【在来作物】女性パワーが陰で支えてきた在来作物_蔵王かぼちゃ | 【食文化研究日記】山形県の在来作物と東京レストラン

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在来作物は「お金のための作物」ではなく「命のための作物」。私たちはその作物を中心に携わる生産者、料理人、飲食店、消費者を介しその大切さを発信します。


『 蔵王かぼちゃ 』


蔵王かぼちゃ


「かぼちゃ」にも「にんじん」同様に西洋と東洋がある。

日本で栽培されている主要な食用かぼちゃは16世紀半ばに九州に伝わり、

西日本各地に土着したニホンカボチャと、幕末から明治にかけて導入された

欧米の品種が北海道、東北などに土着したセイヨウカボチャに分けられる。

「蔵王(ざおう)かぼちゃ」はその形状、性質からセイヨウカボチャに属する。


この「蔵王かぼちゃ」はそのチャーミングな見た目から

「へそかぼちゃ」とも言われており、

果実は花が落ちた部分から直径10㎝のドーム
状に盛り上がり

かわいい「でべそ」となる。


また、そのかわいらしい見た目とは裏腹に実に硬い。

別名「まさかりかぼちゃ」とも言われ、

マサカリやナタ、かなづちを用いないと割れないほどだ。


しかし、だからこそ収穫した9月頃から2月、3月まで

長い期間貯蔵できるのであろう。

長期間保存可能というのは雪深いこの地域において、

非常に重要な役割を担ったはずだ。

作物が取れない厳しい冬の間にはそれはそれは貴重な作物だったと思われる。

また、食味はかなり評判がいい。

ホクホク感と上品な味。近年、再出荷された東京築地市場でも認められるほどだ。



「蔵王かぼちゃ」は今から約70年ほど前から栽培が始まった。

その由来は蔵王山ろくの成沢地区の農家へ嫁入りの際に

実家から持ち込まれた種子からだと言われている。


常々思っていたことだが、在来作物は 女性の力 が大きく関わっている。

有名な「白山だだちゃ豆」も嫁入りをきっかけに他の地区に

種子を持ち込んだことから始まる。


当時の嫁入り道具の一つとして「タネ」の存在があった。

この「タネ」を持っていきさえすれば新しい土地でも暮らしていける

という 親の愛情 が込められていたに違いない。


つまり「生きるための作物」だったからこそ、

別の土地へ嫁入り道具の一つとして持ちこまれ、栽培され、

新たな種が生まれてきたのだ。



在来作物は何も 過去の作物のことだけを指すわけではない

「蔵王かぼちゃ」のように人々の作物を大切にしていきたいという想いがあれば、

これからも 未来に新たな種は必ず生まれる

そして、私たちはさらに多様化された食文化をもっと楽しめるに違いない。


蔵王かぼちゃ(畑)


※写真提供「株式会社アグリパークZAO」
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提供元:板垣 和真さん