The Movie 41話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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翌朝、熱を測るともう平熱に戻っていた。


それでも念の為、厚めのコートを着てマフラーを首に巻いて出勤した。


私出勤すると菜々はもう来ていて喫煙所で煙草を吸っていた。


私は喫煙所の扉を少しだけ開けて、


「な~な。おはよう。」


「風邪はもういいの?」


「うん。今朝熱を測ったら平熱だった。」


「あんたの根性には負けるわ。熱出してまで出勤してきて、意地で風邪を治すんだから。」


「こんな事で仕事休んでたら首が飛ぶもの。」


煙草の吸殻を真ん中の吸殻入れに入れると、菜々は


「そりゃそうだけど。」


そう言いながら喫煙室を出た。


「さて、今日も働きますか。」


一回両手を上に上げて伸びをするとデスクに座った。


パソコンん立ち上げると今日中に仕上げないといけない資料がバラバラになって


私のパソコンに送信されてた。


(根性悪~。もうちょっとまともなデータを送ればいいのに)


データの送信主は聡にこないだお弁当を渡してた子だった。


私と聡が付き合ってるのが相当おもしろくないらしい。


それでもそんな子の相手はせずにWordにデータを入力していって見やすい表にした。


そのデータを送り返すとなぜだかムッとした顔してた。


菜々のデスクにそ~っと椅子ごと寄って、


「こないだ係長にお弁当持ってきた子がいたじゃない?」


「当たって砕けろの精神で砕けた子ね。」


菜々が言うのもキツイ言葉だったと思ったけど話を続けた。


「朝1番にパソコンを立ち上げたら私宛にメールが来てて、ものの見事にバラバラのデータが


その子から送られてたの。私はさっさと表にしたり、グラフにしたりして見やすくして


送信したら面白くなさそうな顔された。どう思う?」


「もっと美加に仕事で四苦八苦して欲しかったじゃないの?それがあっさり


30分もしないで出来上がったから面白くなかったんでしょ。」


バカバカしいと思ったけど、それが女性の特有な事なのよね。


好きな人に彼女がいたら好きな人に当たらないで、彼女の方に八つ当たりをするのはどうしてだろう。


そんな子は無視をして仕事の続きをして、定時になると帰る支度をした。


「いいですねぇ。定時で帰れるなんて。」


振り向くと今朝、めんどくさいデータを送った子だった。


私はその子の前にツカツカと歩み寄ると、


「私、ダラダラ仕事はしないんです。今日の業務は全部終わらせました。


それに問題があるんですか?」


「わっ、私だってダラダラ仕事なんてしてないわよ。」


「そうですか。じゃぁ化粧室に行ってから30分近く帰らないのが何度もあったのは


体調が悪かったからですね。お大事になさって下さい。」


相手は何か言いたそうだったけど私はそれだけ言うと会社を出た。


アホ社員を相手にするのも大変なのよね。


社員の方が偉くて、派遣は使い走りって思ってるバカって未だに残ってるし。


今日はイタリア語を大口さんに教えてもらう日。


あの事故から1週間で退院したらしい。


たいした事がなくて良かった。


勉強の場としていつも利用している、ソルレヴァンテに着くともう大口さんは来ていた。


「すみません。遅くなりました。」


大口さんは人差し指を振って、


「Appena venne ora。」


と笑った。


まず私達はお腹もすいてたし夕食替わりになる簡単なサラダとかチーズを注文した。


それでも二人でいる時は出来るだけイタリア語を使う様にして、


大口さんが言った事が分からなかったら、大口さんからのプレゼントのイタリア語辞書で


翻訳したりした。


「近藤さん。聡とはどうですか?」


さすがにこんな難しい事はイタリア語じゃなくて日本語で言ってくれた。


「まぁ、ボチボチです。」


「近藤さんはなんで急に海外派遣隊でイラクに行ったかはご存知ですか?」


私がサラダを取り分けようとした手が止まった。


「大口さんはご存知なんですか?」


「はい。」