The Movie 20話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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私はマスターが好意で出してくれたカシスケーキとポイントがたまったカフェモカをすべて食べて、


「今度聡と話し合ってみる。まぁ聡はヨリを戻そうって言い張るだろうけど。」


「それでも話し合う事は大事だよ。」


「そうね…。」


今日は無料でケーキも食べれたし、ドリンクも飲めた。


少しは関根さんの言う事と考えた方がいいかもしれない。



うちに帰るとマンションの前に人影があった。


そっと近づくと聡だった。


「会社で話せないからうちに来たんだ。話し合わないか。」


マスターの言ってた事もあるし私は聡を自宅に招き入れた。


コーヒーを入れてると、コーヒーを入れてる私の背に聡が声をかけた。


「なぁ、やっぱりやり直さないか。」


私は黙って聡にコーヒーを渡すと、自分のソファに座った。


「聡がいなくなってからどれだけ心配したと思ってるの?


今さら帰ってきてやい直すなんて。勝手よ。」


聡はうつむいて、しばらく黙っていた。


しばらく嫌な沈黙が流れる。


「俺さ、イラクにいた時も美加の事は一度も忘れた事はなかったんだ。


銃声が流れても頭の中に浮かぶのは美加も顔だった。


それだけ忘れられなかったって事だよ。美加に何にも言わないで海外に行ったのは確かに俺が悪い。


でも、空港で美加が引きとめるのが分かっていたから黙って行ったんだ。」


「聡…。ねぇ、何で海外派遣隊に行ったの?」


「テレビで見たんだ。子供達が怪我してるの。俺でも役に立つかなって思って。」


それは聡らしいと思った。


何でも人の為なら何でもする人だから。


でも私は?何にも言われずにどこに行ったかもわからない1年間は?


どんなに聡を探して、生きているのかもわからなくて不安だったあの時間は?


それでヨリを戻すのって自分勝手だと思う。


どれだけ私が聡の事を心配したのか聡は知っているのだろうか。


聡は私の事を一度も忘れなかったって言ってたけど、私も聡の事を忘れなかった事はなかった。


「取りあえず、会社では普通に振る舞うから。でも私達が付き合っていたのは隠し通して。」


「でも俺達、何にも悪い事はしてないぞ。」


「いきなり社員になった人と派遣社員が付き合っているなんて、皆が驚くと思うけど。」


しばらく聡は考えてたけど、私の顔を見て、


「分かった。」


と、だけ返事をした。


「それと…。」


「何?」


「何でも私に同行させたりするのは止めて。皆が変に思うから。」


「…。分かった。でも美加とヨリを戻すのは諦めないから。」


一番、気心が知れてるのは確かに聡だけど、1年以上会えなかったのに今さら


ヨリを戻すのは私にとって難しかった。