「小料理屋 桜」を最初から読まれる方はこちらから
「あんたも偉そうな事を言う様になったな。大学時代は大人しい教授だったのによ。」
その言葉に激怒したのは参加者の田中だった。
「教授にそんな失礼な事言える立場か。松嶋さんをあれだけ泣かせてきた奴が。」
「辞めて!もうその事はいいの。康之さん、今日は帰って。
今日は皆で大学時代を懐かしむ日なんだから。」
他の人物からの帰ってくれの言葉には反抗していたが桜子の言葉は受け入れた様だった。
「いいか、覚えとけよ。お前は一生俺の女なんだから。」
そう言ってギャラリーからふらついた足取りで出て行った。
しばらく康之を見送っていた桜子だったが振り向いて頭を下げた。
「ごめんなさい。私のせいでこんな雰囲気になっちゃて。」
康之と桜子が以前結婚していたことを知らなかった友人は、
「松嶋さんと藤堂は結婚してたのか。」
「えぇ。でも昔の事よ。今は雄二さんと結婚してるわ。」
「大学時代は堺と付き合ってたもんな。」
田中が少しにやけながら雄二を突いた。
「こないだ、私の教授室に来て結婚の報告をしてくれたんだ。」
先程の表情とは打って変わって嬉しそうに高城教授は笑った。
「でも、だからだったのね。堺君と松嶋さんがこの同窓会の幹事をしたのは。」
ワイングラスを持った、桜子の大学時代の友人だった美加が笑った。
「じゃぁ桜子は今は専業主婦?」
美加の問いに首を振って、
「ううん。小料理屋をしてる。だから少しすれ違いの生活になっちゃってるけど今は幸せよ。」
「も~、のろけちゃって。でも桜子が小料理屋なんて意外。大人しい子だったから。」
同窓会のはずが桜子と雄二の結婚披露会の様になってしまったが、
それはそれで良かったのかもしれない。