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「ね、美由紀叔母様だけでも結婚する事報告しない?
なんだか嬉しくなっちゃったから誰かに教えたいの。」
「もちろんだよ。歓迎してくれるかなぁ。」
「きっとしてくれるわよ。」
桜子は料理の手を止めて携帯を出すと美由紀に電話をした。
「あ、叔母様?あのね報告する事があるの。」
「その声の調子だといい報告みたいね。どうしたの?」
「こないだフランス便の墜落事故があったでしょ?その事がきっかけじゃないって訳じゃないないけど
雄二さんと結婚するの。身内だけで報告会をするからぜひ叔母様も来てくれない?」
美由紀は電話越しに笑うと、
「良かったじゃない。ぜひ行かせてもらうわ。きっと兄さんも喜んでくれるわよ。料理は私が作るから。
でも懐かしいわね。あの台所に立つなんて。」
「招致するのに料理を作ってもらってごめんなさいね。でも私も叔母様の料理が懐かしいわ。」
美由紀と桜子の会話を頬杖をしながら聞いていた雄二は笑っていた。
今まで桜子には辛い思いをさせてきてしまったので今度こそ桜子を幸せにしたいと思いながら。
電話を切ると桜子は微笑みながら、
「叔母様来てくれるって。その日の料理も作ってくれるですって。
他に誰を招待する?」
「桜子が決めていいよ。花嫁が主役だからな。」
桜子の脳裏に浮かんだのは北村、大森、村木、梓の顔だった。
これだけの人達に祝福してもらえば十分だ。
一瞬頭に浮かんだのは康之の事だった。
もちろん康之を招待するつもりはない。だが康之は桜子と雄二の結婚を認めてくれるだろうか。
「言いにくいんだけど…。」
「何?」
「康之さんは私達の結婚を認めてくれるかしら。」
その言葉に雄二は眉間に皺を寄せた。
「桜子をあれだけ泣かせたんだ。あいつの気持ちなんて関係ないよ。」
「そうね…。」
そう言いながらも康之の女好きを直して康之には康之の幸せを持って欲しいと思うのは
おかしい事だろうか。