The Movie 26話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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映画の上映まではあと15分あったから聡が私と自分用にアイスコーヒーを買ってきてくれた。


「ありがと。大口さんの授業で緊張してたから喉がカラカラだったの。」


「美加はポップコーンが嫌いだったもんな。皆買ってたけど買わなかったよ。」


「ありがとう。」


10分前になるとシアター室に入れるアナウンスが流れた。


私達は一緒に映画を観た。


相変わらず面白い映画で途中で何回も笑ってしまった。


特に主役の男性が昼ご飯のカップラーメンをどっちにするか延々悩んで


結局、お昼にありつけなかったとこ。


悩んでる時、レジに持って行っては


「やっぱり辞めます。」


って何回も繰り返してコンビニの店員さんに呆れられててその表情が面白かった。


シアター室を出ながら、


「あの主役の人面白かったね。」


「あの人はコメディも出来るけどシリアス系も出来るからな。いい俳優さんだよ。」


って二人して満足した映画だった事を話していた。


そしていつもの様にパンフレットを買いにパンフ売り場に行った。


そこには聡子ちゃんがいた。


聡子ちゃんは1年前からいたから聡の事は知っている。


「あれ?今日は久しぶりの方とご一緒なんですね。」


「うん。偶然同じ派遣会社だった人なんだけど、今はそこの社員してる人なの。」


聡子ちゃんは小声で、


「もしかして彼氏さんですか?」


「まぁね。」


「じゃぁ徳永君、落ち込んだでしょね。」


「チケット買う時にも同じ様な事聞かれて確かに元気がなくなったね。」


後ろパンフレットを買う人が並んでいたから私達の会話は強制終了した。


「また来るね。」


聡子ちゃんに挨拶をしてから関根さんの店に行った。


「こんにちわ~。」


関根さんに挨拶して店内に二人で入った。


もう夜だったから夕食を食べてる人が多かったし、私も大口さんと昼ご飯を食べてから


何も食べてなかったから夕食を食べる事にした。


関根さんがオーダーを聞きに来た時、


「今日は夕飯も食べてくの。何がお勧め?いっつもお茶だけで済ませてるでしょ?」


「そうだなぁ…。オムレツなんだけど、ちょっと張り切ってデミグラスソース作ったんだ。」


「じゃぁそれ。聡は?」


「俺もそれにしよっかな。あっ、ドリンクは俺はアイスコーヒーで美加はアイスカフェモカで。」


食事が来るまでに私はさっき買ったパンフレットを広げて今日の出演者を見た。


主役の俳優はコメディの役もするけど、エリート官僚の役とかもする実力派俳優だった。


「この映画が面白かったのは、この俳優さんの力もあるよな。」


「うんうん。この俳優さんと脚本を書いた人がタッグを組んだら、どんな映画でも面白くなるよ。」


こんな風に聡と映画の話をするなんてどれぐらいだろう。


関根さんが私達の夕食とドリンクを持ってくると、


「盛り上がってるね。なんだか僕も嬉しいよ。またこうして二人でここに来てくれたのは。」


「そう?」


「だってさ、1年位でしょ?その間美加ちゃんは一人で来てくれてたけど、


なんとなく寂しそうだったからね。」


自分では気づかなかった。そんな風に見られてたんだ…。


私達が食事をしてると徳永君も店に入ってきた。


ジッと私の事を見ているから無視する訳にはいかない。


「徳永君、休憩?」


「いえ。もう上がりです。自炊が苦手なんでシフトが入ってる時はここでメシ食ってるんです。


今日は何を観たんですか?」


「『あっちもこっちも』を観たの。あの主役をした俳優さんが好きだから。」


「言われてみれば、その人が出てる映画は全部観てますね。」


「よく覚えてるね。さっすが~。」


聡の視線が気になってこれ以上徳永君と会話をするのに限界を感じて、


「ごめんね。今、食事してるの。また観に来るから。」


徳永君は残念そうにしてたけど関根さんのとこに行って何かを注文してた。


「美加。あの男の子と随分仲が良さそうだけど。」


「あぁ。面白い映画をよく紹介してくれるから仲が良くなったの。」


チラリと徳永君を見たけど聡はそれ以上追及しなかった。


…。やっぱり言っといた方がいいのかな?徳永君が私の事が好きかもしれないって事。