。その夜はとてもくつろいだ雰囲気で、文字通り一つの大きな家族になったような感じがしました。アテネの街と市民がレッド・カーペットを敷いて、私たちを我が家のようにリラックスさせてくれました。素晴らしい時間でした。もちろん、「南部のおもてなし精神」について知ってはいましたが、このような経験はした事がありませんでした。本当に何もかも、それ以上の事をしてくれました。感謝してもしきれません。ミッキーも感激していましたし、EPの発売イベントとしてこれ以上のものは望めなかったでしょう。

 

GM: 私たち「ゴールドマイン・マガジン」は7aレコードのあり方の大ファンになりました。私たちはあなたとレーベルがレコード音楽史上最も価値のあるバンドの一つであるモンキーズのファンに素晴らしいサービスを提供していると考えています。ミッキー・ドレンツはモンキーズのメンバーで最後の一人であり、このような大規模プロジェクトを彼と共に完成させるのは非常に特別な事なのです。次はミッキーと何をしようか考えたりしてますか?

 

GG: 嬉しい言葉をありがとう。私たちもいくつかアイデアがありますし、提案してくれる人たちにも事欠きません。私たちはまだかなり小さな独立系レーベルですし、一度に一つのプロジェクトしかできないんです。今回の新作が売れて、ミッキーとの別の大きなプロジェクトの資金源になってくれる事を願ってます。実現したいのですが、私たちにとって一つのプロジェクトが次の資金になるというのが現状なのです。とは言え、プロジェクトを見え透いたものにしたり、「収穫しやすい果実」(訳注:簡単に達成できる目標)にはしたくありません。R.E.M.の曲をカバーするという私のアイデアは多くの人を驚かせる事ができましたし、人々の反応を見るのもすごく楽しかったです。皆さんの支援と称賛に感謝します。

 

Micky Dolenz — Dolenz Sings R.E.M. — EP (2023, 7a Records)

何よりもまず、そのコンセプトを理解する必要がある。クラシック・ロックと現代エンターテインメントの歴史において最も卓越した人物の一人である、ミッキー・ドレンツは(素晴らしいチームの助けを借りて)現代ロックを代表するバンドの曲を再構築し、歌って、録音した。このコラボレーションの価値観、世界観はあなたの心を揺さぶるはずだ。もしそうでないなら、あなたは間違った記事を読んでいるのかもしれない。もし揺さぶられたなら、微笑んで感謝しよう、あなたは正しい場所にいる。モンキーズの元メンバーたちは皆、バンドの解散後、何十年も素晴らしいソロ・プロジェクトをファンに提供し、楽しませてくれた。新世紀になり、7aレコードの努力は他のレコード会社や音楽産業のどの部門よりも、元メンバーたちのソロ活動に貢献し、過去の作品を復活させ、現在も新しい作品を生み出している。7aレコードから旅立った全ての作品がその重要性を示してきた。今回の "Dolenz Sings R.E.M." の発売はレコード・レーベルの頂点を極めたと言えるだろう。

 

 

 

 

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