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食事を終えて洗い物をしながらコーヒーメーカーで食後のコーヒーの準備をした。
賢治は私が「大事な話だから」と言った事に対して何か期待してるみたいで
落ち着かない様子で私が洗い物とかしてるのを見ていた。
改めて、勝手に賢治のキッチンにあったマグカップにコーヒーを入れてからリビングに持っていく。
「で?大事な話って?」
「結婚の話なんだけど…。」
「う、うん。」
賢治の目は期待でいっぱいだ。ここで仕事も続けさせてほしいと言ったらなんて言うだろう。
でも以前、江川さんが友梨香さんの事を仕事が出来る様にフォローしているから
自分もそうしたいみたいな話をしていたから、
もしかしたら友梨香さんの様に働かせてくれるかもしれない。
「私ね、今の仕事が大好きなの。」
「知ってるよ。」
「だから結婚しても、もし子供が出来ても仕事は続けたいと思ってるんだけど。」
賢治は煙草を灰皿にもみ消してから私をジッと見ると、
「結婚して、2人暮らしの時なら仕事を続けてもらっても構わないと思うけど
もし、子供が産まれたら仕事は辞めて欲しい。やっぱ子供に寂しい思いはさせたくないし。
俺達だって片親で子供の時、寂しい思いしてただろ?それだけは避けたいんだ。」
「でも…。前に江川さんの前で友梨香さんを仕事面で支えてるみたいに自分もそうしたい
みたいな事言ってたじゃない。」
「だから、結婚してからだったら奈々子が仕事に集中出来る様に俺もサポートするよ。
でも子供が出来たら話は別だよ。俺だってしょっちゅう休みが取れる様な仕事じゃないし
そこは融通がきく奈々子が子供を育てて欲しいな。」
そんな…。いかにも私は仕事をあっさりと辞めて家事に専念できるみたいな言い方して欲しくなかった。
「簡単に『融通がきく』なんて言わないで。仕事って何でもそうだけど積み重ねた結果なの。
一回辞めちゃったらまたイチから始めなきゃいけないのよ。
賢治は分かってくれてると思ってたのに。もういい!」
私はマグカップを乱暴にリビングのテーブルに置くと鞄を持って賢治のマンションから飛び出した。
後ろから賢治が呼んでる声が聞こえる。でも私があっさりと仕事を辞められるって考えてた
賢治の事が許せなかった。こんなんじゃ結婚しても上手くいく訳ないよ。
そのまま全速で走って地下鉄の入り口まで行くと思いもよらない人にぶつかった。
「おっと。あれ?奈々子ちゃん、どうしたの?」
その人はTakuyaさんだった。私は自分の感情をコントロールできなくてTakuyaさんの胸にしがみついて
大声で泣き始めてしまった。そんな私達を見つけた賢治は
走っていた足を止めて呆然と私達を見ていた。