The Movie 51話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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私はケーキを食べ終わると、


「じゃぁ話はこれだけ。私、帰るね。」


「夕食位食べて行けばいいのに。」


母さんは残念そうな顔をしたけど、これから聡と将来の事を話しあいたかったから


帰る事にした。


「これから聡と話したい事もあるしね。今度ゆっくり帰って来る。ごめんね。」


ケーキのお皿とマグカップを洗うと、来て早々私は帰る準備をした。


玄関で靴を履いてると、後ろから父さんが


「尾山君に言っとくんだな。なんでイラクに行ったのかちゃんと説明が出来る様にして来なさい、って。」


私は父さんの仏頂面を見ると、


「わかった。」


とだけ答えて、実家を後にした。


その足で聡のマンションに行ったけど、父さんの態度を話すと結婚は簡単に認めてもらえない様な


気がしてきた。


ダイニングテーブルに座ってしばらく考え込んでいたら、コーヒーを入れてくれてた聡が、


「どうしたんだよ。眉間に皺を寄せちゃって。今日、結婚の事を話しに実家に行ったんだろ?」


「そうなんだけど…。どうも父さん、聡がイラクに黙って行っちゃた事が面白くなかったみたい。


その話をした途端にテレビを見始めたり、帰る時にちゃんと聡が説明できる様にして


来る事って言ってたから。」


「まぁ一般的な親だったらそんな男に自分の娘を嫁にやるのは嫌だろうな。」


そんな事を言いながらも聡はどこか余裕のある表情だった。


「のわりには余裕の顔だけど。」


「黙って行ったのは悪い。だけどイラクに行った事は悪いことじゃないと俺は思ってるからな。」


「そのイランに行ったって事が父さんには面白くなかったみたいよ。」


「いいよ。今度、ご挨拶に行く時にちゃんと説明するから。そうしたらきっとわかってくれる。」


聡の自信満々なところが羨ましかった。


絶対父さん、反対するだろうなぁ。


母さんは大歓迎みたいだけど。


父さんと聡が対面した時、どんな話をするんだろう。


やっぱりイラクの事が中心になって話が進むんだろうな。


「ところでさ、いつ美加の実家に行けばいい?」


「父さんも退職したあと、他の会社に入ったからね。土日のどっちかがいいと思うよ。」


「じゃぁ来週の日曜に伺ってもいいかな?」


「多分いいと思う。今日は帰るから帰ってから電話で聞いてみる。」


聡はその言葉を聞くと残念そうな顔をして、


「なんだ。今日は帰るのかよ。」


「毎日、どっちかのうちに泊まる訳にはいかないでしょ。」


私はコーヒーが入っていたカップを洗うと帰る支度をして、


「じゃぁね。また明日。」


その言葉を残してさっさと帰ってしまった。


あんまり彼氏といえどもべたべたするのって好きじゃないのよね。


うちに帰ると実家にコーヒーを入れながら実家に電話をした。


「もしもし?私、美加。」


「どうしたの?今日は来たかと思えばさッさと帰っちゃうし。」


「聡と話があったのよ。それでね聡が父さん達に挨拶したいからって来週の土日のどっちかに


うちに行きたいって言ってるんだけど。どっちがいい?」


母さんは嬉しそうに、


「まぁ尾山君が来るの?本当に結婚するのねぇ。来週の土日のどっちかね。


お父さんに聞いてみるからちょっと待ってて。」


しばらく保留音が流れていたけど、さっきまでは嬉しそうに話してた母さんがちょっと沈んだ声で


返事が来た。


「お父さんの方から尾山j君の話を聞きたいって言ってたくせして、今になって会いたくないって


言いだしたのよ。」


「さっき私が帰った時に言ってた事と矛盾してるじゃないの。父さんに代わって。


私が話すから。」


再び保留音が流れたけど今回はやけに長かった。


きっと父さんが「話す事なんてない」なんて言ってるんだろうな。


私は最初は好きだから好き放題が出来る、


でもいっぱんの人達にあんな事が知れたったら、猫の手も借りたい