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桜子と結婚も決まり、お互いの実家に挨拶をしに行こうと話し合った次の日
雄二の画廊で次の画家の個展の打ち合わせをしていた時
雄二にとって恩人ともいえる人物が訪れた。
パリで知り合い、画廊を開くノウハウを教えてくれた人物で佐々木と言う
画廊を持っている人物は知らない人物だった。
「あっ佐々木さん。お久しぶりです。」
「堺君も順調に個展を開いてるみたいだね。」
「お蔭さまで。これも佐々木さんのおかげです。
ちょっと待ってて下さいね。もうすぐで打ち合わせも終わりますから。」
画家との打ち合わせは10分程で終わり、雄二は小さい事務所からコーヒーを2つ持ってきた。
「どうしたんですか?急に来られるなんて。」
「堺君にちょっと提案があってね。来週、僕もパリに絵の買いつけに行くんだけと
大体1ヶ月位パリにいるんだ。堺君ももっと色々な画家を見て個展の回数を増やしてみないか?」
その誘いは雄二にとってありがたい申し出だったが、桜子との結婚の話も出ている。
来週あたりに桜子の実家に挨拶に行く予定だったので雄二は迷った。
「来週ですか…。」
「何か予定でも入ってるのかい?」
パリ行の事を躊躇している雄二に向かって佐々木はてっきり次の個展が決まっていると
勘違いした。
「実は結婚が決まりまして、来週あたりに彼女の実家に挨拶に伺う予定になっているんです。」
「結婚?それはおめでとう。じゃぁパリには行けないね。」
佐々木は諦めたようだったが、雄二は正直な所パリに行く事に魅力を感じた。
まだまだ画廊としては新人だったし、これから個展を開く時、画家と面識を持っておいた方がいい。
「彼女と相談してみます。僕もパリにもう一度勉強をしに行きたいですし。」
「大丈夫?結婚の挨拶に行くんだろ?」
「えぇ、その事も踏まえて相談してみます。1ヶ月は長いですからね。」
その後は明日から開かれる個展の話で終わった。
雄二は今日、桜子の店に行って相談しなければならないと感じながら。
今日は日曜日だから桜子の店は定休日になっている。
事前に桜子の元へ行く事を連絡しておいた方がいいと思い、
佐々木が帰ったあと桜子に連絡をした。
「もしもし、雄二だけど。」
「どうしたの?」
「ちょっと相談というか報告があるから桜子のうちに行ってもいい?」
電話の先ではなんの事だろうと考えてる桜子の表情が思い浮かべられた。
「いいわよ。何時頃来るの?」
「多分夕方の5時位。」
「わかった。それと…。夕食一緒に食べない?いつもお客さんと食べてるか
一人で食べてるでしょ?」
桜子も雄二も仕事ですれ違いが多く、会うとしたら桜子の店位だった。
「わかった。外で食う?」
「何か作って待ってる。相談があるんでしょ?外食だと話しづらいだろうし。」
こういう些細な事に気が利くのが桜子の事を好きになったのかもしれない。