My Dear 76話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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賢治が泊まっていった日、仕事が終わってから帰宅すると

芸能記者がたくさん私のマンションにいた。

内心(面倒くさい)と思いつつも、その芸能記者達の群れを通り過ぎないと

部屋には入れなかった。心の中でため息をしてから部屋へと急ぐ。

そこへ芸能記者達が一斉に私の方へ駆け寄ってきた。

「あっ、橋本さん。昨晩は嵐山さんがお泊りになったとおっしゃってますが

本当ですか?」

私は無視を決め込もうと思ったけど芸能記者は離れてくれない。

今度は内心じゃなく、行動でため息をついてから、

「はい、そうです。賢治…じゃなくて嵐山さんがそうおっしゃってるんだったら私にいちいち確認しなくても

いいんじゃないですか?」

私が賢治の事を『賢治』って呼んだ事に過剰反応したのはやっぱり芸能記者だった。

「橋本さんと嵐山さんは普段、下の名前で呼び合ってるんですか?」

(いいじゃない、そんな事)

そう心の中で舌打ちをしてしまったけど、私は表情を変える事なく、

「そういう事はプライベートな事ですから…。」

これ以上付き合ってられなくなって私はシャッターの光のシャワーをよける様に

マンションの中に入って行った。

部屋の前までは来なかったけれど、こんなに頻繁に芸能記者が来るのなら

もうそろそろ引っ越した方がいいかもしれない。

部屋に入って鍵とチェーンをしてから賢治の携帯に電話をかけた。

でもその電話は留守電で賢治が出る事はなかった。もしかしたら何かの収録中なのかもしれない。

そう思いながらテレビをオンにすると生放送の音楽番組に賢治が出ていた。

MCであろう人気司会者が賢治に対して私の事を質問をしている。

「いや~、賢治も彼女の事で大変だねぇ。」

(そう思うなら私の事を話題に出さないで欲しい)

普段着に着替えて冷蔵庫からビールを出して一口飲みながら

タラタラと流れてくるテレビの画像を見ていた。

私の内心を見透かしてるかの様に賢治は笑うと、

「俺はいいんですけど、彼女の方はいい加減、芸能記者から解放されたいと思ってると思いますよ。」

(だったらどうにかしてよ、この状況)

半分にらむ様にテレビを見ていたけど話題がツアーの話になったからテレビを消した。

少しぬるくなったビールを一気に飲み干すと急激に眠気がやってきた。

神木さんから今日は嫌味を言われなかったけど、もしさっきのテレビを神木さんも観ていたとしたら

明日何か言われるかもしれない。

そんな事を思いながら私はソファーに横になった。