小料理屋 桜 99話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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翌日、桜子は薬局で妊娠検査薬を買った。

桜子の気のせいかもしれないので産婦人科に行く前に自分で試したかったのだ。

検査結果がでる時間がとても長く感じられた。

時間通りに結果を見てみると陽性だった。

雄二との子供が産まれるのは嬉しかったが、小料理屋をしている間は無理は出来たない。

意を決して産婦人科に行って診察を受けている時桜子は目を閉じてその時間を待った。

女医の産婦人科の表情は明るく、

「おめでとうございます。おめでたですよ。今は妊娠3週目ですね。」

その言葉を聞いて桜子の目には涙が浮かんだ。

30代を過ぎて子供を宿す事が出来るとは思っていなかったからだ。

「主人と話して産むかどうか話し合ってきます。でも彼は子供好きだからきっと産むと思います。」

エコー写真をもらったが子供の姿は豆の様に小さく、それでも自分の身体に命が宿っているのだと

実感した。

いつも通り店を開けいつも通りに接客をした。

今日は大森しか来ていなかったので大森には妊娠した事を告げた。

「大森さん…。ちょっと恥ずかしんですけど私妊娠したみたいなんです。」

「ホント!?」

「はい。今日、病院へ行ってきました。エコー写真ももらってきました。」

「見せてよ、その写真。」

「でも赤ちゃん、とっても小さいですよ。」

「いいから、いいから。」

桜子はたもとから写真を出すと大森に見せた。

「ホントに小さいね。でもこれからどんどん大きくなるからしばらくは店を休んだ方がいいんじゃないの?」

写真を返しながら桜子と桜子の身体に宿っている子供の心配をしてくれた。

「10ヶ月もお休みできません。様子を見てからお休みする事にします。」

「堺君には知らせたの?きっと喜ぶと思うよ。」

「まだです。今日、お店が終わったら知らせようと思ってます。」

大森は破顔すると、

「じゃぁ今日は僕は帰るよ。早く堺君に教えてあげて。」

「いいの、いいの。また来るから」

大森は5千円札を置いて帰ってしまった。

雄二にどう知らせようかと悩みながらのれんを下げて早めに店を閉めた。

自宅に帰ると雄二はまだ帰ってなかった。

雄二と自分の分の夕食を作っているとどうしてもつわりが来てしまう。

それでも夕食を作る手は安めなかった。

夕食を作り終わると雄二が帰ってきた。

「あれ?桜子、今日は早いな。」

「うん。あのね雄二さんに報告する事があって。」

「何?」

しばらく黙っていたが意をあ決して雄二に報告した。

「私、子供ができたみたい。今日、病院に行ってきた。」

その時の雄二の驚きと喜びの顔を桜子は忘れる事はないだろう。