My Dear  44話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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映画は正直言って面白かった

あんなに笑ったのはいつぶりだろう

でも映画館を出る時にそんな浮かれた気分はどっかに飛んでいってしまった

気にしない様、気にしない様と思っていても露骨な視線が胸に刺さる

私はパンフレットを買っている賢治の袖を引っ張ると

「ねぇ、やっぱり賢治ん家に行こうよ。じろじろ見られて落ち着かない」

「じゃぁメシだけでも食って行こうぜ」

「そのご飯を食べてる間にも視線を受けて私は嫌なの」

「慣れだよ、慣れ。今からそんな事言ってたらこの先真っ暗だぜ」

そりゃ、これからもこんな風に2人で外に出歩いたらこうゆう風に見られるのだろうけど

初めて賢治と外出した私としては落ち着かなかった

「じゃぁせめてあんまり人がいないとこで食事しよ」

「いいよ。この辺で会員制のレストランがあるんだ。そこならどう?」

会員制なら私と賢治が一緒にいるのを見る人は少ないかもしれない

「じゃぁそこにする」

半分渋々だったけど滅多に取れない賢治のオフだもんね

少しは付き合ってあげないと


そのレストランは新宿東口の近くにあったけど看板もなくって普通の住宅にしか見えなかった

「なっ、ここなら飯食うとこって感じしないだろ?」

「本当にここって食事が出来るの?普通のおうちじゃない」

「だから知る人ぞ知る店なんだよ。メニューがなくってさ、マスターのお任せなんだ

あっ、嫌いな物を言っとけば外してくれるよ」

私と賢治は半分地下になってる扉の前に行くと賢治がインターフォンを鳴らした

「はい」

ハスキーな男性の声で返事が返ってきた

きっとここのマスターなんだろうな

「こんちわ。賢治です。あと1人いるんですけどいいですか?」

「久しぶりだね。今開けるから」

その言葉を合図にしたかの様に扉が開いて中が見えた

カウンターが6席しかなくって今日は誰も来てないみたいだった

こんな営業でよくつぶれないなぁなんて変なとこに関心しちゃった

My Dear 45話