小料理屋 桜 75話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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雄二の母親は昼食に誘ったが、その日は雄二が時間を作って

2人での休みにしたため、二人の住居を探す予定になっていた。

「ごめん、これから二人の住む場所探すんだ。またゆっくり帰って来るよ。」

雄二の母親は残念そうな表情をしたが、

「そうね、二人が住む場所を探すのが先だもの。」

「今度、うちの近所にある評判の和菓子屋さんのお菓子を持ってきます。

私の叔母も好きなんですよ。」

「いいのに、そんなに気を使わなくても。でも楽しみにしてるから今度はゆっくりしていってね。」

雄二と桜子は桜子の店と雄二のギャラリーがある表参道がある中間地点の九段下辺りの

物件を探した。

二人は何件かの物件を見てみたが、桜子が気にいったのは

神保町にある古い一軒家だった。

前の住人が丁寧に住んでいたのだろう。古い一軒家だったが朽ち果てた感じはなく

昭和レトロの感じがする家で小さいながらも庭もついていた。

その家は桜子の父が生前住んでいたうちと似ていて、そのうちの隅々まで桜子は見て回った。

家を見ている桜子の表情を見て、

「桜子、ここが気にいった?」

「うん。ここからだったら店に近いし駅も近いから住み心地が良さそう。」

雄二はついて来た不動産の若い男性に、

「ここって家賃いくらですか?」

「えっとですね…。古いうちですからね。3LDKで19万です。」

「それに共益費は?」

「共益費込の金額になります。大家に言えばリフォームも可能です。」

桜子は雄二の腕を掴むと、

「ね、ここにしましょうよ。」

「桜子が気にいったならいいよ。」

雄二は再び不動産屋に振り向くと、

「ここに決めました。契約したらすぐにでも住めますか?」

「はい、敷金と礼金を頂ければ今日にでも住めます。こちらにお決めにになりますか?」

「はい。」

古いうちだったのでなかなか住人が決まらない物件が決まったので

不動産屋も嬉しそうだった。

「私は引っ越しの荷物はほとんどないわ。着物は店に置いとかないといけないし。

まぁ食器とかは持ってくるけど。次は引っ越し屋さんね。」

「俺もそんなに荷物はないな。でも俺一人で引っ越し作業は出来ないから

俺も引っ越し業者差探しだな。とにかく店に戻って契約だけでも済ませよう。

これだけいい物件なんだ。早いもん勝ちになるかもしれない。」

不動産屋と二人は九段下の店に戻り、契約を済ませた。