My Dear  37話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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なんとなく後味が悪くなった食事会だったけどこれで終わりではなかった

2人が私を自宅まで送ると言って譲らなかったからだ

「そんなに真っ赤なフェラーリで送ったら目立つと思うんだけど」

これは井上君の意見

「もう夜も遅いし地下鉄1本とはいえ危ないと思うんだけどさ」

これは賢治の意見

どっちの意見も私を気遣ってくれてるのはわかるけどここまでもめると私の気分も沈んでいった

「あのね、2人が心配してくれるのは嬉しいんだけど

もう私は子供じゃないの。ここからだったら10分位で帰れるから1人で帰る

賢治、今日はご馳走様。またね」

そう言って私は2人と離れた

帰りの大江戸線に乗ってる時、考えたことは賢治と井上君の事だった

いくら鈍感な私でも井上君が私に好意を持ってくれてるのはわかる

そして賢治も

だからって言ってどちらかを選ぶなんてことは出来なかった

考え過ぎて、気がつけば私の最寄の駅より1つ先に来てしまった

慌てて降りて折り返しの地下鉄を待つ

そこで思いもよらない人と会った

それはtakuyaさんだった

「あれ?奈々子ちゃんじゃないか」

「こんばんわ。今日もコンサートのリハーサル終わったんですか?」

「うん、まぁね。肝心の賢治がいなかったからバックメンバーと音合わせしただけだけど」

…。賢治の奴リハーサルを抜け出してきたんだ

「今、帰り?」

「はい。会社の同僚と食事をしてたんです」

賢治も一緒だったことを言おうと思ったけど大事なリハーサルを抜け出してきたんだから

それは言わなかった

「どこに住んでるの?もう遅いから送ろうか?」

「大丈夫です。新宿だから隣駅ですし」

「そっか。気を付けて帰りなよ」

「ありがとうございます。じゃぁ」

Takuyaさんの後ろ姿を見送ってると私が乗る電車が着いた

私は1人今日の賢治と井上君の食事会の事を考えながら自宅に戻った