The Movie 33話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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変な言い方だけど大口さんが事故に合ったのが土曜日で良かった。


日曜日にお見舞いに来れたから。


相変わらずICU室にいたけど大口さんは


「早く退院させてくれ。」


と連呼しれるらしい。お見舞いの花束を持ってお見舞いに行った時


「大したことじゃないんだよ。確かに車とぶつかって気を失ったらしいんだけど


この通りピンピンしてるし。」


そう言って手をぶんぶん振り回してた。


「でもごめんなさい。私のせいでこんな事故に合ったんだから。」


「それは近藤さんが謝る事じゃないですよ。赤信号で突っ込んできた車が悪いんですから。」


まだ精密検査があるらしけど、とりあえず元気そうで良かった。


「退院したらまた教えてくれますか?」


大口さんは両手を広げて、


「Chiaramente, sia contento!」


とウィンクした。う~ん、大口さんって日本人なんだけどイタリア人っぽいとこがあるなぁ。


これってイタリアの人に対する偏見かもしれないけど。


大口さんがたいした事ないみたいだったから私達は病院の近くのカフェに入った。


「でも良かったね。元気そうで。」


「俺も最初に聞いた時、あいつの笑ってる顔が浮かんだよ。肝が冷えた。」


アイスコーヒーを飲んでいるとオープンテラスの店だから風を直接受ける。


だから寒い。でも私はこの寒さの中でアイスコーヒーを飲むのが好きだったりして。


「美加がアイスコーヒーなんて飲んでるから見てる方も寒くなるよ。」


聡とお茶をしてたら見覚えのある顔を見かけた。


良子ちゃんと菜々だ。


私は椅子から立ち上がって二人に声をかけた。


「どうして二人が一緒にいるの?」


「だって妹が服が見たいから見立ててくれって言われて。」


良子ちゃんと菜々が姉妹なんてびっくりした。


「え~!良子ちゃんと菜々って二人共姉妹なの?」


「だから言ったでしょ。妹が映画館でバイトしてるって。」


そう言えばそんな事、言われたっけ。


しばらく呆然と二人を見てると二人の事を覚えていたのは聡だった。


「妹さんには映画館で良くお会いしてましたよね。」


「わ~、嬉しい。お客さんに覚えててもらえるなんて。」


「それだけ良子ちゃん…。だっけ。」


「そうです。」


良子ちゃんは嬉しそうにうなずいた。


「良子ちゃんが親切にしてくれたからだよ。最近は映画には行ってないけどまた行く様にするから


その時はよろしくね。」


「はい。お待ちしてます。」


別れ際良子ちゃんは私の袖を引っ張って耳元で、


「素敵な彼氏さんですね。」


なんて言ったから顔が赤くなっちゃった。


「ね、帰るまえにアーツ&サイエンスって店に寄ってもいい?冬物の服とかがないの。」


「俺、そんな店知らねぇぞ。」


「根津美術館の近くだから。」


ほぼ聡を引っ張る様にして表参道を歩いてアーツ&サイエンスに着いた。


ディスプレイされていて一目ぼれしたのが赤い大きなストールだった。


店内に入って店員さんにあれと同じのはどこに置いてあるか聞いてみた。


案内されたところには赤の他にもネイビーのストールが展示されていた。


でもやっぱり気にいったのは赤のストール。


値段をさりげなく見ると23,100円。ちょっと私の予算をオーバーしてた。


一人でストールの前で悩んでいると店員さんが、


「これは特別にネパールの織機屋さんにお願いをして手作業で作られたので


とても暖かいですよ。」


と説明を受けた。その間聡はメンズの方を見ていて私の方なんて気にもしてないみたいだった。


どうしよう…。予算がオーバーしてるしな。でもこんなに綺麗な赤ってなかなか巡り合えないと思う。


「聡、聡。このストールどう思う?」


どうでもいいように、


「いいんじゃないの?」


としか答えてくれなかった。何回もストールの巻き方とかを教えてもらって、30分かけて決断した。


決めた。これ買う。


レジで私が支払いをしていると聡が近づいてきてレジに表示されてる金額を見てびっくりしてた。


「げっ、これそんなに高いの?良く買えたな。」


「日々、真面目に働いてるちょっとしたご褒美。」


後ろから聡は呆れた様についてきたけど、私はルンルン気分で帰る事が出来た。