The Movie 5話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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今日の映画、どれ観よう。


休み時間に映画情報誌を見てたら、笹原さんが声をかけてきた。


「また映画観に行くの?」


「はい。」


「映画の魅力って何だろうなぁ。」


「俳優さん達が自分と違う人生を歩いてるのがいいの。役によって俳優さんと違う人生を演じるでしょ。」


「へぇ。近藤さんってそこまで考えて映画観てるんだ。奥が深いね。それでさ、今度も映画観に行くなら


俺も一緒に行ってもいい?」


あくびまでしてて映画を観るってあり得る?


「だって、こないだ映画観てた時、あくびしてたじゃないですか。映画に興味がないんじゃないの?」


「あっ、見てた?」


「私、映画を観ながらあくびする人とは映画を観に行かないの。」


笹原さんは傷つけられた様な表情をして、自分のデスクに戻った。


よかった。今日は一人で映画が観れる。


あと5分で帰れる。その後は映画館に直行。


私はチラチラ時計を見たながら、その時を待った。


5、4、3、2、1、


「係長、時間なのでお先に失礼します。」


「いいねぇ。派遣さんは定時で帰れて。」


そんな嫌味、色んな派遣先でも散々言われてるから慣れている。


「そう言う契約でしたし、今日の仕事はずべて終わらせました。


ダラダラと仕事をしていた訳じゃないです。」


何か言いたそうな顔をしてたけど、私はそれを無視して今日の仕事を終えた。


(今日はどんな映画観ようかなぁ)


そんな事を考えらながらルンルン気分で映画館に向かった。


映画館に行くとレディースデイだからだろな。女性のお客さんが多かった。


どの映画にしようかと迷ってたら徳永君が声をかけてきた。


「近藤さん、今日はどれを観るんですか?」


「それが観たいのがいっぱいあって迷ってるのよ。なんかお勧めない?」


徳永君は公開中の映画が画面に出てるのを見ると、


「今日は加藤さんが好きな俳優さんが出てる映画がありますよ。ちょっとマニアックな映画なんで


お客さんはあんまり入ってないんですけど、僕は試写でこれを観て面白かったです。」


「ふ~ん。それってどの映画?」


「『公安』ていう刑事物って言うか警察の内部が詳しい話です。」


「じゃぁ、それにしようかな。」


「この映画、パンフレットが少なく来たんですよ。取っときますか?」


「いいの?」


「近藤さんはお得意様ですから。。」


「ありがとう。じゃぁチケット買ってくるね。」


チケット売り場に行くと洋子ちゃんが待っていた。


「近藤さん、今日はどれにしますか?」


「さっきね、徳永君に勧められたんだけど『公安』って映画にする。


ホントは、観たい映画がたくさんあり過ぎて徳永君に教えてもらったんだけどね。」


「徳永君も映画好きですからね。新しい映画が出たら必ず試写に行きますから。


じゃぁ、ポイントカードお預かりしてもいいですか?」


私はポイントカードとチケット代を洋子ちゃんに渡した。


「席はどうしますか?今日は雨だったからお客様少ないんですよ。


選び放題ですよ。」


「じゃぁねぇ…。12列目の真ん中ら辺。」


「だったら12列目の10番の席が観やすいですよ。」


「洋子ちゃんのお勧めの席だもの。そこにするわ。」


「今日でポイントがたまったから無料券進呈です。何枚目でしょうね。加藤さんのポイントカード。」


「さぁ、家に帰ったらわかると思うけど…。」


チケットとポイントカードを受け取ると、


「今度数えてみるね。」


そう言って一旦映画館を出た。まだ公演時間まで時間がある。


関根さんのとこにでも行ってコーヒーでも飲もう。


「関根さ~ん。今日も来たよ。」


私は扉に着いている鈴を鳴らしながら店に入った。


関根さんは笑顔で迎えてくれて、


「今日も映画?なんにしたの?」


「映画館の人のお勧めで『公安』にしたの。あっ、チケット。アイスコーヒーでお願いします。」


「僕もそれは観たよ。初日にね。面白かったよ。緊迫感もあったし、ユーモアなシーンもあったし。」


関根さんは私にアイスコーヒーを渡しながら先に観た感想を教えてくれた。


「公開まで40分あるの。ちょっとだけここにいてもいい?」


「構わないよ。でも15分前に行った方がいいからね。」


「そうする。」


今日は一人で映画を観られるし、映画館のスタッフに勧められた映画を観られるから


私は気分が良かった。