My Dear  11話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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初めて入ったテレビ局は雑然としていた

色んな番組で使っているであろうセットがぎゅうぎゅう詰に置いてあったり

公開録画に見学しに来たであろう女の子達が鳥の群れの様に固まっていた

「橋本さん、こっちです。」

『関係者出入り口』と書かれたボードをすり抜け芸能人や裏方の人しか入れないブースに入った

そこはまさに異世界でちょんまげ姿でコーヒーを飲んでいる人や

上司であるかもしれない人からお説教を受けている若手の裏方の人がいたりした

いくつかの角を曲がって個室がたくさん並んでいるブースにに来た

その中に『嵐山 賢治様』と書いてある部屋の前に立った

谷口さんがノックをして

「賢治さん、お連れしましたよ。」

その声に反応するかのように賢治の顔がひょこっと出てきた

「ご苦労さん。入れよ。」

賢治の楽屋は雑然としていた

今日の歌番組の収録の台本らしきものや煙草、雑誌、そして外国チェーン店のコーヒーカップ

「初めてテレビ局なんて入ったけど随分と雑然としてるのね。」

「だからこそ普通の生活をしている人が気になるんだよ。ある意味異常な世界だからな、ここは。」

そう言って煙草に火をつけた

私の中の賢治は子供だったから賢治が煙草を吸う事に違和感を覚えた

それだけ私も歳を取ったって訳だ

「賢治さん、カメリハ30分後ですからよろしくお願いします。」

「オッケー。どうする?カメリハも見てく?本番と違った感じがして面白いぞ」

「う、うん。そうしようかな。」

このテレビ局に入ってしまえば賢治のテリトリーになる

賢治の言う事に従った方がいいみたい